Less Than TVのレーベルオーナーであり介助者であるFUCKERこと谷ぐち順が管理人となり建てられた、「絶対、分けない」ただの家、ただのシェアハウス、モアザンハウス。世田谷に建つ一軒家、モアザンハウスがレーベルとしても活動開始。第1弾が管理人・FUCKERと住人・藤原亮(フジロッ久)のスプリット『モアザンハウス EP vol.1』、そして札幌のANTAGONISTA MILLION STEPSの『ファイトバック EP』。
ANTAGONISTA MILLIONS STEPSのTOZAWAのインタビューに続き、FUCKERと藤原の対談、やりました!
江戸川を眺めている寅さん的な風情、あったかさとぶち壊れっぷりの共存、優生思想にFUCKを叩きつける怒りのパワーという、FUCKERの今の全てがスカスカな中に詰まっている「管理人 オブ モアザンハウス」。そして藤原亮は、"大丈夫"と唄う声が頼りないからこそ生々しく、不器用だけど丁寧に綴るメロディにグッとくる「わたしのいのり」、そしてパンクロックの素晴らしさ、友だちがどこかにいる素晴らしさ、繋がっていけるはずの素晴らしさを唄う、きっと藤原にとっての人生賛歌、「dear punks」。この計3曲が『モアザンハウスEP vol.1』。
対談はスプリットCD、ライナーノートとして約一万字の"本"を付けた藤原亮の想い、ボーダーを取っ払って私たちが作っていく共生社会について、そしてこれからのモアザンハウスの企みについて(この企みに乗ってほしい)。
この対談、私たちの目の前にある話、私たち自身の話です。(interview:遠藤妙子)
*FUCKERアーティスト写真&ライブ写真撮影:小野由希子/藤原亮アーティスト写真撮影:松永樹/藤原亮ライブ写真撮影:海(@uu820mm)
モアザンハウス インタビュー vol.1「ANTAGONISTA MILLIONS STEPS」はこちら。
それぞれがそれぞれでオーケーな場所
──今日のインタビューはモアザンハウスの藤原さんの部屋でやらせていただきます。キレイじゃないですか! 物は多いけどキレイにしてる!
FUCKER:凄いスペースを有効に使ってますよね。
藤原:まさにこの部屋で録ったんですよ、今回の僕の曲。せっかく住人なんで家で録ろうと。
FUCKER:そこがこの作品の肝だよね。家で録ってるっていうのがね。
──モアザンハウスという「家」を作ったときも驚いたけど、今度はレーベル。第1弾は、FUCKER/藤原亮(フジロッ久)の3曲入りスプリット『モアザンハウス EP vol.1』と、札幌のANTAGONISTA MILLION STEPSの『ファイトバック EP』の2枚同時発売。アンタゴニスタとはどういう繋がりで?
FUCKER:札幌に「まちかど荘」ってところがあって、映画『MOTHER FUCKER』でも「まちかど荘」に住んでるTHE人生ズを訪ねるシーンがあるんですけど。「まちかど荘」は施設とかグループホームとかじゃなくてシェアハウスなんですよ。デカいシェアハウス。
藤原:どのくらい部屋があるんでしたっけ?
FUCKER:10部屋以上あるよ。もとは旅館みたいなとこだったらしいんですけど。THE人生ズは「まちかど荘」の住人たちが中心になって組んでいるバンドなんです。前にFUCKERの北海道ツアーをANTAGONISTA MILLION STEPSのトザワ君が組んでくれたことがあって、そのときもTHE人生ズと共演して。アンタゴニスタのリリースに関しては、優生思想を叩き潰す! という点で考えが一致しているというのが大きいんですが、THE人生ズ、まちかど荘という繋がりもあって。まちかど荘は、モアザンハウスを作るきっかけになった場所なんで。
──THE人生ズのメンバーは障がいを持つ人と介助の人がメンバーで?
FUCKER:いや、介助っていうか、作業所で一緒に働いてるのかな? 友だちなんじゃないですかね。
──パンクバンドっていいですよね。全国各地にツアー行くからバンドが繋がっていく。札幌のアンタゴニスタとも繋がっていく。東日本大震災以降の各地の災害では、バンドマンが駆けつけてボランティアしている。ホントに素晴らしい。
藤原:海外にも友だちができますもんね。台湾にツアーに行って友だちができて。台湾のニュースを気にするようになった。すごく身近に、自分ごととして感じるようになったから、自然と政治の感じとか気になったり、歴史調べたり。バンドやってて一番嬉しいのって実はそうやっていろんなところに知り合いができることだったりします。
FUCKER:あの、今日のインタビューの最後に言おうと思ってたんですけど、流れ的に今かなと。考えてることがあって、モアザンハウスの活動を一つのパンクムーブメントと位置付けて、全国に波及させてやろうと思っていて。
──おぉっ!
FUCKER:モアザンハウスはただの家なんです。障がいを持った人や住むところに困っている人が暮らす、ただの家。入所施設でもグループホームでもなく、シェアハウスなんです。そういう場所を全国各地に作りたい。パンクスたちが先頭に立って。
──バンドマンは介助の仕事をしている人も多いし。
FUCKER:そうなんですよ。モアザンハウスでもまだいろいろやりたいことがあって。今はコロナでできませんけど、リビングを使ってイベントとか、友だちの家に遊びに来た感覚でねって話していて。友だちの家ってのがいいんですよ。ワークショップとか堅苦しい感じじゃなくて。
藤原:予約はいらない的な。
FUCKER:そうそう。ただの家に友だちが、友だちの友だちが、全然知らない人が、遊びに来る感じ。家から始まる何か、家で始まってる何か、みたいなことをやりたくて。ただ来たい人が来るっていう。何もしない人がいたり。やってることに参加しなくてもオーケー。ただいるだけでオーケー。
──レスザンTVのライブがまさにそういう雰囲気ですよね。リミエキのライブ中に共鳴君がライブ見ないでゲームやってたり絵を描いてたりしてるっていう。両親がライブやってるのに(笑)。その光景を思い出した。それが凄くいいんですよ。一緒にいるんだけど一人一人自由で。
FUCKER:ライブハウスってそれが成立する場所なんですよね。それぞれがそれぞれでオーケー。ま、共鳴には少しくらい観ろよと思いますけど(笑)。