開封する時のドキドキ感がCDの値段
──会場に限らず、ライブ中にテル君がコアラのマーチを食べているのが印象的なんですが。
ア:うるさい音や、モッシュ、汗、そういう汚いものと、「コアラのマーチ」っていうポップなものっていう対局のものが一つになるっていうのが僕らの良さなんで。
──好きなものを融合させるの、お上手ですね。逆に言えば、ワッツーシゾンビのルーツを探ろうと思ったらどんどんとんでもない方向に枝分かれしていきそうですが。
ア:そやねん。自分も、「うわ! このバンドめちゃかっこいい!」ってなった時に、その人たちはどんなかっこいい音楽を聴いてたんやろって調べた。それが古いハードコアやったり60年代のロックやったり、ね。辿り着いた時のかっこよさを体感する喜びったらないよな。
じゅ:ワッツーシのおかげでSxOxBに興味持った、とか、そうなってたら、すごいいいことやなぁ。
ア:今みたいに、サイバーと言うか、なんでもすぐ手に入るのは、ちょっとね…。すぐには音源が手に入らない時のあのもどかしさとか、感じて欲しいよな。バーチャルではなく、あくまでもね、何時如何なる時も現場感のあるバンドとして、ライブハウスに足を運ぶ、ちゃんとレコード屋に足を運ぶ。そういうことをしている人たちにアピールしています。そういう人が、昔はいっぱいおってんけどね。今後また増えることを切に願っています。
じゅ:ほんまに、そう思います。時代がバーチャルを求め続けるなら、僕らは永遠に売れないですよ(笑)。
ア&テ:ふははははは!
じゅ:もし世間が“ナマモノ”を求めて現場に着目してくれるようやったら、僕らもそれなりに、知名度が上がっていくんじゃないかと思っています。
ア:それなりにな(笑)。
──ルーツ辿りって楽しいですよね。
ア:高校の時に、奈良の田舎の、本屋とCD屋が一緒にやってるような小さいレコード屋で一人でデスメタルのCDを発注をお願いしたりしてて。
じゅ:そうやって、一人でも需要があるって言うか、連続して頼んでいくと、いつの間にかTOY'S FACTORYが充実してたりする(笑)。
──気がついたらARCH ENEMYとかCARCASSがズラリ。うわー、物騒(笑)。
じゅ:それを見て「めっちゃ品揃えいいやんけ!」(笑)。
ア:注文伝票持って行くと、その小さいお店の人が「えーと、MORBID ANGELの『病魔を崇めよ』ですね、入荷してます!」とか、「CARCASSの『死体愛好癖』入りました!」(笑)
じゅ&テ:はははははは!
ア:そうやって客観したら、俺ヤバイ奴なんかなってちょっと不安になったり。
じゅ:言葉面だけ見たら危ないな。
ア:でもあの時の気持ちって、恥ずかしいと同時に誇らしいと言うか…。
じゅ:ちょっと変なモン知ってるっていう優越感もあったんやろうね。
ア:僕はあれをね、大人になったら言葉にすることができるようになったんです。あれは確実に、「マイノリティー故の選民思想的なカタルシス、でも勘違い」。
(一同爆笑)
ア:ほんまや、ネットで注文したらそら便利かもしれんけど、それではこの気持ちは味わわれへん。
──待ちに待ったCDを開封する瞬間のドキドキ感ってとんでもないですものね。
テ:そのCDの開封のドキドキ感が、ほぼCDの値段と言っても過言ではないですよね。
ア:テル君、さすがや。めっちゃいいこと言うなぁ。
──一人でヤングのぴちぴちなのに、考え方としてはまさに今おっしゃっていた“現場の人”ですね。
テ:もちろんです。アンリ君やじゅげむ君ほど詳しくはないですけど、ロックンロールしかわかんないです。
ア:すぐ謙遜するんですよ、彼は。たまにドン! ってかっこいいこと言うやんな。
テ:フジロックで、「あれ? 天才かな?」って思いました(笑)。もちろんライブやってて楽しいですし。