対バンへの歩み寄り
卓偉:対バンってよくやられてますか?
SHIN:割と2マンや3マンが多いですね。
卓偉:その時って、対バン用のセットリストになったりします?
SHIN:僕はそもそもまだ曲がそんなにないんで、ほぼやります。なのでワンマン用とかイベント用っていう棲み分けは自分の中では特にないです。
卓偉:なるほど。僕は相手方によって、ちょっと寄ったセットリストにいい意味でわざとするんですよね。極端な例を言うと、相手がすごいパンクバンドだったら、自分もバラードばっかりやってもしょうがないしね(笑)。NoGoDと対バンした時は…、あの時は団長に聴きたい曲があるか聞いて、セットリストは全部団長が決めたの。
SHIN:へー!
卓偉:それくらい寄っても大丈夫というか。ヘヴィなバンドがいたら、ヘヴィな曲を寄せてったり。イベントってさ、どうしても知らないファン同士がいるから、当然最初は水と油になってもしょうがないじゃない。だけど曲調とかテンポ間とかグルーヴとかが近い曲が並ぶとわりかしスイングするというかね。自分が10代の時にいろんな洋楽の対バンとか観てて、それはあるなって思ったりしたんですよね。20代の時ですけど、サマソニとか観に行って、多分だけど、どう考えてもこの並びで仲の悪い国のバンドっているじゃない。すっげー盛り上がると、本当は仲が良かったら自分も同じようなセットリストで歩み寄って行くんだけど、すっげー盛り上がった後に、1曲目をバラードから始めるバンドがいるんだよ。絶対にそのバンド同士は仲が悪いから。
一同:(笑)
卓偉:そういうのって、結構冷静に見ていると分かるから。僕はそれは良くないなと思う方なんだよ。フェスは朝11時から始まって20時くらいまでやるから、1日約12〜13バンドがバーっと流れてくから、全部が同じようなセットリストでやったら、もちろん困るっていうのはあるんでしょうけど。それは主催者側も上手く組み込んでるはずなんだけど、極端過ぎる場合って良くないなって思う方なんですよね。だからそれだけちょっと聞いてみたかったんですよね。
SHIN:そうですね…。パンキッシュと言えばパンキッシュな曲もありますし。
卓偉:ハードな?
SHIN:はい、ハードな。パンキッシュと言っても、アヴリル・ラヴィーンくらいな感じとか。あとはリンキン・パークとか。
卓偉:あぁ、ヘヴィな。
SHIN:でも僕はあんまりラウドな声は出せないんで、あのサウンドに自分の中でメロディを付けて。メロディはすごくメロディアスに付けてるんで。
卓偉:いいと思います。メロディは大事だよね。みんなデスボイスみたいな声を出すよね。すごいよね。
SHIN:喉を痛めそうで。
一同:(笑)
卓偉:痛めずにやれる方法があるらしいよ。ただ僕はメタルとハードロックとかを通ってないから。
SHIN:僕もメタルは通ってないです。
卓偉:かと言って歌謡曲も通ってる訳じゃないんですけど、メロディが綺麗って、すごい重要じゃないですか。いいメロディをデス声で歌う必要は全然ないと思う方なんで。
SHIN:確かに。
卓偉:だからヘヴィな曲も、ヘヴィであってもやっぱりメロディックっていうのが、すごく好きなんだよね。
SHIN:僕はミックスボイスにすごい憧れてて。ニッケルバックとか、リンキン・パークも言ったらそうなんですけど。自分に出来ないからこそなんです。
卓偉:ミックスボイスを取得したい派?
SHIN:はい、ミックスボックスはちょっとやってみたいなって思います。
卓偉:僕ね、この5〜6年でミックスボイスって世間で言われるようになった気がするんですよね。ミックスボイスって、キーの高さが昔は地声と裏声の2つしかなかったのに、地声と裏声を足して出すような歌い方があるんですよ。最近の20代の若い子たちってそういう歌い方をしてて、キーが高いですよね?
SHIN:高いですね。
卓偉:そういう出し方がいいっていうこともあるんでしょうけど、僕は基本、高いキーも地声で出そうとして、それ以上出ないなと思ったら、裏声に持ってくやり方なんですけど。人から言わすと僕の中域から上は、「卓偉くんだって、それミックスボイスじゃないの?」って言う人もいるんですけど、自分がやってることは自分しか分からなくて、「いや、これはミックスボイスじゃなくて地声だし」って思う感覚があるんですよね。ミックスボイスを取得すると、声が小さくなるよね。
SHIN:そうですね。
卓偉:そうするとね、PAの人たちが大変なんだってね。みんなイヤモニで…。SHINくんはイヤモニ?
