ここで変わらなければ変わる時がない
──ホーンが入ってる曲もあれば三線が入ってる曲もある。パーカッションは亜子さんと吉田さん、2人?
島:3人いるんだよ。役割分担みたいなのはあって。なんとなく亜子が仕切り役をやりつつ、それぞれ自分の音で。暗黙のうちに役割ができてるでしょ?
亜子:そうですね。このバンドってリズムが凄い大事なとこで、発想としてはロック・バンドのバランスじゃないんですよ。ロック・バンドだったらガーンって音を出す感じだけど、そうじゃなく、こう、抜き差ししていく。抜き差ししながら分厚い音になっていく。みんな各々美味しいところを、隙間産業みたいに(笑)。ドラムやパーカッションだけでなく他の楽器のノリにもなかなかキビシイのです(笑)。ボーカルにも(笑)。
──音が会話をしてる感じがして。だからリズムであると同時にメロディアスでもある。
亜子:曲によってベースになっているリズムを担う楽器が違う。パーカッションだけでなく全ての楽器がそういう感じで音が重なっていって。なんとなくと言うか必然的にと言うか、バラエティは豊かになりますよね。
──あぁ、曲そのものもそうですけど、音の出し方によってバラエティは生まれますよね。the JUMPSからの曲もいいですよねー。
島:全然違う解釈でやれてる。「Sunday」って曲はthe JUMPSではバキバキな感じなんだけど、ゆったりしたリズムにフィドルが入ったりして、全く違う曲だよね。
──「アル・バンナの夢」は?
島:ギターのクロスがうちに来て、俺が「こんな曲やりたいんだけど」って言って、クロスがその場でギターを弾いて。「こんな感じ?」「もうちょいこんな感じ」「それそれ!」って感じで作った曲の一つ。
──いいですねぇ。10代みたい。
島:だよね。友達がギター持って家に遊びに来るって、それだけで最高に楽しい。そんな感じでやれてるのが、このバンド。
──アル・バンナって?
島:前作にも中東をテーマにした曲があったんだけど、これもシリアが舞台。イスラムのいろんな国にムスリム同胞団っていうのがあるんだけど、シリアでは1982年に消滅してるの。全員殺されちゃって。アル・バンナは同胞団を創設した人の名前。今、シリアは凄い悲惨な状態だけど、イスラム同胞団がいたらどんなふうに考えたのかな? ってことを想像しながら作った曲。PANTAさんに褒められたよ。「イスラムのことを唄ってるのは俺だけかと思ってたけど、ここにいた」って(笑)。
──凄い(笑)。最初にアレルギーの曲で“九条を守れ”って歌詞があるって言いましたが、FORWARDにも9条を取り入れた「戦争の放棄」という曲があるんですよ。
島:へー、いいね。
──声を上げてくれるのが嬉しいです。今の世の中、表現に対して閉塞感があると思う人もいるだろうけど、声を上げる表現が出てこなかったら、もっと閉塞感はあると思う。
島:この状況を大事にしなきゃいけないよね。ここで変わっていかなかったら変わる時がないよ。しっかり議論して、こういう社会にしたいってことを言ったほうがいい。
──ところで最後、「まだ見ぬ自由へ(Dance to the 97)」は、まだ続くかと思ったらスッと終わっちゃう曲で。いや、そこがいいんですけど。
島:えぇ、終わり? ってね(笑)。あれはね、Queenの1枚目のアルバムにイントロだけで終わっちゃうような曲が最後に入ってて。で、次のアルバムにその曲の完成版が入ってるんだよね。そんなイメージ。
──じゃ、NO NUKES RIGHTSも次のアルバムを期待していいってことで。
島:もちろん。
亜子:ちょっと次も作りますよー、って。
──じゃ、最後に今作についてひとこと。
島:あくまでもロック・バンドなんで、音楽としての多様性やオリジナリティを意識してやってます。メッセージはストレートで回り道せずに。でも音楽だけでも楽しめる。今回はそれが最高の形で表現できたと思ってます。
亜子:私は彼が唄うメッセージを、とても音楽的にしたいってことだけを考えてやってるんですね。良質な音がいろんな人に届いてほしい。若い人、同世代の人。何歳になってもいろんなことをやっていい、新しいことを始めていいっていう、励みになれば嬉しいです。
──あ、あと11月までツアーが続きますね。
島:全カ所全員で廻るってわけじゃないんだよね。5人で行くとこもあれば3人や2人、俺だけってとこもあって。それでも全然いける。ロック・バンドって、「メンバーが欠ける」っていう引き算で考えがちなんだけど、俺たちはもともと一人でスタートしたバンドなんで、足し算の発想。各地で地元の知らないミュージシャンにサポートしてもらったりして演奏するチャック・ベリー方式も楽しい。毎日いろんな形でやれる。それも含め、自分でもめちゃくちゃ楽しみです。