管理人と住人のスプリットが最初のコンセプト
──私は以前はライブハウスに子ども連れて来ちゃいかんって思ってたけど、そうじゃない、子どもが来て全然オーケーなんだって、谷ぐち家に教わりましたよ。
FUCKER:前にも「レスザンTVのライブって、子どもが走り回ってたり車椅子の人がいたり。いいですよね~」って言ってくれた人がいて、そう思ってくれてるんだって嬉しかったんですけど、こっちは特に意識してたわけじゃなかったんで、びっくりもしました。
藤原:僕もまだ谷さん(谷ぐち)と面識ない頃、ライブで谷さんが車椅子の人と一緒にいるのを何度か見て。初めは一緒に見に来てるのかな? って思ったんですけど、ライブハウスでバンドマンやレスザンTVの人が車椅子の人と一緒にいることは、谷さんの中で当たり前に共存してるんだろうなっていう雰囲気を感じました。
──やりたいことならなんでもオーケーだし、なんでも当たり前にやってしまうのがレスザンTVですしね。
藤原:僕はたまたま住む所に困っていたタイミングでモアザンハウスに世話になって、こうしてスプリットまで作ることになったんですけど、普段から繋がりが濃いわけでもなくて。客として見に行ってた頃と一緒なんですよね。谷さんやレスザンに対する自分の距離というか。
FUCKER:でも俺はフジロッ久はレスザンTVだと思ってるよ(笑)。
藤原:え!(笑) モアザンではあるけど、レスザンもですか?(笑) でも、なんかその、もっと「俺たちがレスザンTVだぜ」みたいな連帯感があるのかなって思ったら、全然違うんだなっていうのは、ここに住んですぐ分かりました。誰かに紹介されたりとかもないし。自分が勝手にレスザンを集団として捉えていただけで、たぶんみんな個人で、それぞれ自由にやってんだろうなって。
──うんうん。別に濃い繋がりとか関係なく、薄くてオーケー(笑)。
藤原:客としてレスザンを見てた頃は、「なんと突き抜けたかっこいい集団だ、すごい、特別な人しか仲間になれないんだろうなあ」、みたいな感じに思ってましたけど、でも僕らもレスザンTVだと思われていたんですね。そんな感じだったんですね(笑)。
FUCKER:うん(笑)。
──今やFUCKERと藤原君はスプリットを出すまでの仲に(笑)。
藤原:今回のリリースも最初にコンセプトとして管理人と住人のスプリットでっていうのがあって。住人であり部屋で録れるスタイルの音楽をやっているのが、たまたま僕だっただけです(笑)。
FUCKER:違うよ! たまたまではあるんだけど、スプリットを作るにあたって、この組み合わせなら間違いない! 絶対いいものができる! っていう確信があったからふじふじ(藤原)にオファーしたんだよ。
──絶妙な3曲です。
FUCKER:ふじふじの2曲が凄くいい。FUCKERの曲はミックスを馬場友美さんが、けっこう思い切った感じでやってくれて。モノ凄い気に入ってます。なんかね、「寅さん」風(笑)。
──確かに!
FUCKER:最高に気に入ってるんです。今まで録った音源の中で、これが一番好き。
藤原:初めて聴いたとき、コレなんの音? って思いました。アコギなんだろうけど、どう録音したらこの音になんの? って。歌詞も凄くいいし。
──まさにモアザンハウス、まさにレスザンTVな歌詞で。ちゃんと怒ってもいるし。
藤原:僕は自分の曲には歌詞カードとライナーノートというか本も付けたんですけど、谷ぐちさんは、「意外と聴き取れるから歌詞カードはいいや」って言って。確かに聴き取れるんですよね。あんなグシャっとした音で始まったのに(笑)、歌詞はずっと聴き取れる。
FUCKER:最初は各々1曲ずつって言ってたんだよね。ふじふじは2曲録ってどちらかを収録しようと思ってたみたいで。聴かせてもらったら、コレ3曲で完璧な流れになるぞ! って。ぜひふじふじは2曲入れてくれって。
──3曲目の藤原さんの「dear punks」は1曲目にきそうな曲だけど、最後なのが凄くいい。
FUCKER:でしょう? 曲順も完璧かと。「dear punks」はもともとはただの弾き語りだったんですよ。
藤原:最初はギターと歌だけの録音でした。大河ドラマというか、人が生きてきたこの何千年と自分が死んだあとも、人が生きていく時間の中の壮大なバトンを、その途中にいる自分が繋いでいるっていう超大作オペラみたいな歌なんで。バンドで録るなら情念バリバリにしたくって。弾き語りで情念が出せなかったんすよ。で、部屋で、自分の出した音だけ入れるって決めてたんで、こうやるしかなくて(笑)。
FUCKER:ボイスパーカッションならぬスクリーミングパーカッション(笑)。この部屋で録音してる風景を想像するといいよね。
藤原:遠藤さんが今座ってるそのソファで腹ばいになって、布団かぶってMacの内臓マイクに向かって直に叫んでて(笑)。