SHIN:僕はイヤモニは使わない派だったんですけど…。
卓偉:いいね! それいい!
SHIN:イヤモニはずっと使ってなくて…。
卓偉:いい! これね、別にディスる訳でも何でもないんだけど、僕ねイヤモニはアンチなんだよね。
SHIN:あっ、本当ですか!? すみません、最近型を取ったんですけど…。
卓偉:あっ、嘘!
一同:(笑)
卓偉:でもリハでも使ってとかでイヤモニを使い過ぎると、全然声が出なくなるよ。喉が不調になってツアーを延期するバンドっているじゃん。絶対にイヤモニのせいなのよ。
SHIN:ちょっとの声で聞こえちゃいますしね。
卓偉:そうそう。やっぱり満足しちゃうから、出音で自分の歌がどんだけ重なっているかってことに、まず耳が行かなくなるんだよね。あとSHINくんはバンドをやってたから分かると思うんだけど、Marshall(ギターアンプ)とかAmpeg(ベースアンプ)のアンプに対して、「聴こえねーからもっと張り上げるぞ」ってやるから、ボーカリストって喉が強くなるはずなんだよね。ギターとかって、ボリュームがでかいじゃん。ボーカリストの喉っていうのはアンプじゃないから、喉を締めれば歪む声も出るけど、基本的にアンプで持ち上げれば歪むってものじゃないじゃないですか。だからいかにマイクに乗る声、そして耳で聴こえるんじゃなくて、ちゃんと骨とか体とか骨格に鳴らして、今声が鳴ってるっていう感覚を忘れると良くないらしいのよ。イヤモニはそれをどんどん忘れさすらしいのよ。
SHIN:なるほど。
卓偉:だから今の世代の人たちは、コロガシじゃなくて最初からイヤモニでやるっていう世代だから、僕も否定は全然しないんですけど、ただ今だに若手でも年配の方でもイヤモニをせずにやってる人は、やっぱり声が出てるよ。それにキープ出来てるっていうか。どっちがやり易いかって言ったら、それはイヤモニって言い方になっちゃうんでしょうけど。僕は、イヤモニが始まったくらいの時に札幌で「イヤモニでやってくれ」ってPAさんに言われてライブをやった時に、2曲目で引きちぎってやったから。
一同:(笑)
卓偉:僕ね、自分の声をマイクの中でダイナミクスをつけてるわけ。すごく張る時はやっぱり張るし、小さめに歌う平歌とかはオンマイクで歌ってるわけじゃないですか。でも同じボリュームで声が返ってくると、当然張るとうるさいんだよ。それで耳が終わりそうになって、こんなの出来るかって。それ以来、イヤモニはやってないんだよ(笑)。
一同:(笑)
卓偉:だから本当に歌に集中したい、バラードっぽい曲だけのライブの時とかは、イヤモニはいいと思うんだよね。
SHIN:あっ、確かにそうですね。
卓偉:ちょっと会場でお客さんと距離が離れ過ぎてる時とか、ステージが大きい時に「今日はイヤモニで」とかって考えはいいと思うんだけどね。やっぱりダイレクトにみんなの音が聴こえる臨場感の元でやりたいっていうのがありますね。
SHIN:僕は付ける時は片耳なんですよ。すごい悪いって聞きますけど、自分の空気感というかが聴こえてないと。
卓偉:そうなんですね。人間も利き耳っていうのがあるらしいんですよ。僕は左なんですけど。利き耳を出して、わざと利き耳じゃない方でイヤモニをするって人もいるみたい。
SHIN:多分、僕はそれですね。
卓偉:そっちの方がね、利き耳じゃない方の耳も鍛えられるらしいよ。
SHIN:あっ、そうなんですね。
卓偉:人間って、電話も利き耳でやってるんだって。それを逆でやると電話って出来ないらしいんだよ。それをやったりすると、耳って鍛えられるんだって。
SHIN:知らなかったです。
卓偉:でもそれが、ステージに活きるかどうかまでは分からなけど(笑)。
一同:(笑)