Limited Express (has gone?) がミニ・アルバム『The Sound of Silence』をリリース!
ぶっとさが増した豪快で痛快なサウンドに、突き刺さるような、それでいて心がグイグイ開かれていくようなボーカル。コロナ禍にあって、いや、だからこそ攻め続ける。怒りも笑いもぶち込む。混沌として不穏な空気漂う"今"を生き、"今"から逃げずに立ち向かい、放つ。もう、カッケー! って叫びたくなるミニ・アルバムなのだ。
サウンド・エンジニアは松田健一。ジャケット・デザインはCHIAKIZZ CLUB(でぶコーネリアスEXなど)。そして「Live or die, make your choice」のMVの監督は柴田剛。濃いっ! 改めてメンバーは、JJ(G)、YUKARI(Vo)、JUN TANIGUCHI(B)、YASUNORI MONDEN(Dr)、KOMADORI(Sax)。YUKARI、JUN TANIGUCHI、そしてオリジナル・メンバーのJJ(飯田仁一郎)にインタビュー。3ピースから5人編成になった経緯も聞いた。リミエキは留まることなく躍動していく。(interview:遠藤妙子)
世の中的に新しいものではなく、自分の中から新しさを出そう
──コロナ禍にあって、いやコロナ禍だからこそ攻めの手を緩めないカッコいいミニ・アルバムです。ミニ・アルバムを作ろうって決めた時期は?
YUKARI:わりと早めです。3月ぐらいに出そうって言ってたよね?
谷ぐち:いや、その頃はまだリリースは決めてなくて曲だけ作っていて。春は新曲バンバン作ってました。
飯田:ライブが全部潰れて曲を作る時間はあったから。バンドを止めることなく続けていこう、ライブをやれなくても活動はしていこうって決めて、今までどおり週イチでスタジオも入って。自粛期間中はスタジオも入れない時期がありましたけど。
YUKARI:メンバーの環境や生活のスタイルが、たまたま同じ方向に向けたんですよ。それぞれじゃないですか。家族に高齢の方がいる人や基礎疾患のある人や職業柄で制限が出てくる人もいる。いろんな人のいろんな状況がある中で、うちらはたまたまメンバーが同じ方向を向くことができた。それならできることをやっていこうって。
飯田:で、6月ぐらいに曲がたまってきて、音源を録ろうって。
──今のリアリティや感情が溢れ返ってるアルバムだなぁと。で、今作の話の前に、今日は個人的には久しぶりのインタビューになる結成時からのメンバー、飯田君も参加してもらっているので、3ピースから5人になった経緯から聞かせてください。というのも、前回のインタビュー(Limited Express (has gone?) - 生活や社会と音楽をダイナミックにリンクさせる谷ぐちファミリーが語るバンドマンとしての立脚点)で谷さんが、「ライブでモッシュが起きたとき、仁一郎が嬉しそうだった」って言っていて。いい話だなぁと(笑)。
谷ぐち:ハードコアのライブではモッシュって当たり前に起こるけど、オルタナのバンドってあまりモッシュは起きないから。半ば笑い話で言ったんです。
YUKARI:でも3人の頃のリミエキでもあったよ、モッシュ。
飯田:あったんですけどね、でもハードコアのノリではない。オルタナの人たちは、僕がそう思うってことですけど、ずっと憧れがあるんですよ、パンクやハードコアに。オルタナってポピュラーなものに対するアンチってとこがあるじゃないですか。パンクやハードコアもそうですよね。どっちもロックに対する反抗があって出てきたものだと思うんです。それは一緒だけど、パンクやハードコアってオルタナよりさらにアンダーグラウンドで。オルタナやってる人間としては、それが凄くカッコ良く映るんですよ。だから谷さんが入って5人になったリミエキにモッシュが起きたとき、改めて嬉しかったんです。
──谷さんはハードコアの人ですからね。
飯田:そうそう。で、思い出したのが、昔、誰かが「パンクは真似をしてもいいんだ」って言ってたのがカッコ良かったんですよ。オルタナは真似をしたらダメっていう精神なんで。真似したらダメだし、とにかく新しいことをやるって精神。パンクはリスペクトがあれば真似していいんだってその人は言っていて。なるほど! って思ったんです。
──3人の頃のリミエキは新しいことやびっくりさせることを一番に考えてたと思うけど、逆にそこに囚われてる感じがあったのでしょうか?
