Kraが景夕と結良の2人編成になってから、すでに1年以上の歳月が経過。4人から2人になった当初は今後の活動が懸念されたが、ライブごとにサポートメンバーを加えながら、Kraは一切ペースを落とすことなく。例年通り精力的にライブ活動を続けてきた。何時しかファンたちも、ライブごとに変化するサポートメンバーらとステージを楽しむ景夕と結良の姿に触れ、同じよう、編成が変わることでその時ごとに生まれるKraナンバーの変化を楽しめば、ツアーやライブごとのテーマに合わせ膨大な持ち歌の中から選び抜かれる曲たちを、彼らと同じようテーマを持ったオムニバス盤公演のように楽しむことへ喜びを覚えるようになっていた。
編成が変わって以降、あえて新作のリリースを抑えてきたのも、2人が未来へ向けたKraの可能性を探るのと、改めてKraとしての土壌を踏み固めるためだった。揺るがない土台を作り上げた実感を得た2人は、その感触を確かめたうえで新曲の制作へ突入。生まれたのが、2月26日(水)に発売したミニアルバム「Dis WORLD」だった。
本作は、都啓一(Rayflower・SOPHIA)が全面プロデュース。新生Kraが、どんな想いを胸にミニアルバム「Dis WORLD」を作りあげたのか、2人の言葉を通してお伝えしたい。[TEXT:長澤智典]
――メンバーが2人編成になり、1年強の日々を経過。速度を落とすどころか、しっかり例年と同じペースで活動を続けていますよね。
景夕:1年を経過し、ようやく僕らも今のKraのスタイルに慣れてきたところですが、物事を決める速度はあきらかに早くなりました。
結良:そこは、準備期間を考慮すれば自然にそうなること。むしろ、早め早めに準備をしていかないとサポートメンバーを含めいろんな人たちに迷惑がかかってしまうぶん、それも必然と言えばそうなんですけどね。
――ファンの人たちを見ていても、2人のKraに違和感を覚えるどころか、毎回、サポートメンバーたちと楽しくステージングしてゆく2人の姿を微笑ましく見ていれば、毎回絶妙に変化し続けるKraのライブ自体を楽しんでいますよね。
景夕:そこなんですよね。面白いのが、サポートメンバーを発表するたびに、最初はみんな「前の編成が良かった」と言いながら。ライブを続けてゆく中、みなさんサポートメンバーのことも好きになり、何時しか支持の声を上げてゆくんですよ。
結良:僕ら自身が、サポートメンバーの方々とその都度ごとのライブを楽しんでいるように、お客さんたちも僕らと同じ心境で楽しんでくれている。それも、嬉しいことですよね。
――そんな、ライブを軸に据えた1年間の活動を経て生まれたのが、ミニアルバムの「Dis WORLD」になります。
景夕:言われた通りの作品になりましたからね。歌詞についても、この1年間を通した中で感じた想いを踏まえつつ、この先に向けての気持ちをいろいろと書き連ねています。
――タイトル曲の「Dis WORLD」へは、「新しい世界を探しに行く」意思をとくに強く打ち出しました。だけどこの想いは、Kraとして活動を続けてゆく中、何時だって持っていた気持ちじゃないですか?
景夕:そうなんですけど。今回、その気持ちを改めて確認しようとしていた面もあったなと思います。
――ミニアルバム「Dis WORLD」でサウンド・プロデュースを手がけたのが都啓一(Rayflower・SOPHIA)さん。まずは、出会いから教えてください。
結良:きっかけは僕なんですけど。 僕自身、Kraの活動と並行し、riceの有紀さんと一緒に定例でセッションイベントを開催し続けてきました。そのイベントも1年を迎えることから、「大きい会場を舞台に、バンドのスケールも大きくしてやろうか」という話になりまして。そこでメンバーを集めた中へ、都さんも参加していただきました。
そのときのセッションでは、僕や有紀さんのバンドの持ち歌も披露することから、都さんが、僕が用意したKraの楽曲たちを持ち帰り、ライブ用に打ち込みアレンジをしてくださったんですけど。通常ライブアレンジを手がける場合、担当したその方が「自分はこんな感じが良いと思う」と言いながら自分流に染め上げてゆくことが大半なんですよ。だけど都さんは、Kraの楽曲を「Kraらしい理想の姿」にアレンジしてくださった。そのときに、「この方はとても素敵だな」と感じたんですね。そのセッションから生まれた付き合いの中、ちょうどKraも「そろそろ新作の制作へ入ろうか」という話をしていた時期だったから、僕がふっと「都さんなら、Kraの楽曲をあるべき姿はもちろん、より良い姿へ引き出してくれるんじゃないかな」と思い、そこから「都さんってバンドの音源プロデュースもやっているんですか?」と聞いたら、「やってるでぇ!!」と返答、「これはぜひお願いしたい」と思ったことがきっかけなんです。都さんの言葉を聞いたうえで、その後すぐに景夕にも確認を取ったら「いいよ」ということだったので、今回、正式にお願いをしました。
――都さんは、Kraの持つ世界観を何よりも重視したプロデュースをしてくれたわけだ。
