あけましておめでとうございます。スターベムズのボーカルを務めるわたくしが、20世紀のロック偉人たちを掘り起こして平成の世に蘇らせるなら……を妄想する当コラム、昨年暮れに惜しまれつつ急逝した稀代のボーカリスト、ジョー・コッカーから今年の連載をスタートしたいと思います。
満70歳を迎えた昨年、コロラド州で没した彼は、一聴して泥臭いそのサウンドや、ハリウッド映画の主題歌で大ヒットを飛ばしたことなどからアメリカ人シンガーと思われがちですが、イギリスはシェフィールド出身。ビートルズ旋風吹き荒れる1968年にずばりビートルズのカバー……しかしリンゴ・スターの唄う「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」という捻った選曲でデビューを果たすと、その意外性に加え、ハスキーな大男がクネクネしながら唄う独特のパフォーマンスがサウンドと相まって独特の哀愁を生み出し、全英1位を獲得。
翌年には伝説のフェス、ウッドストック出演を果たし、アメリカの名プロデューサー兼ミュージシャンのレオン・ラッセルの協力も得て世界的にも認知されます。しかし度重なるドラッグ問題でツアーやレコーディングのキャンセルが相次ぎ、世界的なブレイクまであと一歩! というところでいつもつまずいてしまいます。
一念発起してドラッグ脱却を図り、クリーンな身となった82年、ハリウッド大作『愛と青春の旅立ち』の主題歌によって遂に世界的ブレイク。結果的に遺作となった2012年の『ファイア・イット・アップ』まで、実に22枚ものオリジナル・アルバムを発表し続け、英国を代表するボーカリストの一人となりました。
ビートルズ楽曲を数多くカバーし、再ブレイクのきっかけも『レット・イット・ビー』でオルガンを弾いていたビリー・プレストン「ユー・アー・ソー・ビューティフル」のカバーだったり、ビートルズに助けられた印象の強いジョー・コッカーですが、ツアーで採用した曲が後にカーペンターズにカバーされ「スーパースター」として誰もが知る名曲になったり、オーストラリアで大麻不法所持で逮捕された時は、ファンの抗議活動が激化して遂には大麻合法化の論議にまで発展したり……そして何よりクネクネしながら唄うその歌唱法は、後に世界的な競技<エアギター>を生み出したり!(彼のクネクネはギターを弾く仕草なのだとか)
孤高のシンガーが、実は多くの人々との交流に支えられ、また彼自身も多くの人を支えたという情の深さが、声に滲み出ているようで味わい深い気持ちになります……もし彼が2015年に新譜を出すなら、晩年のジョニー・キャッシュのようにリック・ルービンのプロデュースで一枚、聴いてみたかったです!
ヒダカトオル
1968年6月5日、千葉県生まれのB型。働きながらインディー・デビューした元リーマン・ロッカー。
1997年BEAT CRUSADERS結成、2010年散開。BEAT CRUSADERSで活動中から数々の楽曲提供やプロデュースも行ない、木村カエラ、高橋瞳、メロン記念日ら女性陣のバックアップから、GOING UNDER GROUND、磯部正文等、男性アーティストのプロデュースを手掛ける。
2010年10月にはMONOBRIGHTと結婚(電撃加入)、2012年離婚(脱退)。2011年には“A.O.R”をテーマにヒダカトオルとフェッドミュージックを結成、2012年岩手のイベントで有終の美を飾る。
そして、2013年、新バンドTHE STARBEMSが始動!
http://www.thestarbems.com/
http://www.hidakatoru.com/