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ami_ppu『reflect your voice』- やりきれない想いが揺れる冷たく深遠な世界

2024.11.26    | CD

発売日:2024年11月13日(水)
レーベル:Royal Loading
フォーマット:デジタル

収録曲:
1. night I
2. the day fade as
3. because my heart is foolish
4. 0930
5. reflect your voice

オルタナティブ・ロックバンドSPOOL Gt&Vo.こばやしあゆみのソロプロジェクトami_ppuの1st EP。SPOOLのソングライティングを担い、透明で繊細な色彩のバンドサウンドで描く自身の心象風景のさらにディープな部分、深海よりも暗く静かな氷点下温度の冷たい感情を打ち込みベースのトリップポップや、スロウコアのダークなアコースティックサウンドで表現した内省的な作品となっている。
 
色に例えるなら黒。SPOOLの1st、2ndの青く透明で突き刺すような冷たさに通じる寒々しさだが、あのすべてを諦めたような静けさではなく、もっと奥深い部分で美しく醜い感情が揺れているのをまるで自分事のようにダイレクトに感じる近さがあり、むしろ彼女の内側の激しさや、高温な部分が流れ込んでくるような感触。「the day fade as」の感情が乱れるように不協和音的にもつれるギター、ドリーミーな美とノイジーな醜悪が混ざり合って溶けていく「reflect your voice」などやりきれない想いが悲鳴を上げる中で、避難場所に潜り込むような「0930」の一時の甘さに安心する。
5曲中2曲がインストであり、全て英詞、また言葉にならない心の声を表すような歌詞のないメロディーや、映画のワンシーンのような音声が使用されていたりと、しっかりと歌が存在するSPOOLとは違い、歌というより音としてボーカルが役割を担っている。
 
最近のSPOOLのサウンドや、彼女のボーカルには柔らかさや温かみがあり、最新曲「秋桜」の儚いシューゲイズ曲さえも轟音の中に優しい歌声が存在しているが、初期に戻ったような低体温のボーカル、それ以上に冷たくダークなサウンドと、彼女の作曲センスに改めて感嘆すると同時に、深遠な世界の奥底に居座る闇の正体は何なんだろう、何がそこまでこんなに冷たい音を鳴らさせるんだろうと、どんどん潜って追いかけようとするも、まったくつかめない淋しさが後を引く。(小野妙子 / Rooftop編集部)

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