イヤモニはロックじゃない!?
景夕:リハとかはちゃんとやります?
ぶう:僕はリハとかはめちゃめちゃちゃんとやりますよ。でも、心掛けていることはあります。みんなの音取りが終わって、俺が必要な時に行くって。じゃないと、でかい奴がステージ上をウロウロしてるとスタッフさんからすごい「こいつ邪魔だな」っていう空気を感じるんですよ。だから楽屋で耳を澄ませて、「あっ、ベースが鳴った。ギターのコーラスを取ってる。そろそろだな」ってステージに行くようにしてますね。
ミド:でもこれが出来るようになったのはここ1〜2年で、それまでは出来なくて、全員音取りが終わってるのにボーカルがいないって状態でしたね。よく出るイベントとかだと裏方の方とも知り合いになってくるじゃないですか。本当にノロマ扱いされてたんですよ(笑)。
ぶう:俺、それを聞いた時、すごくショックでしたね。
一同:(笑)
ぶう:よく知っているスタッフさんが裏で俺のことを「またいねーよ」って言ってるっていうのを聞いた時は、本当にショックで。
ミド:すごい仲良くしてくれてる人で、だからこそ言ってくれるから俺らも面白いけど、これは本人に知らせた方がいいなって(笑)。
ぶう:それを知らされて。“モタ”って言われてるっていうのを知った時にすごくショックで。それからはすごい耳をそばだてて、「あっ、そろそろ俺だ!」って行ってますね。
一同:(笑)
結良:それ、めちゃショックですね。
ぶう:ショックです。
景夕:めっちゃショック療法で成り立ってるじゃないですか(笑)。
一同:(笑)
ミド:そうですね。犬の躾に似てるところがありますね(笑)。
ぶう:景夕さんは音出しの段階からリハにいますか?
景夕:いや、ライブの時のリハは、むしろ1曲バンドで合わせるくらいまで行かないですね。
ぶう:見てもない?
景夕:見てもないです。
ぶう:あ〜、それがね、1番いいかもしれないですね。
景夕:行く時もあるし、行かない時もあるし、気分なんですけど(笑)。
結良:もはや僕らも行かないもんね。
景夕:行かないね(笑)。
結良:ギターとベースももはや行かないですね。
ぶう&ミド:えっ!?
結良:ドラムのチェックが長いんで。呼ばれるまで行かないですね。
ぶう:そうなんですね。景夕さんはイヤモ二は使われてますか?
景夕:使ってないですね。意地でも使わねーって思ってるから。
ぶう:えっ、何でですか?
景夕:どこかでいきなりモニターでやれってなった時に、対応出来なくならないかなっていうのと、ワイヤレスマイクも自分では買わないようにしてて。
結良:嫌いだよね。
景夕:若い子たちほど持ちたがるっていうのもあるし、ワイヤードで出来るパフォーマンスもかなり多いんで。だからイヤモニとワイヤレスマイクは、これがないとこのパフォーマンスが出来ないっていうものがない限りは…。
結良:客席に下りる時くらいだよね。
景夕:そうだね。客席に下りる時にあったら便利だなってくらいですね。
ぶう:想像の100倍アーティスティックな答えが返ってきましたね。
ミド:逆だもんね。
ぶう:はい。僕、最近イヤモニにしたんですよ。最初はイヤモニは嫌だったんですよ。何が嫌かって言うと、すごく格好つけてるみたいになるじゃないですか。AREAなんて絶対イヤモニいらないのに、AREAでイヤモニのチェックしているバンドを見ると、「うわ! メジャー振ってる!」って思うんですよ。あとボーカリストがライブ中にイヤモニを気にしてる仕草が、「テレビじゃないんだから!」みたいな。すごく恥ずかしいって思って。だから俺もめっちゃ格好つけてる感じになるのが嫌だったんですよ。ロックじゃないなって。でもこの間、「肉フェス」っていうイベントに出させてもらった時に、始めて京セラドームでやったんですけど、ビビるくらいドラムが聞こえなくて。「ダメだ」って思って、ドラムの前まで下がって歌ったんです。それでゆくゆくは必要になるなって思った時に、ちょっと練習しておこうかなって思って、買ったんです。で、使いだしたら、めっちゃ便利なんですよ。
景夕:あっ、やっぱりそうなんですね。
ぶう:だってモニターとか、関係ないですもんね。
ミド:関係あるじゃん! センターのモニターも思いっきり横に向けて全部自分(ボーカル)に当ててるんですね。ベースってセンターのモニターがこっちに向いててくれると便利じゃないですか?
