歌も楽器と同じく最強のパート
──曲作りがひらめきなら、バンドによるアレンジもひらめき重視なんですか。
加納:全部そうです。僕の場合、計算なんてないんです。パッと聴こえる、見えるものがあるんですよ。
満園:前のアルバムのときも加納さんはレコーディング当日までに「何してる」「ねむれない」「プレイブルース」「淋しすぎる夜」と一気に仕上げてきたんですよ。前日まで曲が足りなくてどうしよう? という話だったのに「できたから。2時間も寝てないけど」って譜面とボイスレコーダーを渡されて。それを僕も公太さんも2、3テイクでキメちゃったんです。曲の骨格は8割方できてるから、数回合わせればできちゃうんですよ。
加納:それはやっぱりバンドだからこそですよね。
満園:他のバンドでもいろんな曲作りに参加しましたけど、家で全部の音を打ち込んでくるケースが多いんですよ。でもATOMIC POODLEは曲の余白をある程度残して、その場で3人が「せーの!」で合わせるのがいいんです。
──ATOMIC POODLEも外道と同様、定期的なリハーサルには入らないんですか。
加納:僕は基本、やりませんね。余程のことがない限りは。
満園:さすがに2年くらいライブが空くとやりますけどね。それこそスペース・ゼロでのライブはすごく久しぶりのライブだったんですよ。外道が本調子で動いていた時期だったので。だからと言ってリハをやったわけでもないんですけど(笑)。
──リハをやらずともあれだけ熱量の高いライブをやれるものなんですね。
満園:それまで結構やってたから、覚えてることを思い出した感じですね。
加納:外道だってリハはおろかレコーディングだってぶっつけ本番ですから。「はい、これで!」って譜面を渡していきなり録っちゃう。それでイメージが膨らむようないい演奏をしてくれない人とは一緒にやりませんよ。その点、公太も庄太郎もバッチリなんです。
──しかもATOMIC POODLEは3人しか演奏していないのにしっかりと音に厚みがあるんですよね。
満園:それはダビングで加納さんに弾いてもらったり、コーラスをかなり重視してるのもありますね。自分もちゃんとコーラスできるように仕込まれたし(笑)。
加納:無理やり唄わせてるうちにできるようになったんだな(笑)。
満園:でもね、唄えるとものすごく表現の幅が広がるし、ステージも楽しくなるんですよ。ギターとドラムとベースが最強のパートだと思うけど、歌もそれと同じく最強のパートなんです。
五十嵐:うん、最強だよね。
満園:どれだけドラムがすごくても歌が聴こえてきて初めて耳の中で成立するし、歌を除外して聴けないじゃないですか。僕は加納さんの昔の曲、たとえば「乞食のパーティー」や「ビュンビュン」とかが大好きなんだけど、ATOMIC POODLEでもそれと似た感じの曲を自分たちで作りたかったんですよ。最初の頃は曲数が足りなくて外道の曲をやらざるを得なかったので、余計にそう思いましたね。
加納:そういえば、(忌野)清志郎も「乞食のパーティー」が好きだったな。外道のトリビュート盤(2003年に発表された『外道TRIBUTE~ゲゲゲの外道讃歌~』)でもカバーしてくれてたし。
満園:加納さん、今日は外道じゃなくてATOMIC POODLEのPRをしましょうよ(笑)。
加納:ああ、そうか。話がどんどんズレちゃうからな(笑)。
満園:「乞食のパーティー」はホーンセクションが聴こえてくるような曲なんです。だからソウルやR&Bを好きだった清志郎さんが選んだのも納得なんですよ。
──ATOMIC POODLEにもホーンを入れたらまた違った面白さが出る曲がありそうですけど。
五十嵐:僕はミュージックスクールを主宰していて、そこの講師たちと一緒に庄太郎の書いた「ONE TWO STEP UP」を自粛期間中にリモートセッションしたんですよ。うちの講師を中心に総勢26人のミュージシャンに参加してもらって。
満園:錚々たる顔ぶれでしたよね。加納さんを始め、LOUDNESSの二井原実さんや野村義男さんもゲストで参加してくれて。hideさんのバンドやGLAYのサポートをやっていたことでも知られるDIEさんのシンセが入るのを聴いて、ああ、こういうのもアリだな! と思いましたよ。
五十嵐:曲の良さがすごい増したよね。そんなふうに他の楽器が入ると世界観の広がる曲がATOMIC POODLEにはあると思います。
満園:骨格で曲を作ってるし、余計なことをしてませんからね。
加納:僕は日本で一番長く3ピースのバンドをやってるし、ギターとベースとドラムでいかに音を作るかはたぶん僕が一番熟知してると思う。それも50年以上ずっとライブで闘ってきてるから、どうやったら大人数のバンドに負けないでやれるかを知り尽くしてるんですよ。