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INTERVIEW

トップインタビュー島キクジロウ × ドリアン助川 - KNOW YOUR RIGHTS〜自分自身の権利を認識せよ〜

KNOW YOUR RIGHTS〜自分自身の権利を認識せよ〜

2018.08.07

 社会に対して全く興味がない、人生は楽しんだ者勝ち、だから面倒なものは知らんぷり。そんな無関心の存在のままだったら私は一生後悔しただろう。私はかつて、便利な生活を享受する一方で、別の見えない脅威と共生しているということなど知る由もなかった。
 2011年3月11日の原発事故から7年もの月日が流れた。原発を危険視する声が上がる中、着々と進む再稼働の道。苦しめられる人々の声はかき消され、安全神話がまた生み出されようとしている。私たちは多くの犠牲から何を学んだのだろうか。私の見える社会は暗くなり、この先の未来に不安ばかりが押し寄せる。しかしその社会に一際強く光り輝く人間の姿があった。
 ミュージシャン、弁護士という二つの顔を持ち、様々なイベントを企画し活躍する島キクジロウ(the JUMPS)。そして、ハンセン病と向き合い、世界的に有名な小説「あん」を生み出した心震わす詩人、ドリアン助川。この異色の二人がクロスオーバーしたイベント「KNOW YOUR RIGHTS」が8月18日(土)LOFT9で開催される。そこには一体何が待ち受けているのだろうか。その希望と期待を胸に、二人の声に耳を傾ける。[ TEXT:宮原 塁/ロフトプラスワン ]

「ノー・ニュークス権」とは?

 

──今回、何故このようなテーマで企画したのですか?

島:何でも権利を振りかざせばいいってもんじゃないけど、自分たちが国や大企業のような大きな権力と闘って行く時には、やっぱり憲法上の権利は大きな武器になり得る。今回のイベントで一番知ってほしいのは、俺がずっと主張している「ノー・ニュークス権」という新しい人権。原発で被曝したら嫌だなとか、事故が起こって被害を受けるのは嫌だなとか、この食べ物を子供に食べさせて安心なのかとか、そういう思いっていうのは単なる不安とか主義主張とか感情とかじゃなくて、福島原発事故を経た今、それはもう権利なんだと。そういうものから逃れて、不安を感じることなく生きる権利。それを国に求めるのは我々の権利なんだということを知ってもらいたい。

──これにドリアンさんは賛同して共演されるんですね。

助川:島君の考え方と基本的には同じだね。僕は弁護士でもなんでもないから、人権とか国っていう言葉は出てこないけど、歌を書いたり小説を書いたりする人間は何を見ているかっていうと、やっぱり個々の人間なんですよ。一人一人の人間。原発の被害についてメディアが流すいろんな情報があるんだけど、もの書きとしては福島や宮城、栃木の被曝したエリアの人たちはどんな生活をして、どんなことを思ってるのか、個人で見て聞いて歩かなきゃいけないなと思った。

 それで、1年後の2012年の8月から4カ月かけて奥の細道を自転車で、時々車に乗せてもらったりしたけど、ほとんどを折り畳み自転車で旅したんです。全部線量をチェックしながら、2016年まで定点観測を続けてきた。それでわかったのは、セシウムの線量が下がっている地域も多いんだけど、びっくりすることに増えている場所もあるんだよね。いわゆる里山ってところは増えている。そういった調査をしながら皆さんの一人一人の気持ちみたいのを汲み上げて書いた『線量計と奥の細道』という本が今度刊行されます。放射能については福島のことがよくいわれるけど那須の方もほぼ同じ線量なんだよね。それでやむなく廃業しちゃった農家とか、出て行きたくても出ていきようがなくて苦しんでいる人たちとか、そういう方々の写真もイベント当日はスライドで映したいと思います。

──島さんは弁護士としてGE、東芝、日立を被告とした「原発メーカー訴訟」にも弁護団長として取り組んでいますが、これはどういうものなんでしょうか?

島:俺はNO NUKES RIGHTSっていうユニット名で、日本中をライブして回ってるんだけど、これも原発メーカー訴訟がきっかけなんだよ。どんな裁判かっていうと、「原子力損害賠償法」の3条1項に原発事故の責任は全て電力会社が負うと書いてある。4条1項では電力会社以外は責任なし、さらに4条3項では製造物責任法は適用しないとして、原発メーカーを二重三重に保護している。これを〝責任集中制度〟っていうんだけど、なんか変だよね。なんでそこまで原発メーカーを保護するのか。電力会社は1200億円の保険に入らないと原発を動かせないことになってる。1つのサイト、つまり福島第一原発ならその全体で1200億円。さらに16条で、国は必要に応じて電力会社を援助することになってる。つまり、電力会社が全部責任を負うといっても、実際は保険から1200億円が出るってだけで、あとは国が出すわけ。

