映画にとっては劇場こそがライブ
──プレビューを観た直後に吉村さんは「こんなバンドの切り方が良かった」と仰っていましたよね。
吉村:うん。あの切り取り方で全然いいと思った。
川口:僕やプロデューサーは「これで吉村さんからOKが出なかったらどうする?」「でも今さら直せないですよ」なんて話していたんですけどね(笑)。そしたら、プレビューを観終えた吉村さんの最初の一言が「裸のシーンがさぁ…」っていう(笑)。それを聞いて「ああ、大丈夫なんだ」と胸を撫で下ろしたんですよ。吉村さんには音の最終ミックスの作業にも立ち会ってもらったんですよね。
吉村:そりゃ行くさ。俺はバンドとして行くさ。
川口:ただ、メンバーには劇場の大きなスクリーンでまだ観てもらってないんですよ。だから是非大きな画面で観て欲しいですね。印象が全然違うし、他人と一緒に観るというのが映画の醍醐味のひとつなので。
吉村:でっかい画面だと俺は余計に恥ずかしいけど、劇場で観るのが前提だったからね。ライブハウスで上映したいっていうオファーももらってるんだけど、俺たちとしては椅子に座ってでっかいスクリーンで観て欲しいわけ。オファー自体は嬉しいんだけどね。
川口:まずは劇場優先で、その後にライブハウスで上映する展開がいいんでしょうね。ただ、ライブハウスはあくまでバンドを観る、生の音を体感する場所だから、環境がちょっと違うんですよ。
中込:集中して観るなら映画館のほうがいいですよね。映画を観るぞっていう気分で劇場に行って観て頂きたいですし。
吉村:しょうもないバンドの映画を作るっていうのが最初にあったし、それをライブハウスでやっちゃうと作った意味がないんだよ。
川口:ライブハウスで上映すると、映画じゃなくてイベントになっちゃいますからね。あと、その映画が「長いな」と思ったら、DVDなら途中で自由に止められるけど、劇場では席を立ち上がるしかないじゃないですか。つまり、映画は最後まで観なきゃしょうがない。映画という逃げられない状況だからこそ、曲をフルレングスで観せたところもあるんですよ。そこまで付き合ってもらわないと生まれない感動が映画にはあるんです。もちろん途中でトイレとかに行くのは全然構わないんですけどね。
中込:私は喫煙者だから、映画を観る時は特別に気合いが入るんですよ。家でDVDを観る時はタバコも吸い放題、飽きたら止め放題ですから。
川口:そうですよね。だから、映画にとっては劇場こそがライブなんですよ。劇場でこそ映画は生きているってことなんです。DVDは棺桶って言うと言い過ぎかもしれませんけど、アーカイブなので。
──映画でしか得られない感動は僕も絶対にあると思うし、1人でも多くの人に劇場へ足を運んで欲しいですね。
吉村:キングの長谷川さんから藪から棒に投げられた企画ではあったんだけど、今思えばその投げられたタイミングが凄く良かったんだよね。バンドとしては何の動きもないタイミングで投げられたっちゅうのがさ。自分たちもバンドを客観的に見れるいい題材になるかなと思ったし。何ちゅうか、俺としては訳の分からない動きにしたかったんだよ。ブッチャーズとしての動きの流れとか説明する部分で、簡単には説明したくないって言うか。くだらない部分でもそれを入れたほうが謎は多くなるし、その上でお客さんとフレンドリーになれれば凄くいいなと思ったわけさ。フレンドリーなシーンは川口君がちゃんと撮ってくれていたしね。
川口:結局、吉村さんの引きが強いってことに尽きますよね。映画の企画を立てたのは長谷川さんだったけど、それを遙か宇宙の彼方から操縦していたのが吉村さんだったという(笑)。
──吉村さんのなかで、期待以上の映画が完成したという手応えはありますか。
吉村:うん。『NO ALBUM 無題』を作っていた時の言葉では言い表せないモヤモヤがこの映画によってかなり解消されたし、今はメンバーとも意外に仲がいいんだよ(笑)。
──じゃあ、映画のワンシーンにもあるように、3人に対して「お前ら、(テンポが)速いんだよ!」と当たり散らすこともなくなりました?(笑)
吉村:いや、それはある(笑)。「センスなんだよ!」「センスって何すか!?」って、この間もメンバーは怒られてたし(笑)。