大人だって言いたいことを言おうよ
──満園さんが書く曲は端正で二の線といった感じですが、それとは対照的に五十嵐さんが書く曲は起爆剤的というか、やんちゃなタイプが多いですよね。ポップでキャッチーなメロディだけど歌詞は社会風刺にも取れるところがあって。
満園:そうですね。公太さんはどちらかといえば品行方正なタイプで紳士的に見えるのに、書く曲は毒っ気が強いというか。
加納:3人の中では僕が一番悪そうで毒っ気の強い曲を書きそうなんだけど、実際はそうじゃないんですよ。
満園:だって公太さんの書いた「残酷な現実」も「NO WAY OUT」も放送禁止のピー音が入ってますからね(笑)。
五十嵐:意図してピー音が入るような曲を書いたわけじゃないんですけどね。加納さんも歌の中で言いたいことを言うタイプだし、ATOMIC POODLEはメジャーでアルバムを出す意思もあまりなかったので、「大人だって言いたいことを言おうよ」みたいな曲を書こうとしたんです。社会的に納得のいかないことはどんどん言っていこうよ、というコンセプトはもともとあったんですよね。
──なるほど。「SUPER NICE DAYS」にも「オトナは泣いちゃいけない!? 泣き言は言わない?」という反語的な歌詞がありますしね。
加納:そんなこと言ったら、外道の最初のシングルは「にっぽん讃歌」ですからね。「馬鹿が何人集まっても 御国のためになりやしない」だから。政治家にケンカを売るみたいな曲を最初からメジャーで出してるんだから、言いたいことを言う性格はそう簡単に治りませんよ(笑)。
──加納さんのそうした諧謔精神は「不良侍」にも健在ですね。
加納:健在ですよね。今はちょっとオブラートに包みながら、それなりに大人の言い方をしてますけど。
──五十嵐さんの書いた「残酷な現実」は情報量が多いというか、1曲の中に豊富なアイディアが詰め込まれていますよね。ミッシェル・ポルナレフの「シェリーに口づけ」のオマージュ的要素あり、自主規制音あり、「なあお前 人生はそんなに辛いもんじゃあらへんで/もっと気楽にやりいや」という天の声ありで。
五十嵐:まだまだやりたいことがいっぱいあるってことですかね(笑)。
満園:公太さんが作る曲はいつもカラフルな印象がありますね。加納さんの曲はドーンとストレートに来るものが多いですけど。
加納:そうやってみんな違うのが面白いんですよ。似たようなタイプのメンバーを集めるバンドもあるけど、僕は性格も相性もバンドじゃないと絶対に合わないだろうなと思う人と一緒にやりたいんです。タイプが一緒だとすぐに飽きちゃうし、バンドをやってなければ一生会う機会もなかっただろうなという人とやるから面白い。性格も話も全然噛み合わなくていいし、一緒に音を出した瞬間に面白ければいいんです。音を出した途端に面白くなくなるバンドがいっぱいいるけど、そういうのは一番避けたいんですよ。
──その点、ATOMIC POODLEの場合は加納さんが2人にボールを投げると予想外の返球が来ると?
加納:来ますよ。まだ若い分、返しが強烈なんです。
満園:若いかなあ?(笑) 最初は僕が30代、公太さんが40代、加納さんが50代だったけど、今や僕も50になりましたからね。こう見えて僕も世の中的にはベテランなんですけど(笑)。
加納:僕からすると、(そうる)透はいまだに子どもに見えるんだよ。あいつももう60を過ぎてるけど(笑)。最初に会ったのは透が中学生の頃で、当時と印象が変わらない。
満園:その関係性が変わらないなら僕なんて一生若手ですよ(笑)。
──今回のアルバムはバンドのこれまでの歩みを俯瞰できる“ヒストリーアルバム”なので既発曲が多いなか、「ATEUMA」という五十嵐さんによる新曲も収録されていますが、これは歌詞の内容云々よりも語感や言葉遊びに重きを置いた曲ですね。
五十嵐:最近、若手のミュージシャンの作品を聴いたり見たりすると説明が過剰だなと感じることが多いんです。一から十まで説明するように言葉を詰め込むから余白がないし、イメージさせるものが少ないというか。そういう昨今の風潮はそれはそれで良しとして、自分が若い頃に聴いていた音楽みたいにまるで意味の通じないことを歌にしてもいいんじゃないかと思って。
満園:歌詞の意味はよく分からないけど格好いい曲って昔はよくありましたよね。外道もそうだし、頭脳警察やRCサクセションとかにもそういう曲があったし。
五十嵐:そういう時代の曲へのオマージュじゃないですけど、英語っぽく聴こえる歌詞を散りばめてみたんですよ。
──「TURNED it teen not Higher」が「飛んでいきてえな」だったり、「We'll SAY THEY GUYER」が「うるせえぜ外野」だったり、空耳アワー的な面白さを狙ったというか。
五十嵐:そういうことをやってみたかったんですよ。たとえばシン・リジィとかディープ・パープルとか、ロックを聴き始めた頃の洋楽はサウンドが格好いいなと思いながら、何を唄ってるか分からなかったじゃないですか。でもなんかよく分からないけど格好いいなという感覚があったし、自分でもそういう曲を作ってみたかったんです。