表現する人なら分かってもらえる部分がある
──僕が感動したのは、ブッチャーズの映画でありながらも観客である僕らの映画でもあるというところなんです。ブッチャーズという一介のバンドを通じて「なぜそこまでして表現に立ち向かうのか?」という表現者の抱える普遍的な命題を描いているし、表現者でなくても「お前はどうなんだ? そこまで打ち込める何かがあるのか?」と発破を掛けられているような気持ちになってくる。今を生きる人間なら誰しもが必ず打ち震える部分がある映画だと思うんですよ。
川口:そうなっていれば嬉しいですね。バンドじゃなくても音楽に関わっている人や表現する人なら分かってくれる部分がきっとあると思うんです。反面教師的な部分でもいいんですけどね。ただ、作っている間はこの映画をどうまとめ上げればいいのか全然分からなかったんですよ。出来上がってもよく分からなかったですから。試写を観た人の感想を聞いて、そういうふうに伝わっているなら良かったなと思ったくらいで。
中込:凄いなと思いましたよ。2時間近い映画なのに中弛みが全くないし、良い緊張感を保ったまま観られますから。普通の映画を観てても辛いじゃないですか、2時間って。
川口:もうあれ以上は削れなかったんですよね。削ろうと思ったら、フルで使っているライブの何曲かを途中で終わらせるしかなかったんです。でも、これは自分の映画だし、長いと思われてもいいやと思って。曲はちゃんと聴かせたかったし、まずファンを納得させなくちゃダメだなと思っていたので、フルレングスで使えるところは使いたかったんですよ。
──まぁ、ファンは結成間もない初期のライブ映像を観られるだけでも大納得でしょう。当時の映像を観ると、吉村さんは基本的に何も変わっていないんだなと思いましたけど(笑)。
川口:それは僕も思いました。昔から上から目線だったんだなと(笑)。小磯さんからお借りした初期の映像を観て「この人は昔からこうだったんだな」と思ったし、観る人にもそれを知って欲しかったんですよ。
──吉村さんから「このシーンはちょっと勘弁して欲しい」みたいなリクエストはなかったんですか。
吉村:俺は裸のシーンが多いから、それは何とかして欲しかったけどね(笑)。
中込:そこかい!(笑)
川口:実際に脱いでるんだから仕方ないじゃないですか(笑)。でも、僕は吉村さんにどつかれる可能性もあるなと思いながらこの映画を完成させたんですけどね。
吉村:この部屋(シアターNの会議室)でメンバー揃ってプレビューを観たんだけど、みんな意外に真剣だったんだよ。
川口:凄い真剣に観てましたよね。4人が観ている姿を了解を得てカメラに収めたんですけど、みんな全然喋らない状態で。
吉村:せいぜい「ここかよ! ここ映すのかよ!?」くらいで(笑)。
川口:観ているうちに、吉村さんだけがなぜかだんだん後ろのほうに下がっていくんですよ。それで、射守矢さんの実家で高校時代の卒業アルバムを見るシーンで大爆笑するっていう(笑)。
中込:あれはおかしかったですね(笑)。
川口:ちゃこちゃんの笑いが止まらなかったですから(笑)。
吉村:「頼むからアルバムを開かないでくれ!」って思ったからね(笑)。射守矢を1人で帰らせたのは間違いだったよ。俺がいたらあのシーンは絶対にカットしてたのに(笑)。
川口:「これ、吉村さんからOK出ますかね?」って射守矢さんに訊いたら、「多分ダメでしょう」って言われたんですよ。でも結局、使っちゃいました(笑)。「ダメ」って言われてから考えればいいやと思って。結果的には吉村さんからダメ出しは全然なくて、「裸のシーンが多いのはどうにかしてくれないか?」って言われたくらいなんですよ。さすがにそれはどうにもできなかったし、そのまま活かしましたけど(笑)。
吉村:まぁ、言われてみれば普段から裸になってるなぁ…と思ってさ。
川口:楽屋裏では大抵脱いでるから仕方ないんですよ(笑)。
吉村:よく裸でいるのと『kocorono』っていうタイトルは共通するのかな? って思ってね。
川口:僕は共通すると思ってますけど。
吉村:そういう心配もちょっとあったりなんかして、デコボコなのはいいんだけど、ちょっと裸のシーンが多いんじゃないか? っていうのが気になったんだよ。人が脱いでるのはいいんだけど、自分のは恥ずかしすぎる(笑)。