本番前の“宗教”
——皆さんは、本番前に何をすることが多いですか?
ぶう:Kraさんは本番前に集まって「行くぞ! おいっ!」みたいな掛け声とかはやるんですか?
結良:やりますね。
ぶう:やっぱりやるんですね!
景夕:形式上みたいな感じだよね。まぁ、それでテンションが上がることはないんですけど。
一同:(笑)
結良:やったからどうってことはないんですけど、なんとなく今までの流れでやってるし、みたいな感じだよね。
景夕:うん。それをやるのは確かにあるけど、うちらは個々でそれぞれが直前まで自由にしてることが多いかな。俺はずっとゲームやってるしね。
結良:ね。僕もそうかな。AREAだと、楽屋とエントランスの仕切りのカーテン幕の所で、ファンが何を言ってるかずっと聞き耳立ててるかな。
一同:(笑)
結良:あとステージに行って、幕の向こうでお客さんが何を言ってるのか聞き耳立ててばっかりですね。
ぶう:僕らは「おー!」っていうのが出来ないバンドなんですよ。みんなで斜に構えてて「いや〜、恥ずかしいからいいよ」って。俺が、「よっしゃ、気合い入れよう!」って言っても、誰もやってくれないんですよ。だからよく1人でやってたんですよ、周りをビビらせるために。「行くぞー!!」って言って、「おー!!」って(自分)1人の声しか聞こえてこないみたいな。
一同:(笑)
ミド:メンバーは後ろにわらっといるんですけど、1人でやってるんですよ(笑)。
ぶう:スタッフさんとかがすげービビるんですよ。「えっ! このボーカル…。いじめ!?」っていう感じになって、「よし、しめしめ」って。「変わり者だと思っただろ」って(笑)。
一同:(笑)
ぶう:最近は、もっと怖いことをしてるよね。僕らは通称“宗教”って読んでるんですけど、“教典”っていうノートを作って。社訓を始業の時に言う会社とかってあるじゃないですか。そういうのを最近始めました。
結良:それも1人で言ってるんですか?
ぶう:それはみんなで言ってるんですけど、みんなでやるとめっちゃ怖いんですよ。いきなり対バンが、「よし、“宗教”始めようか」って言ってノートを開いて、「前の客は関係ない。いつでも後ろに飛ばそう!」
ミド:「よし、頑張りましょう」
一同:(笑)
ぶう:「次、個人ダッシュはいりません。みんなを相手にしましょう」
ミド:「はい、個人ダッシュはしません。照明さんを見て、やっていきます」
ぶう:「不安があるまま、ステージに上がるのはやめましょう。不安は大丈夫? ない? 今日のセットリストは大丈夫?」
ミド:「あっ、2曲目の繋ぎは…」
ぶう:「そこは投げて、止まって、俺が入っていきます」
ミド:「はい、じゃあそれでよろしくお願いします」
ぶう:「じゃあ最後に、今日も人生最後のライブかもしれないっていう気持ちで頑張りましょう!」
ミド:「頑張っていきましょう。よろしくお願いしまーす」
一同:(笑)
ぶう:ってやると、他のバンドが「めっちゃ、体育会系やん! こわー!!」ってなるんですよ。
景夕:おもしろ〜い(笑)。
ミド:でも本当に、今まで出来なかったことを忘れないってための、辱めの気持ちでやってるみたいなところが大きいんですけど、長くやってると忘れちゃう部分があるんで、それを再確認してちゃんとステージに立つっていう意味でやってるんで。
ぶう:何よりも余裕を持ってメイクを終わらせなきゃいけないっていうプレッシャーが出来ましたね。“宗教”の時間だよって。
ミド:項目がありますからね、“宗教”の教典の中に。「本番20分前には準備を終わらせる。今日は終わりましたか?」
ぶう:「すみません」
ミド:「終わりませんね。次はワンマンなんで、もっと余裕を持っていけるように頑張りましょう」
ぶう:「はい。頑張ります」
一同:(笑)
ミド:主にこの人(ぶう)のことが書かれてますけど(笑)。「タイトルを雑にしない」とか、「上の棒に捕まらない」とか、「ピースフルにやりましょう」とか(笑)。
ぶう:これは、効果覿面で周りが結構ビビるんですよ。
ミド:自分たちが結構ピリッとするんで。
ぶう:たまにすごくバカ正直な若い子とかに、「あれ、うちのバンドでも取り入れたいです」って言われることがありますよね。
一同:(笑)
えんそくライブ写真:荒川れいこ