結良:分かんない。こっちに向いてたことがないから(笑)。
景夕:1回も向けたことがないよね(笑)。
ミド:俺もなかったんですけど、この前たまたま自分の方に向いていた時があって、これは便利だなって感じたんですよ。自分用にモニターがあればまた違うんですけど。
ぶう:あっ、ないところでね。
景夕:あー、なるほど!
結良:うちは4人だから、僕は僕用のモニターがあるんですよ。
ミド:羨ましい! 今とメンバーが違う時に俺、上手だったんですよ。で、その立ち位置をずっと軸としてやってきてたんで、今のベース位置になった時に、どうすればいいか分からなかったんですよ。対バンのベースの人たちを全員見て、ベースの人たちってどうやって弾くんだろうっていうところから勉強し直しましたからね。上手でやってたこととは全部が当てはまらなくて。最近気付いたんですけど、上手でやってた時に無意識にハットの音をすごく聴いていたんですよ。
結良:あー、1番ハットが近いですもんね。
ミド:今、1番ハットが遠いんですよね。でもモニターがないからハットがもらえない。大変だなって思って。
景夕:それは確かにモニターが向いてて欲しいですよね。
ぶう:あげるよ。
ミド:イヤモニしてるから最初はモニターが自分の方にも向いてて、「自分の声とハットも下さい」ってモニター要望したのに、勝手にモニターを自分の方に向け出して、「ボーカルのモニターにめいいっぱい自分の声を下さい」って。「お前、イヤモニしてるだろ!」って。
一同:(笑)
ぶう:あげる、あげる(笑)。
ミド:で、格好つけるのが嫌だって言ってたのに、MC中にずっとイヤモニを気にしてるし。
一同:(笑)
結良:型をとったんですか?
ぶう:事務所にイヤモニを買ってもらったんですけど、もしかしたら買ってもらっておいてすぐに使わなくなる危険性があるなって思って、自分でギュッとして小さくして一旦使ってるんですよ。ミドが不安だったら、モニターあげるよ。もしかしたらライブ中に「これ、ダメだ!」ってなってイヤモニを取った時のために、俺にモニターを向けてたんだけど。
ミド:なんでロックじゃないんだよ。
ぶう:そう、ロックじゃないの。
一同:(笑)
結良:型をとらないイヤモニでも、外れないものなんですか?
ぶう:全然外れないですね。ギュッとして入れると耳の中で広がって、遮音性もめっちゃあって。
ミド:そもそも耳が小さいんですよ。基本、いろいろ小さいんですよ。
ぶう:顔はでかいです。
ミド:顔はでかいけど、器も含めて小さいです。
一同:(笑)
ぶう:モニターって箱によって全然違うじゃないですか。めっちゃ元気がなくて弱いのとかあるじゃないですか。
景夕:ありますね。元気がなさ過ぎて、何回「上げて下さい」って言えばいいんだろうって時もあるし。
ぶう:そうなんですよね。そうすると、喉を壊しません?
景夕:壊すね。「あれ? 今日俺、声が出にくいのかな?」って気を付けずにモニターやってると。
ぶう:あとで映像を観たら、めっちゃガナッてたりとか。
景夕:うん。無意識に自分の声のポイントみたいなのが返りで欲しい時があるんですよね。でEQ(音声信号の周波数特性を変更する音響機器)で、箱鳴り的にもここを削らないとハウっちゃう箱とかで、そこが自分が1番欲しいところのがなくて、無理に喉の形を変えて歌ってて、ガナッてたりとか、変に喉を使ってたりとかで、この前の2日連続のライブは大丈夫だったのに、何で今回の2日連続はこんなに声が出ないんだろうってなったりするから、それを考えるとイヤモニはいいかもね。
ぶう:そうなんですよ。ただすげーロックじゃないんですよ。
ミド:野性味というか、喉を潰すくらいのでかい声が良さだったんですよ。でもイヤモニにした途端。
ぶう:めっちゃ声が小さくなりましたね(笑)。
ミド:蚊の鳴くような声になって、「返りがない! 全然聞こえねー!」って。
景夕:1回だけ、O-EASTでやった時にパフォーマンスで、ボーカルの足踏みをカウントにしてやるってことがあって、どうしてもイヤモニが必要なことがあって。せっかくだから全部をイヤモニでやろうってやってたんですけど、リハの時に、いつもと同じPAさんがその日もやってくれていて、「景夕さ、今日声が小さいね」って言われて、やっぱり自分は聴こえてるから。お風呂で歌ってる時のような、鼻歌のような感じになっちゃってたみたいで。
結良:それってパフォーマンスに結構関わるの?
