リードボーカルが3人いるのはバンドの強み
──今の外道は加納さんのワンマンバンドっぽいところがありますけど、ATOMIC POODLEはメンバーとの関係性がイーブンのように感じますね。今回発表される『MONSTAR』も全14曲中、加納さんが作詞・作曲した曲は7曲と半分ですし。
加納:そうそう。ただね、僕は外道時代からベースやドラムにも唄わせてたんです。
──ああ、「悪魔のベイビー」とか。
加納:うん。最初に僕がレコーディングで唄って、僕の歌を抜いてドラムに唄わせたりとかやってたんですよ。楽器をやってたら唄うべきだと当時から思ってたし、それはATOMIC POODLEでも変わらないので、公太と庄太郎にも唄ってもらうことにしてるんです。
満園:公太さんは最初のミニ・アルバムでリードボーカルの洗礼を受けて、僕は7年前に出した『弾丸ベイベー』で初めてリードボーカルを取ったんです。結構ツアーをまわったからそろそろアルバムを作ろうぜってことで僕も何曲か持っていったんですよ。加納さんが唄ってくれるものだと思って歌詞もそれとなく書いたんですけど、頑として唄わないんです(笑)。公太さんが言われたように、「作ったやつが唄うもんだ!」って。
五十嵐:それでも1曲だけ唄ってもらったけどね。
満園:そう、僕が唄ってもいまいちだし、加納さんが「こうやって唄うんだよ」ってずっと言うから「じゃあ一度唄ってみてくださいよ」とお願いしたんです。それが今回のアルバムにも入ってる「愛の花束」なんですよ。最初は駄々をこねるように唄ってくれなかったんですから(笑)。「弾丸ベイベー」も最初は「お前が唄え」って言われたし。
──「弾丸ベイベー」は満園さんと加納さんの共作で、2人でボーカルを分け合っていますよね。
満園:曲を持っていったら、加納さんがサビの部分だけ残して曲を作り直してくれたんです。歌詞も加納さんが書いてくれて。それで「サビのところはお前が唄え」って言われたんですよ。
加納:作り直したら曲としてすごく良くなったんだよね。庄太郎が書いてきた「愛の花束」はレコーディングでしか唄ったことがなくて、ライブでは一度もやったことがない。
満園:「愛の花束」は実はドラムパターンが全然違うところがあって、違う日に録ったサビを差し込んであるんですよ。テンポやキーの違う2つのバージョンをつなぎ合わせたビートルズの「Strawberry Fields Forever」みたいに。そういう面白い曲でファンのあいだでも好評なんだけど、加納さんは一回もやってくれないんです。公太さんと一緒に考えたセットリストの中に組み込んでも「身体に入らないと無理!」とか言われて(笑)。
──満園さん作詞・作曲の「ONE TWO STEP UP」も平歌のリードボーカルを分け合っていますよね。
満園:あれはKISSやビートルズみたいに3人で唄おうぜと公太さんが言ってくれたんです。
五十嵐:それでリードボーカルをかわるがわる取ることにして。
──リードボーカルが3人いるのはATOMIC POODLEの強みと言えますよね。
加納:絶対そうなんですよ。ビートルズもメンバーは全員唄わなきゃいけないってことを教えてくれたし、ストーンズはベースとドラムが唄わないからつまらないと思ったし、全員唄えたほうが絶対に面白いんです。
──そうした加納さんの狙いが功を奏したのか、今回収録された曲は3人のソングライティングの方向性も歌の持ち味も全然違うので、結果的にバラエティに富んだアルバムとなっていますね。
加納:そうでしょ? でもその指向性は昔からなんですよ。外道の曲を聴いてもらえば分かるように、ジャンルなんてなくてめちゃくちゃなんです。エッジの効いた曲もあればブルージーな曲もあり、ハードロックもあればパンクもあり、フォークもあればポップなものもある。ロックンロールやカントリーっぽい曲もあるし、演歌まで書いたことがありますよ。それはドラムに唄わせたけど。そんなふうに僕のやる音楽はジャンルレスで、聴けば聴くほど訳が分からなくなることをやるのが自分のポリシーなんです。
──「連れてかれちまうぜ?」は1995年に発表された『疾風伝説 特攻の拓』のイメージアルバムに収録された加納秀人 with 外道名義の曲ですが、ATOMIC POODLE向きということでレパートリーに取り入れているんですか。
加納:僕の50周年記念ソロ・アルバム(2018年発表の『Thank You』)にも入れた曲なんだけど、ライブでやると盛り上がるし、ハモってくれていい感じにやれるのでATOMIC POODLEのライブでもずっとやってきたんですよ。