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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】吉村秀樹(bloodthirsty butchers)×川口潤(『kocorono』監督)×中込智子(音楽ライター)(2011年2月号)- それでもなおバンドを続ける覚悟と強靱な意志を描いたブッチャーズのドキュメンタリー映画をめぐって

【復刻インタビュー】bloodthirsty butchers ドキュメンタリー映画『kocorono』公開記念座談会
それでもなおバンドを続ける覚悟と強靱な意志を描いたブッチャーズのドキュメンタリー映画をめぐって

2021.10.06

“腐れ縁”吉村と射守矢の特異な関係性

──ビヨンズの谷口健さんが“腐れ縁”と称していましたが、吉村さんと射守矢さんの何とも形容し難い特異な関係性がピンボールのように予測不能なブッチャーズの化学変化に大きく作用しているじゃないですか。この映画を観ると改めてそれがよく分かりますよね。

吉村:コアですね(笑)。俺はそこまで客観的には見れないよ。

川口:昨日、僕が単独で取材を受けた時にも2人の関係性について言われたんですよ。小学生の頃からずっと一緒にいる特殊な関係性はやっぱりユニークに映るんだろうし、音楽をやっている人じゃなくてもそういう仲の人はいるんじゃないですかね。

吉村:バンドをやってる人同士で仲がいいケースって意外と多いんだけど、俺なんかは「なんで!?」って思うわけ。確かに羨ましい部分ではあるんだけど、それがよく理解できないんだよ。

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──射守矢さんに直接言えば済むことを、吉村さんが敢えて3人に対して叱咤するシーンもありますよね。今さら面と向かって話すのは照れくさいというのもあるんでしょうけど、それでも一蓮托生で同じバンドをやり続けているわけだし、本当に特殊な関係なんだなと思って。

中込:それこそ射守矢君の台詞で「バンドなんて番長連合みたいなものなんだから、やれていること自体が奇跡なんだよ」っていうくだりがありましたけど、あれは私、シビレましたよ。

吉村:俺はあの言葉の意味が全然分からなかったけどね(笑)。どちらかっちゅうと番長みたいに強くない人たちが集まってるんだから。

──一番番長っぽい吉村さんからまさかそんな言葉を聞くとは思いませんでしたけど(笑)。

中込:自分ではそういう感覚なのね(笑)。

吉村:ちょっと語弊があるんじゃねぇか? っちゅうか、俺だったらそういう表現はしねぇなぁっていう。

川口:でも、凄く分かりやすい表現ではありますよね。それくらい我の強い人間が集まっているのがブッチャーズというバンドだと思うし。

──射守矢さんも吉村さんから言われっぱなしじゃなくて、当たり前ですけどバンド全体のバランスをちゃんと考えているんですよね。自転車を押しながら、自分のベースと吉村さんの歌のバランスを考えているんだと語るシーンも出てくるじゃないですか。

川口:射守矢さんって、訊かないと何も言わない人なんですよね。そこは分かっていたので、僕が敢えて話を訊いたりしたんですよ。訊けばちゃんと話してくれるので。

──それはやはり、メンバーが川口さんに対して全幅の信頼を置いているから成し得たことなんでしょうね。

中込:うん、そうだと思う。

川口:であれば凄く嬉しいですけどね。

吉村:俺は一向に喋らないけどね。小松は異様なサービス精神で喋ってたけど(笑)。

川口:でもナベちゃんによると、小松さんは最初「いろいろとややこしいことになるから俺は何も喋らないよ」って言ってたらしいんですよ。それが結局、一番多く喋ってるんですよね(笑)。

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──今回の映画では小松さんの野村監督みたいなぼやきが全編冴え渡っていますからね(笑)。

川口:確かに愚痴とも取れるんですけど、小松さんとしてはバンドのことを第一に考えて話しているんですよ。だから陰口とは取れなかったし、カメラが回っていてもああいうことを真正面から話すわけですからね。ただ、小松さんには「川口君、これどこまで使うの?」って訊かれたことがあったんですけど、「回してるものは全部使いますよ」と答えたんです。そしたら「俺、吉村さんと一緒には完成した映画を観れないだろうな…」って言ってましたね(笑)。

中込:ブッチャーズに加入したての19歳の小松に「あんなに腹に響く音が出せて凄いね」って話したら、「練習で吉村さんと射守矢さんがアンプをマックスにして音を出すから『お前、音が小さい!』って怒られるんですよ」って言ってましたよ(笑)。この映画を観ると、そういう関係性が今も何ら変わってないのがよく分かりますよね。

吉村:俺はこの映画で小松に比べて意味の分かんないことを喋ってるけど、普段はそんなに喋らないんだよね。だから「吉村さんの言葉が取れてない」って撮影の最後のほうで川口君に言われてさ。で、どうしたらいいんだ? ってなった時に、俺のなかでは1個しか答えがないわけ。海に行くしかないんだよ(笑)。

川口:各メンバー1日ずつインタビューの時間をもらったんですけど、吉村さんは海にでも連れ出さないとインタビューを受けてくれないだろうってナベちゃんと話していたんですよ。それでとりあえず海に連れて行くことにしたんです。でも、そこでも吉村さんは自分の好きなことしか喋らないし、「なんだよ!」と思って(笑)。終いには「泳ぎたいから海に入ってくるわ」って言い出して。でも、その時はもう9月の中旬でクラゲもいるわけですよ。それなのに「海まで来て泳がないなんて、川口君おかしいよ!」なんて言われたんです(笑)。ただ、その場面は抽象的なイメージとして使えるからまぁいいかなと思っていたんですけどね。

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映画『kocorono』

主演:bloodthirsty butchers(吉村秀樹、射守矢雄、小松正宏、田渕ひさ子)
出演:中込智子、谷口健、SEIKI、ヒダカトオル、上原子友康、蛯名啓太、小磯卓也
監督:川口潤
音楽:bloodthirsty butchers
撮影・監督補佐:大石規湖
撮影:梅田航
編集:鶴尾正彦
音響:横田智昭、kazuaki noguchi
製作総指揮:重村博文、宮路敬久
宣伝:椎名宗之
製作:長谷川英行、近藤順也、渡邊恭子
制作:アイランドフィルムズ
協力:リバーラン
配給:キングレコード
宣伝協力:ルーフトップ
2010年 | 日本 | 116分 | カラー | 1.78:1 | ステレオ | DCP
© 2010 kocorono 製作委員会
2021年11月12日(金)から12月2日(木)までシネマート新宿にて3週間限定ロードショー

LIVE INFOライブ情報

展示会『bloodthirsty butchers since1986』
【開催期間】2021年11月11日(木)〜11月21日(日)
【会場】POOTLE(新代田FEVER 内)
【時間】平日17:00〜23:00 / 土日祝12:00〜22:00
※自治体の要請などにより、営業時間の変更がある場合がありますので予めご確認のうえご来場ください
※入場無料
休刊のおしらせ
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