景夕:俺はね、あんまり。その時は、お客さんが声を出していてもいなくても、口が開いていれば声が出てるんだろうなって。
ミド:ちゃんと聴いておきな、そういう話を。
ぶう:僕が聴いたのは、歌が上手いボーカルは、完璧なパフォーマンスをするためにイヤモニをしてもいいけど、歌が下手で、エモさっていうか、命削ってるぜ! ってみたいなボーカルは絶対向かないから、ぶうくんは向かないよって、みんなに言われますね。
景夕:結構そうかもしれないですね。話が真逆になるんですけど、感情を入れる時って、自分の声が聴こえないくらいの方が感情は出しやすいんですよ。高音にここ突き刺すぞって時とか、聴こえ過ぎちゃうと、ちょっと声を遠慮しちゃうというか。それがあるから、曲順的にも使い分けを自分の中で上手くやっていければ、いいと思うんですけどね。
ぶう:俺、最近マイクを持ってる親指を立てて、口とマイクを離してるから。注目して見て。
ミド:そうなん!
結良:ちょいちょい小技が入ってくるんですね(笑)。
ぶう:骸骨マイクって口と近いじゃん。でもそれで「わー!!」って歌っちゃうとめっちゃ入っちゃうから、親指立てて歌ってるんだよ。
一同:(笑)
ミド:でもさ、それがエモさじゃねーの。じゃあさ、普段もイヤモニしないでモニターでやればいいんじゃないの(笑)。
ぶう:めっちゃ聴こえるから、本当に! あと、メンバーがめっちゃ下手やなって思います。
一同:(笑)
ぶう:部屋の中で鳴ってると何となくでしか聴こえてないから、多分CDと同じものが脳内で変換されて聴こえてるんですけど。
結良:コンプも掛かりますからね。
ぶう:そうなんですよ。イヤモニって、もろラインの音じゃないですか。めっちゃ人間味があるんですよ。
結良:(笑)じゃあ、ミスは超バレる?
ぶう:超バレます! だからすっげーキモイですよ。
ミド:でも完璧に弾いてるのが聴きたいなら、CDを聴けばいいんですよ。
ぶう:あっ、何か、ロックみたいなことを言い出した(笑)。
ミド:ライブはライブですから。その時のものですから。
ぶう:でもトラブルに気付けるようになりましたね。ギターとかが弦を切っても、分からないんですよ。頭の中で鳴ってるから。
結良:あー、そうですね。僕も分からないんです。
ぶう:「えっ! そうだったんだ。言って」みたいな感じだったんですけど、イヤモニにしたら、誰かのトラブルはすぐに分かりますね。
景夕:トラブった時って、バンド的にどういう対処をします?
ぶう:曲終わりくらいが近付いていたら、もうMCを入れちゃいますね。
景夕:あっ、やっぱりそうですよね。
ぶう:でも曲頭でトラブったら、もうしょうがないですね。うちはベースを入れて5人なんで、空いた所に1人スッと入って、そのまま4人体制でいっちゃいますね。
結良:うちは止めちゃうね。
景夕:止めるね。「あっ、待って」って言って(笑)。
ミド:それをやる勇気も、そろそろ俺らも必要なのかもしれないですね。
景夕:えんそくさんの方が、そういうのをやれそうな感じだよね。
ぶう:僕、すごいまくしたててしゃべっちゃうんですよ。スッと堂々としゃべってればいいんですけど、もろトラブった時のしゃべりになっちゃうんですよね。隠そうとしてても、隠そうとするあまりに5倍速くらいでしゃべってますからね。
一同:(笑)
景夕:隠そうとしなければいいんじゃないですか。
結良:うちは、一切隠さないね。
景夕:「あるね〜、こういうことね」って。
ぶう:うちは割と出来れば気付かない人がいるなら、気付かせないまま進行しようかなっていう感じではあるかもしれないですね。
ミド:ド頭でってなれば、そこはどうにかコント的に我々で処理するみたいのはありますかね。
ぶう:どこまでもなるべくなら、トラブルがなく台本通りだったよっていう風に思わせれるようにやるっていう感じなんですよ。だから真逆のスタンスかもしれないですね。
結良:タイゾ(Kraのギター)なんかね、弾くのを諦めるもんね(笑)。
ミド:それはかなりロックですね。
結良:逆に焦るのは、靖乃(Kraのドラム)だよね。
ミド:そういう人がいてくれればいいのかもしれないんですけど、ギターの2人も変に真面目だし。
ぶう:トラブったら、すっげー真顔になるんですよ。それがダサイって(笑)。10年やってても格好いい処理の仕方は、まだ身に付かないですね。
ミド:初期の頃にそういうのでふざけて処理し過ぎたのが、ダサイみたいになってるのかもしれないですね。だから今は、そこはちゃんとやろうやっていう変な風習なのかもしれないですね。
ぶう:1周しちゃったところはあるのかもしれないですね。
景夕:バンドによって、たどってきたもので受け取り方も違うしね。
えんそくライブ写真:荒川れいこ