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SPOOL、多彩な楽曲とバンドの歴史を2人のドラマーが彩ったコンセプチュアルな二部制ワンマン『sail to the nevv moon vol.2』開催

2025.03.22

 オルタナティブロックバンドSPOOLが、3月15日(土)下北沢SHELTERでワンマンライブ『sail to the nevv moon vol.2』を開催した。2023年5月に新宿NINE SPICESで開催された前ドラマー、aranの卒業公演以来、約2年ぶりとなるワンマンは、2人のゲストドラマーを迎え「碧(あお)」、「朱(あか)」とコンセプトを設けた二部編成で行われることが事前にアナウンスされていた。第一部「碧」には、昨年リリースしたシングル「秋桜」のレコーディングに参加した金子タカアキ(スズメーズ、sheeplore、色々な十字架)、第二部「朱」には、現在SPOOLのサポートを務めているcimaco(白い朝に咲く、SHIZUKU)と、タイプの違う2人のドラマーを迎え、多彩なSPOOLの楽曲を多角的に彩り、楽曲の幅の広さとバンドの歴史を感じさせられた一夜となった。

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 My Bloody Valentine「when you sleep」が流れると黒いシックな衣装を着たメンバーが登場し、1stアルバム『SPOOL』の1曲目「nightescape」から第一部「碧」がスタート。青い照明がステージを照らし、ダークなムードに包まれる。「tip of a finger」では、金子のタイトで安定感のあるドラムが妖艶な曲の世界観に深みをつけ、透明度の高い「スーサイド・ガール」、「springpool」と、海底から浮上してくるようなグラデーションを見せた。「秋桜」ではチューニングトラブルにより二度やり直す場面もあったが、イントロの印象的なドラムを何度も聴けたのが嬉しく、美しい轟音が儚い曲の世界観に引き込んでいく。
 
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Gt.ショウジが「aprilapril(金子がGt&Vo.を務めていたバンド)が好きで、『SPOOL』のリリースツアーでご一緒出来た時は嬉しかったです。今回レコーディングだけでなく一緒にステージに立ててすごく嬉しい」と金子への想いを語った。「碧」パートを象徴するようなラスト「sink you」では、エモーショナルなドラムが壮大なこの曲のスケールをさらに広げ、大きな余韻を残した。
 
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 20分の休憩を挟み、NIRVANA「Radio Friendly Unit Shifter」が流れる中、さっきの真っ黒な衣装からカジュアル&ストリートなファッションにチェンジしたメンバーが登場し、第二部「朱」がスタート。「fu_ka_n」、「In My Blood」、「ハロー・マイ・ロンリー」と3rdアルバム『(image for) drawing on canvas』の曲が続く。赤い照明の下、パワフルなドラミングを見せるcimacoの気迫に引っ張られるようにグランジ・ロックなモードへ。「light of the sun」、「Space Rock」など二部は激しいというより、温かい楽曲が多い印象。「碧」パートを予想していた「Be My Valentine」はこちらで披露された。「さめない」、「 (image for) drawing on canvas」と光が降り注ぐような、一部とは違う優しく包み込む壮大なラストに、こみ上げる温かい気持ちで胸がいっぱいになる。クールなプレイスタイルのメンバー3人の後ろで、表情豊かに感情を開放していくcimacoの熱量の高さがステージにいい刺激を与えていた。
 
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 アンコールの最後に披露した「No, thank you」では、Vo&Gt.こばやしが目深かに被っていたキャップを振り落として激しくギターをかき鳴らし、演奏が終わると、この日一番の笑顔を見せた。終演後には、幻想的な「秋桜」のリミックスVer.が流れた。
 
 第一部「碧」では1st、2ndアルバムのダークな曲をメインに、第二部「朱」では3rd以降の温かみのある曲をメインに、バンドの歩みを象徴するような構成がとても感慨深かった。Ba.安倍が「ワンマンやれるだけの曲数があることに気付いて」と言っていたように、年数を重ね作品が増えるごとに、それぞれの人にとってのSPOOLが存在しているのを感じたワンマンだった。静かで激しく、冷たくて温かく、カラフルで透明な、それぞれにとってのSPOOLを今目の前で演奏している彼女たちに重ねて見ているような感覚。また、この日は革職人となった前ドラマー、aranがこの日の為に作成したオリジナルグッズを会場内で販売しており、形を変えて参加する姿に、‟SPOOL”というものを中心に色んな人たちの想いや人生が交差し、数年前には想像もしていなかったであろうそれぞれの未来(今)がこの日、この場所で同時に存在するパラレルワールドが展開しているような、不思議な感覚だった。
 こばやしが「ワンマンなんてそう何度も出来ることじゃない。バンドをやっててよかった、生きててよかった」と語っていたが、もっと大きな会場で、もっともっと映像的で遊び心のあるSPOOLの世界をこれから何度も見せていってほしいと、SOLD OUTしたパンパンのSHELTERを見渡しながら思った。
(Text:小野妙子 / Photo:YUSUKE MASUDA
 
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『sail to the nevv moon vol.2』
第一部「碧」 Drummer:金子タカアキ
1. nightescape
2. 私は泳ぐ、メロンソーダ
3. tip of a finger
4. cyan
5. スーサイド・ガール
6. springpool
7. sway, fadeaway
8. 秋桜
9. モ ル ヒ ネ
10. sink you
 
第二部「朱」 Drummer:cimaco
1. fu_ka_n
2. In My Blood
3. ハロー・マイ・ロンリー
4. blooming in the morning
5. light of the sun
6. Space Rock
7. Be My Valentine
8. さめない
9.  (image for) drawing on canvas
 
en1. P-90
en2. nevv song
en3. No, thank you

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