景夕:そうなんです。Kraの個性や持ち味、今回うちらがやりたかったことをより良い方向へ伸ばしていただける方だったように、一緒に出来てすごく良かったです。
結良:「Dis WORLD」を表題曲にと選んだのも都さんなんですよ。
――そこの経緯、とても興味があります。
結良:最初にメンバーと事務所のスタッフで収録する4曲をセレクト。そのうえで、最初は「2/4」を今回の作品のリード曲にしようと決めたうえで、都さんにデモ楽曲を投げました。それを聞いた都さんから来たのが、「俺、リード曲にするなら「Dis WORLD」がええと思うな」という返事でした。僕ら自身、今回の作品を都さんにお願いすると決めた以上、そこの判断も一任しようと決め、「それでお願いします」と返事をしたわけですが。実際に上がった楽曲を聞いたら、僕らの予想を遙かに越えた存在感を楽曲が放っていた。都さんも、「2人のKraという姿勢を今回は何よりも大事にしたかったので、これから未来へ突き進む2人の意思をしっかり反映する楽曲にしたかったし、「Dis WORLD」はそうなれる曲だと思ってた」と言ってくださいましたからね。
景夕:そこまで見据えたうえで、都さんは「Dis WORLD」を表題曲として選んでくれたわけなんですよ。
結良:デモ楽曲の雰囲気はそのままに、それまで重たいリズムだったところを、都さんがダンサブルに変えてくれたことで、よりノリを活かせた形へ仕上がりましたからね。
景夕:歌詞の面でも、2人編成になって初めての作品ということから「どんなことを書けばいいんだろう」と頭を巡らせていた中、歌詞の方向性も「Dis WORLD」がしっかり導き出してくれました。
――ここからは、収録曲ごとの魅力を探りたいと思います。まずは、改めて「Dis WORLD」について語っていただきましょうか。
結良:最初に「Dis WORLD」を作ったときは、ファンク寄りのベースのフレーズを軸に据えた曲として作っていました。それを聞いた都さんから「ベースのフレーズはインパクト強いから、そこは活かしたうえで、全体的なリズムをもっとダンスミュージック寄りにしよう。そのほうがこの楽曲は絶対に映えるから」と提案を受けお願いをしたところ、まさに言われたような楽曲へ仕上げていただけました。
景夕:楽曲自体はノリ良くダンサブルだけど、その中へ少し暗い部分が見えたことから、言葉使いではけっこう悩みましたね。僕自身、常日頃から「満足した」と思っても、また新たな欲求が芽生えてくるように、「Dis WORLD」でも、「現状を壊し新しく塗り替えることを、これまでも、これからも繰り返しながら、それを前へ進む力にしていこう」という想いを歌詞に詰め込みました。ただし、「ここから大きく変わる」のではなく、これまでもそうでしたが、「そのときの自分たちが出来ることをより進化成長させる形を持って、前向きに変化してゆく」姿として歌詞には映し出しています。
――「Dis WORLD」を表題曲へ据えることで、「今のKraはこういう姿勢なんだ」というのを示したかったのでしょうか?
景夕:そこはありましたね。
――2曲目に収録したのが、「言葉にしたい言葉」になります。この楽曲、明るく開放的なビートロックチューンでありながら、途中、いきなり心地好いボサノバ/ラガビートへ転調しますよね。それによって、楽曲へより心地好さと表情の深さを覚えました。
景夕:じつは、途中でボサノバ風に転調するところが「言葉にしたい言葉」の魅力であり、歌詞を書くときに、「どういう言葉にしようか」と想い悩んだところでした。と言うのも、そこへ至るまでビートに気持ちを乗せて書いていた想いを、転調をきっかけに一度変えてゆくべきか、それとも、そのまま延長して進めていくべきか。そのあとに楽曲は最初のスタイルへ戻るよう、そこが表現するうえで悩んだところでした。
――結果、想いの面でも連綿とした流れを作りあげました。
景夕:そこは、詰め込んだ想いの流れを優先すべきだなとの判断でしたね。
結良:「言葉にしたい言葉」って、最初から最後まで同じビート感を持ったまま駆け抜けても十分に成立する楽曲なんですよ。ただ、Kraとして18年間も楽曲を作り続けていると、「過去にストレートな曲はやってきてたから」という想いから、どこかひねりたくなるんですよね。そこで、あえて曲中で転調をし、ノリを落としたんですけど。明るく疾走感を持った曲調のように、途中でテンポをゆっくりにしても楽曲自体が暗く落ちることはないと思っていたどころか、その転調が、楽曲へ深みを与えるうえでの良いクッションになったなと思います。
――「言葉にしたい言葉」へは、ファンたちへ向けた想いを記しました。やはり、この想いは歌にして届けたかったんですね。
景夕:そうですね。本当ならMCで語れば良いことかも知れませんけど、僕自身照れてしまうあまり、こういう気持ちをMCで上手く伝えるのが苦手というか、避けてしまうんですよね。なので、歌を通して伝えようということで書きました。