パンクスやバンドマンに介助の仕事はおすすめです!
──迷惑になるから外出は控えようと思ってる人もいるでしょうし。そう思わされてるっていうか。
藤原:精神科の考え方って、病気を治そうっていうんじゃなく、「何に困ってるのかを伝えてほしい。その困り事をどう解決していくかサポートする」って感じなんですよ。
──うんうん。困り事なんですよね。
藤原:困り事って誰でも起こりうることで、それをシェアしてサポートするってことが大事だなって。それってバンドやってると凄い実感できる。ツアーに行って各地に友だちができると、どこかで災害が起きると何かしなければ、何ができるかなって考える。それは全てに繋がっているんですよね。障がいを持つ人が身近にいれば、何に困っているのか気づける。僕、一緒にモアザンハウスで暮らしてる車椅子ユーザーの佐山さんのために特別に何かしようって気持ちはないんです。偶然近くのスーパーで会ったりして一緒に帰って、そのまま佐山さんの部屋でご飯食べたりとか。そのくらいの接点。シェアハウスしてるな~って感じで。ただね、最近落ち込むことがあって部屋で一人で過ごしてる、みたいな話をしてたときに、佐山さんに「健常者は一人になれていいな」って言われて、一瞬で酔いが醒めてしまって。
──分かります。私も昔、障がいを持つ人との音楽イベントで、隣でライブを見てた車椅子の人に、「楽しいよねー、いい曲だよねー」って言ったら、「僕はこのタイプの音楽はあまり好きじゃないんですよ」って言われてドキッとして。こっちは障がい者のためにやってあげてるって意識があったんだなって。楽しいって答えてくれるのが当然って思ってたんですね。
藤原:はいはい。
FUCKER:押し付けなんだよね。
藤原:楽しい人ももちろんいるけど、つまんねえって思ってる人もいる。文化祭のクラスの出しものとかそうですよね。やりたくないことでも参加させられちゃう。
FUCKER:モアザンハウスはそのへんそれぞれ勝手に(笑)。
藤原:俺はモアザンハウスで、単なる同居人として一緒に暮らしてることが凄く良かったなって。
FUCKER:シェアハウスで暮らさない限り、そういう関係にならないよね。
藤原:声をかけたりしなくても、どっかの部屋から聞こえてくる生活の音っていうのがね、安心するんですよ。あ、居るな。人が居るんだな。って。
FUCKER:佐山さんも言ってたよ。「車椅子で帰ってきて、上に灯りがついてたらホッとする」って。これが全然知らない人の部屋の灯りだったら別にホッとはしないよね(笑)。
藤原:部屋で人に会える気分じゃないときに、食器の音が聞こえてきて、「そこに同じような誰かが居る」ってことに漠然と包まれたりとか。
FUCKER:だからホント全国に広げたい。パンクが好きだったりする人に、いやジャンルなんて関係ないんですけど、介助はおすすめです! 実際、全然人が足りないんですよ。24時間介助が必要な人が自分でアパート借りて住むとなると多くの介助の人が必要で。ニーズはあるんですよ。でも圧倒的に担い手が足りない。介助は凄い必要な仕事だし、何より楽しいですよ。
──今まで気づかなかったことに気づけるし、視野が広がるでしょうし。
FUCKER:グンと広がると思います。全国的にもパンクスやバンドマンは介助をやる! そのぐらいアピールしたいしムーブメントにしたい。実際に、今もたくさんやってる人がいるんで。
──ムーブメントになったら、福祉の状況、介護士の待遇も良くなっていくかもしれない。
FUCKER:アンダーグラウンドのネットワークを使って、それを実現させたい。地域ごとにそれぞれのモアザンハウスができて、違う新しい何かが生まれる。思い切ったアプローチをしてみんなを巻き込んでいきたい。夢みたいな話だけど、本気です。
──分かりました! 最後に本作のジャケット、メチャメチャ凝ってるしカワイイですね。
藤原:いいですよねー! デザインのくまがいなおさんがバツグンで。モアザンハウスを再現してくれました。
──それで、なんか米粒が入ってたけど……(笑)。しかもなんか字が…?(笑)
FUCKER:ふじふじの本によって、モアザンハウスに繋がっていって作品としても凄い立体感のあるものになったと思って。コレは俺もなんか入れなきゃいけないぞって、米にしました(笑)。ふじふじが1万字以上の本なら、俺は情報量の少なさで勝負しようと(笑)。米に字っていうのはずっと温めてたアイディアなんです。米って生活の断片で、どこの家にもあるものだし。まさに「家」を表しているなと。
藤原:うちも、絶対そのへん(台所)のどっかに何粒か落ちてます(笑)。
FUCKER:ほらね(笑)。