飯田:そうかもしれない。新しいことやびっくりすることをやりたいっていうのは今もありますけど、世の中的に新しいものではなく、自分の中から新しさを出そうって変わってきましたね。
5人編成になるときにビジョンとしてあったもの
──『JUST IMAGE』(2013年)のときのインタビューで、飯田君は同じようなこと言ってましたよ。「世の中にとって新しいものより、自分の中から出てくる新しいものを作った」って。その後、3人から5人編成になったんですよ。ブレてませんね。
飯田:そうか、言ってましたか。
──5人編成になるとき、飯田君の中にはどういうビジョンが?
飯田:YUKARIちゃんがピンボーカルってことは決めていて、そしたらベースはドッシリ低いベース。谷さんとYUKARIちゃんのピースがバシッとハマったら、これまでと違う新しいものになるって思いました。リミエキは谷さんがプロデュースしたアルバムもあるし、谷さんがメンバーになるのは自然だったし。
YUKARI:わたしは当時ピンで唄いたいって一言も言ってないけどね。仁一郎君は長期的で全体的なイメージを持って進めるタイプで、わたしは目の前のことを一つ一つ進めていくタイプ。わたしは先のビジョンとか考えないんで、仁一郎君のビジョンやイメージにいつのまにか乗せられてたっていう。
飯田:あと、僕がギターを弾きたくなくなってきたっていうのがあって。
──えぇー?!
YUKARI:比重をね。比重を減らしたくなったんでしょ。
飯田:そうそう。人数が増えたんだし。
谷ぐち:ギターだけじゃなく、ウワモノの楽器をね。
──なるほど。ウワモノ入れたら各々がより自由にやれるっていう。
飯田:そうそう。人数が増えたからって音圧で壁みたいになるのはいかがなものかと。人数を増やしたいのは音圧が欲しいからじゃなく、バラエティがあることをやりたかったからで。イメージしてたバンドがMelt Yourself Downってイギリスのバンドなんです。サックスがいてベースが太くて動く感じで。リミエキがもともと持つ尖ったノリも、谷さんは面白ければいいじゃんって言ってくれる。もんでん君(Dr)もスタジオで最終的にわははって笑ってますからね。さらにこまどりさん(Sax)が入って。前の小森君もだいぶ面白かったけど、こまどりさんも相当面白い人。5人になってスタジオではケンカしてるか笑ってるかっていう(笑)。
──3人の頃はギリギリの緊迫感が面白かったけど、今はそれぞれに任せられる感じで。
谷ぐち:ボーカルに関しては、前はYUKARIのベース/ボーカルで、わりと楽器的な位置だったと思うけど、ピンボーカルになったら歌になりますよね。
──どんどん唄いたいことも出てきただろうし。
YUKARI:そうですね。
──谷さんはリミエキに加入してどうでした?
谷ぐち:世代的に俺が上のせいか聴いてきたものが違うんですよね。俺はパンクとかハードコア的なテイスト…、暑苦しいのが好きなんです、程よく暑苦しいもの(笑)。だけど仁一郎とYUKARIはドライな音楽が好きで。だから俺はリミエキに自分が好きな要素を入れられればいいなぐらいに思っていた。でもやっていくうちにその割合は多くなった。多くなったんだけど、でもそこはリミエキならではのものになっていったと思う。
──谷さんが加入してパンク的な割合が多くなっていったけど、やっぱりオルタナっぽさのある独特なものになっていきましたよね。
谷ぐち:俺がパンクなものを持っていっても、仁一郎やYUKARIがやるとパンクにならない面白さがある。その面白さを求めてたんです。でも今はそういう意識もなくなって。どこか狙った面白さではなく、当たり前にやってる感じ。当たり前にバンドとして作ってるというか。