7月に、PANTAさんが亡くなりました。とても残念です。
ルーフトップでも、『青春無頼帖』を連載されていて、わたし、これが大変好きでした。話題が豊富で、そこに、含蓄、経験、ユーモア、すべてが、折り重なり、毎回、大変興味深いのでした。車、音楽、ロック仲間などなど、スージー・クアトロとツアーを回っていた話(第65回・第66回・第67回・第68回)なんて、凄いなあと思うばかりで、まだまだ、いろいろな話を聞いてみたかったものです。この連載、絶対、まとめて本にするべきだと思うのですが。
わたしが、最初に頭脳警察を知ったのは、高校生のころでした。当時は、バンドブームだったけど、若い人のバンドなんかよりもとにかくヤバイ、頭脳警察というとんでもないバンドがかつていた、いや、いまもいる、と噂を耳にしていました。しかし頭脳警察のレコードなんて、手に入らない、他のレコードを聴く機会もありません。ファーストアルバムなんて、とんでもない値段で売られていたような気がします。まあ、とにかく、いろいろな噂がめぐっていました。
ボーカルの人がライブ中にセンズリをこいたとか、三里塚でライブしていたとか、とにかく、いろいろ物騒で、ヤバいバンドだという認識でした。でもまあ、実際にそうだったのでしょう。
数年後、CDが再発されて、ようやく聴き出すことができました。でもって、わたしが、よく聴いていたのは『頭脳警察セカンド』でした。
今回は、このアルバムを紹介したいです。これは頭脳警察の中で一番聴いたアルバムだと思います。まあまあ、とにかく、しょっぱなの、「銃をとれ」のイントロが、とんでもなく格好良いのです! 「ディンディンディンデ、ディンデンディデンデー」、そこにドラムの音が重なり、ギターのカッティング、ああ! 今思い返して、自分の頭の中で慣らしているだけでも、本当カッチョ良いです。「ロックンロール!」って叫びたくなる音楽とは、このような音楽のことなのですね。
実は、わたし、なにか、気合を入れて物事を始めるとき、このイントロが頭に鳴り響かせることがあります。そして気合を入れます。
「いとこの結婚式」という楽曲は、いとこの結婚式に出て、肩身の狭い思いをする男の歌です。自分は、20代のころ、この先、きっとまともな人生を送ることはないだろうと思ってたので、この歌詞のような人物になるのかもしれないと心に染み、実際に、いとこの結婚式で、そんな思いをしたことがありました。
PANTAさんは、歌詞や曲名を見ると、インテリゲンチャな感じがバリバリあり、実際にそうなのですが、それをあえてぶち壊してゆくパワーや、爆発力があり、ロックなのだなと感じさせていただきます。ロックといえば、収録されている、「コミック雑誌なんていらない」も、こりゃ、ロックンロールの名曲です。
88回目の『青春無頼帖』には、PANTAさん、鮎川誠さん、山口冨士男さんが、対談していたときの話が出てきます。このとき原発の話になり、PANTAさんはいろいろと考えがあったので話していると、だんだん小難しい話になってきました。すると、山口冨士男さんが、「簡単だよ、反対って言えばいいんだよ」と言ったそうで、この言葉に、PANTAさんは大変感銘を受け、ショックを受けます。そうか、グタグタ御託を並べないで、単純にダメなら反対。PANTAさんは、冨士男さんの、その一言で、考え方も変わったそうです。ああ、これがロックだと。ガードを張らず、ビシッと受け入れるPANTAさん姿勢も素晴らしい。ぜひ、88回目を読んでみてください。
わたし、実は、一度だけ、PANTAさんと会ったことがあります。それは、わたしが書いた脚本を、流山児事務所が芝居してくださり、PANTAさんが観に来てくれ、挨拶をしたのです。「面白かったですよ」とも言ってくださりました。あの柔和な感じが「銃をとれ」の人か? と思えるほど、優しい雰囲気で、さらに好きになってしまいました。
さあ、人生、まだまだ大変だけれども、頭の中で、「銃をとれ」のイントロを流しながら、乗り切りましょう。そうすりゃ、絶対、乗り切れる。