“らしさ”に特化したほうが断然いい
──『赤いレモンティー』や『Chicken Heart』のようなエモーショナル・ナンバーが栄えるには『Telephone』や『idaho』のようなアッパー一直線の楽曲やミディアム調の『あなたのまゆげ 〜Love's bible〜』のような明るいムードが不可欠なわけで、非常にバランスの良い構成だと言えますよね。
ヒダカ：逆に言うと、今までは明るさしかなかったんでしょうね（笑）。
ehi：そうなんですよ。ヒダカ君はそういう諸事情も含めて私たちのことを知ってくれてるし、今回の制作にあたってはそれも凄く大きいですね。
ヒダカ：亀田誠治さんみたいに著名なプロデューサーにお願いして諸事情を一から話すのも大変だからね（笑）。
ehi：誰にプロデュースを頼むか3人で話し合った時に私が真っ先にヒダカ君を挙げたのは、曲作りの面ももちろんあったんですけど、miya38のこともよく知ってたし、病院へお見舞いに来てくれたこともあったからなんです。
──つまりヒダカさんの人柄、人間性ですよね。本作は硬軟両様のバランスが凄くいいと思うんですよ。『idaho』のタイトルって「愛だの恋だの欲しがる気分」という歌詞から取ったと思しきダジャレじゃないですか？（笑） そんなことを唄う一方で『赤いレモンティー』や『Chicken Heart』みたいにシリアスなナンバーがあるのがとても人間らしいなと思って。
ehi：『idaho』は「愛だの恋だの」だけじゃなくて「夢だの金だの」とも唄ってますしね（笑）。
──さり気なく守銭奴な部分も出してますよね（笑）。
Nao★：でもそこ、ちょっと迷ったんですよ。
ehi：“金”だと生々しすぎるから、歌詞カードには“お金”って書いてあるんです（笑）。ライヴでははっきり“金”って叫んでますけどね（笑）。
ヒダカ：ある種、非常に正直なバンドなんですよね。「ここまでしか演奏できません」だったり、「ここははっきりと唄います」だったりのメリハリは付いてるんですよ。そういう意味では、10代、20代には出せない味やパンチがWtBにはあるんですよね。以前、『MONSTER baSH』で一緒になった時に出演バンドの中でWtBが一番ブッ飛んでるなと思ったんですよ。演奏自体は9mm Parabellum Bulletとかのほうがブッ飛んでるんだけど、3人の佇まいがね。まずお客さんが「この人たち、何者なんだろう!?」ってパッと見では理解できない中で凄まじい破壊力を発揮していたし。BEAT CRUSADERSもそうでしたけど、そういう“こいつら何だ!? 感”っていうのがバンドにとって実は凄く大事なことなんです。
──大事ですよね、ドラムキットのひとつに一斗缶が使われている意外性とか（笑）。
ヒダカ：そうそう（笑）。
──まぁ、一斗缶と言ってもドリフ世代から下は何のこっちゃい!? って話でしょうけど（笑）。
ヒダカ：一斗缶という名称自体、10代には判らないでしょう（笑）。その辺の理解を含めて、俺は然るべきプロデューサーだったのかな？ と自分でも思いますね。木村カエラの『Snowdome』を書いた人ってことでお馴染みのはずだったんですけど（笑）。でも、渋谷や下北で一緒にライヴをやってた頃の感じをそのまま持ってこれてこっちも楽しかったし、気はラクでしたよね。
──私見ですけど、WtBは歳を重ねることに抗うかのように年々サウンドが若く瑞々しくなってきているのを感じますけれど。
ehi：エーッ、ホントですか!?
ヒダカ：確かに、OKAMOTO'Sみたいになる瞬間はあるよね。あっちのほうが断然上手いけど（笑）。
──むしろ音だけ聴いたらスキルと風格があるOKAMOTO'Sのほうが年上に思われるかもしれませんよね。
ehi：要するに、あまり上手くなりすぎるのも考えものってことですよね（笑）。
ヒダカ：いや、なろうよ。そこは目指そうよ（笑）。
──そうは言っても、yatchさんはehiさんとNao★さんの成長の跡を後ろから確かに感じ取っているのではないかと思うのですが。
yatch：言われてみればライヴ中のアイコンタクトとか、お互いに感じ取れるものが最近は出来てきてますね。
ヒダカ：キメの時にお互い確認し合うのは長年やってないと無理だもんね。
yatch：特にehiは未だに僕の音を聴いてくれてないらしいんですけど（笑）、キメなくちゃいけないところはバシッとキメるから、気持ちはトライアングルで通じ合っているのかな？ って言うか。
ヒダカ：あと、編成もよく似たGO!GO!7188というライバルがいたと思うんですよ。向こうは全員上手いし、ヘタすりゃドラムもターキーのほうが上かもしれないっていう（笑）。だったらそこを目指すよりもWtBらしさというのが絶対にあるし、“らしさ”に特化したほうが断然いいですよね。たとえばバカだけどエモい部分であるとか。そういう部分ではBEAT CRUSADERSと近いのかな？ と思ったりもしましたね。
──音楽に向かうイノセンスだったりとか。
ヒダカ：良く言えばそういうことですね。
Nao★：良く言えば（笑）。
ヒダカ：悪く言えばおバカですけどね（笑）。
