ボーカルとして譲れないこと・崩せないスタイル
——ボーカルとして譲れないことや、崩せないボーカルのスタイルはどんなことですか?
SHIN:譲れないこと…、今は手を抜かないことですかね。
——何に対してもですか?
SHIN:はい、全部ですね。
——崩せないボーカルのスタイルはどうですか?
SHIN:自分が憧れたGACKTさんとか、hydeさんのようなビジョンを目指してるんですね。昔はそうなりたいって思ってたんですけど、そういうような存在とか、今はああいう人はいないじゃないですか。自分のスタイルというか、何を歌っても、この格好やこの見た目でずっと居続けようかなってとこですかね。そこはブレないでいきたいところですね。
——卓偉さんはどうですか?
卓偉:う〜ん、「これは譲れねー」って胸張って言うと、本当に譲れねー奴って思われるのも嫌なんで(笑)。ボーカルにせよ、どのパートの楽器にしても、基本譲れる人の方が僕は分かっているいいミュージシャンだと思うんですよね。例えばギターソロとかでもいつまでも前に出しゃばって出るボーカリストっていうのは、ギターにスポットが当たってるはずなのに自分が前に出ようとする奴は、出たがりなわけで譲れないとかって言ってると、ちょっと意味が違うと思うんですよね。そういうところをサッと譲れるかどうかっていうオン・オフがあったりとか、出し引きが出来る人の方が僕は格好いいと思うから、譲れないっていうプライドを掲げてステージに立ってる奴は、ちょっと「う〜ん」って思うんですよね。何をしてなくても、引いた時でも格好良く見える方がボーカリストは絶対にいいでしょうし。そんなにこだわりはないですけどね。あと崩せないっていうことでいうと、これは自分自身の問題なんですけど、デビューした時から体重が1kgも変わってないです(笑)。
SHIN:(笑)。それはすごいですね。
卓偉:ずっと鍛えてるから。自分が憧れた洋楽のミュージシャンとかが、時が経てば経つほどみんな太るし。顔にシワが増えて頭の毛が薄くなるとかは、それはもう人間ですからいいと思うんですよ。フォルムとかオーラっていうんですかね、そういうものを「これでいいじゃん」って開き直り始めて、ファンもそれを許してるっていう関係性が、自分にとっては美しい状況には見えなくてですね。ZIGGYの森重樹一さんは、今だにデビュー当時と同じフォルムでキーも下げずにやられてて、やっぱりこういうことだなって思いますし、ミック・ジャガーがやっぱりそうですから。75歳であれだけの筋肉と細い体を維持して、しかも2時間半や3時間のライブが出来る、ずっと踊り続けられるっていうのを見て、やっぱりすごいなと思うんですよね。最初にも言いましたけど、そうなっていきたいってことでいうと、崩せないっていうのは一つ、フォルムとかスタイルとか、そこは自分に驕りたくないですね。自分のファンに、「やっぱり卓偉はそういうところを努力し続けてくれたよね」って言われるのはもちろん嬉しいんですけど、一番は自分が、まだ音楽論とかをよく分かっていなかった多感な10代の前半の頃に、Rock’n’RollだとかPunkだっていうところに心を鷲掴みにされた、格好いいって思った気持ちを、あの初期衝動を裏切りたくないですね。変わらないで居続けろってことじゃなくって、絶対誰でも歳を取るから変わってっていいと思うんですよ。だけど、自分自身の13歳の頃のあの初期衝動を裏切りたくないっていう気持ちが強いんで、もし譲れないところって言ったら、そういうところが譲れないかもしれないですけどね。そういうこだわりはずっと持ってますね。
作詞に関して
——お互いに作詞をされてますが、作詞をする際に気を付けていることや心掛けていることは何ですか?
SHIN:僕は曲を作る時はメロ先(メロディ先行)なんですけど、メロディが一番綺麗に聴こえる言葉を選びます。だから詩先は1回もなくて。ソロになってから英詩を取り入れるようになったんですけど、英語は音の言語だから、一番メロディが綺麗に聴こえるなって。別に僕は英語がペラペラって訳ではないんですけど、それがすごく自分のこだわりでもあって。でも日本の人に向けてる訳だから、日本語もやっぱり混ぜなきゃなって思ったりもしてるんですけど。僕の中で一番聴いて欲しいところだったり感じて欲しいところは、メロディの流れだったりするから、それが一番耳馴染みのいいような言葉だったり母音だったりに気を付けて歌詞を付けてます。
——卓偉さんはどうですか?
卓偉:自分が歌い易いかどうかっていうのがまず重要で、それからデモなりレコーディングなりして、読んでいい歌詞でも聴こえが悪かったら、SHINくんが言ってる聴こえ方っていう意味合いでは、聴こえ方が悪ければやっぱり変えますね。あとはいろいろルールを付けて、こうじゃなきゃいけないとか思ってやってた時期もあったんですけど、だんだんそういうのも取っ払ってなくなってきて、良ければいいっていう単純なアプローチの方が今は強くてですね。僕も長らく、メロディ先で詩を当てはめるようにしてたんですけど、気付くと一番いい曲の形っていうのは、詩とメロディが同時をいう気がするんですよね。同時に降りてきた言葉っていうのは、やっぱり結構でかいなって。変える必要がなくなるというか、アレンジの必要がなくなるというか。詩から書いて作ってみようと思った時期もあって。その時は結構言いたいことがバーッと出てきたりして、このバッキングに対して言葉が上手く入るようにメロディを考え直せばいいやと思ってやった時期もあって。それはそこにまた良さもあるので、そういうこともいろいろ経て、今は実はこだわってるところの理由も見つからなくなってきているというか、ラフで良ければいいって考えに行き着いたって感じですね。
SHIN:僕は、今回対談や対バンをさせて頂くにあたって、曲を何曲か聴かせて頂いたんですけど、背中を押してくれるような、すごく歌詞を大事になさっている方なんだなって印象を受けました。
卓偉:嬉しいです。僕もね、実はデビューして最初の2〜3年は英語をよく使ってて、英語の方が音が滑るっていうのはよく分かるんですよ。結局でたらめ英語でデモテープを録ってたりして、それをそのまま近い英語に直したりね。それもいいかなと思ってた時もあったんですけど、だんだん歳を取ってくると、自分がステージに立ってる時に自分自身にも置き換えられるっていうか、自分自身に歌って、それが嘘のないようにしなきゃいけないっていう変な責任感も出てきて、そういう風になってから、よっぽど歌詞が意味の強いものというか、簡単な言葉でも意味が深いものというか、1ワードでいくつかの意味に取れる場合もあるじゃないですか。どっちにでも取れる言葉の方が説得力があるのかなとか、そういう風に思うようになりましたね。
SHIN:参考になります。
——実体験を組み込んだりもしますか?
SHIN:僕は実体験しかないです。
卓偉:おっ、いいですね。僕は、実体験もほぼ書いてきましたけど、ちょっと広げる場合もありますし、全くもって物語で、ストーリー性を持って脚本家になったような気持ちで書く場合もあるんですね。でも思ってないと書けないことですから、結局は自分のことなんでしょうけどね。