 これまでに国は13兆円を援助すると決めている。保険金の100倍以上だよ。これって形だけ電力会社が全責任を負うってことにしておいて、実際は国民の税金が国と東電を通過して賠償金に回ってるだけじゃん。そこに原発メーカーは一切関わらないし、事実1円も払っていない。誰が福島第一原発を作ったかなんてほとんど誰も知らないでしょ。そういう仕組み自体がめちゃくちゃ不自然だよね。そもそも電力会社なんて車で言えばただの運転手。車の構造を一番分かってるのはトヨタだったりホンダだったりの自動車メーカーなのに、ブレーキの故障で事故が起こっても、責任は全部運転手に負わせて、メーカーは知らん顔でOKっていうのが責任集中制度。しかも、その運転手にお金がなかったら税金から出してあげるからねって法律、誰が考えてもおかしいでしょ。これって、安全性は適当でいいからどんどん原発作ってねっていう国からのメッセージだよね。安全性よりも経済合理性を重視していいっていうね。しかも、これ、驚くことに世界中を覆う仕組みになってる。この仕組み自体がノー・ニュークス権を侵害しているから違憲無効だっていうのが、原発メーカー訴訟の大きなテーマなんだよ。

 原発メーカー訴訟のなかでメーカー側の代理人は、事故の責任を取らされるんだったらうちは最初から原子炉なんか作らないし、部品も出さないよって平気な顔して言うわけ。まさに彼らの本音だよね。もう法廷でガンガン怒鳴りあっちゃってるから、機会があったらみんなにも見に来て欲しいな。原発に賛成か反対かっていうんじゃなくて、原発体制を支えるこの歪んだシステムはなんなのかっていうことを知って欲しい。社会って、気付かないところで、こんな風にできあがっているんだっていうね。

 

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原発という理不尽な仕組み

助川:松尾芭蕉が奥の細道を旅したのは元禄時代、三百数十年前なんだけど、その頃、秋田県の象潟は、日本海に小島がいっぱい浮かんでいて、江戸時代は松島と同じように景勝地として有名だった。ところがいま象潟がどうなっているかというと大地震と火山の噴火で隆起しちゃって、いちめん農地になっている。だから畑に貝殻がいっぱいでてくるんだけど、つまり、それだけ日本列島っていうのはたった300年間で海だったところが丘になっちゃうっていうすごい環太平洋造山帯の活発なエリアにあるんだよね。なおかつ、中央構造線っていう日本最大の構造線が九州から名古屋あたりまで伸びているんだけど、これが動き出しちゃってる。阿蘇の地震とかで、大分まで動き始めている。次に地震が起きると伊方原発の真下にくる。大地震が来ても原発は耐えられるってみんな言うんだけど、阿蘇の時は地震の加速度に耐えられなくて山体崩壊が起きている。山が1つ消えてるんです。そのぐらいすごい力が働く所で、耐震性もなにも言ってられないよね。

 福島第一原発の事故も大変な被害だったけど、風が海に向いていたので、放射線の多くを海側に飛ばしたんですよ。もし伊方原発で同じことが起きると、風向きによっては太平洋ベルト一帯を全部総なめにしていく。それがいますぐ起きるのかって言われたらそれはわからない。あと10年起きないかもしれない。だけどもう中央構造線が動き出している。霧島の下に大きなマグマ溜まりができちゃっている。こういう場所に原発があるっていうのは、あらゆる面でありえないなと、旅をしてよく分かる。そこまでして守りたいものって何なのかなって。

島:福島の事故から約7年の間、日本の原発はほとんど動いていない。政府も経団連も、原発がなかったら日本の経済は立ち行かないって言ってたけど、実際なにも問題はなかったじゃない。結局、既得権を持つ連中が強引に再稼働を推し進めようとしているだけで、理不尽な仕組みがなければ原発体制なんて維持できないんだよね。変えていかなきゃ。

 

変動する日本列島、再稼働する原発。私たちは過去から何を学び、どこへ向かうのか。そして未来に何を残すのだろうか。いや未来は私たちが造る。

「KNOW YOUR RIGHTS」

この言葉を胸に前を向かねば。

 
(Rooftop2018年9月号)
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KNOW YOUR RIGHTS

8月18日(土)12時開場13時開演

ライブ:アルルカン・ボイス・シアター

(ドリアン助川とピクルス田村)

島キクジロウ&NO NUKES RIGHTS

トーク:ドリアン助川×島キクジロウ

主催:原発メーカー訴訟原告団

会場:LOFT9 Shibuya

入場無料/要ドリンクオーダー

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