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十五回「わけがわからないからこそ最高な渋さ知らズという唯一無二のビッグバンド」

第九十五回「わけがわからないからこそ最高な渋さ知らズという唯一無二のビッグバンド」

2023.04.03

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 渋さ知らズというジャズオーケストラバンドが、日本にあります。人の多さ、形態、その音楽性を考えると、唯一無二であることがすぐにわかりますし、海外の音楽イベントにも出ていて、人気は世界的規模でもあります。この渋さ知らズのドキュメント映画が公開されます。
 『NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇』、この映画に恐縮ながら、わたしも出演させてもらっていて、偉そうに、渋さ知らズのことを語っています。
 
 わたしと渋さ知らズの出会いは、もう、20年以上も前のことになります。どこかのレコード屋、多分新宿のレコード屋で手にしたチラシでした。そのチラシは日本地図にライブをする場所が描いてあって、なんだろうと思って調べたり、CDを購入したのです。すると、ホームページかなにかに、人間が天井から逆さ吊りされている中、たくさんの人々が平然と演奏している写真があって驚いたのでした。
 その後、ライブに行き、さらにぶったまげました。寿町のフリーライブに行ったときは、観客の方(寿町に住んでいる方)が舞台に勝手に上がってサックス吹き出したと思ったら、それは正式なメンバーだったのです。
 
 あるとき、わたしのやっている、ヘンテコなパフォーマンス集団、鉄割アルバトロスケットに、渋さ知らズの方々を呼ぼうということになり、招待チケット送ると、リーダーの不破大輔さんがやってきてくださったのです。けれども、狭い会場で入りきれず。不破さんは、差し入れの酒を置いていってくれました。終演後、喜んで酒瓶を掲げたら、落下して割ってしまったりしました。
 その後、渋さ知らズが劇バンドとして生演奏する、風煉ダンスという劇団の野外公演に、わたしたちも参加して、いろいろ交流していくうちに、鉄割メンバーの渡部真一が、渋さ知らズに参加するようになり……などなど書き出したらキリがないですし、これは、たぶん映画で語っているので、興味のある方はぜひ見てください。
 
 とにかく渋さ知らズの音楽性は、わたしが語れるようなものでありません。以前、リーダー不破大輔さんの家に行き、酔っ払って、レコードを聴きまくっていたことがあります。「次はコレだ、コレはどうだ」とどんどんレコードを聴かせてくれて、至福の時間でした。しかし気づくと、床が真っ黒、聴いたレコードだらけになっていたのです。これでは、トイレに行くにも、レコードを踏んでしまい大変なのです。そのとき、渋さ知らズの音楽は、このように、床に散らばったレコードのような感じなのだと思いました。なんだかよくわからない例えで申し訳ないのですが、わけがわからないからこそ最高なのです。
 
 そこで、今回紹介したいのは、渋さ知らズの初期のアルバム、『デタラーメン』です。もう題名からして、ふざけています。しかし演奏は、鬼の集団みたいに鬼気迫ったり、思考停止のクラゲみたいに脱力してゆれたりします。とにかく聴いてみてください。
 デタラメな世の中を救えるのは、こっちもデタラメになるしかないのです。
 

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NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇

監督:佐藤訪米
出演:不破大輔/佐々木彩子/渋谷毅/林栄一/大友良英/山本精一/金平茂紀/スズキコージ/加藤崇之/のなか悟空/片山広明/渡部真一/戌井昭人/山下敦弘/高岡大祐/フェダイン/渋さ知らズオーケストラ ほか
2022年製作/129分/G/日本
配給:ブライトホース・フィルム
劇場公開日:2023年4月1日

30年以上にわたって活動を続けるビッグバンド「渋さ知らズ」の実像に迫ったドキュメンタリー。
1989年の結成以降、離合集散を繰り返しながら現在も精力的な活動を続ける「渋さ知らズオーケストラ」。ジャズを基調としながらダンサーや舞台役者がステージを彩り、総勢30人を超えるメンバーが熱狂的なパフォーマンスを繰り広げる。映画ではバンドの中心人物である不破大輔がその原点やエピソードを語るほか、黎明期の元メンバーたちが当時を振り返る。さらに元メンバーの佐々木彩子がナビゲーターを務め、渋谷毅、林栄一らジャズ・アバンギャルドシーンを牽引してきたミュージシャンたちと対話を重ねてセッションを展開。ミュージシャンの大友良英、映画監督の山下敦弘らも出演し、それぞれの立場から同バンドについて語る。
監督は、2019年に京都大学西部講堂で開催された『渋さ知らズオーケストラ 天幕講堂渋さ西部大祭』を記録した佐藤訪米。

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