「NIGHT ON THE PLANET!」
2011年10月30日(日)浅草KURAWOOD
385/快速東京/ワッツーシゾンビ
文:石川 愛(web Rooftop)
「ヤバいよ、何がヤバいって、すごくいい…、誰それのイベントでたまたま観てサ…バンド名? ああ、ど忘れ、なんだったけな、中央特快とかそんな感じの…」
最近、酩酊状態の友人からかかってきた電話に頬杖をついて、時折相槌を入れるだけでよかったりする夜が増えた。
インタビューやライブの際の「今、対バンしてみたいのは誰?」という質問に対しても、「快速」が違う人の口から幾度か出てきている。
彼らの名前だけは少し前から、このようにして、いろんなところで聞いていた。
「快速東京」
これが彼らの正しいバンド名である。
話はそれるが、私はゾンビが苦手だ。
よくある幼少の砌のトラウマ。
成人した今でも、ロメロ映画のゾンビが夢に出てきては襲われ、目が覚めることもしばしば。
おりしもこの日の電波時計のカレンダーは10月30日を示しており、私はそれだけで頭を抱えた。
「昨今日本でもハロウィンで騒ぐ風習が根付いて、街中にゾンビがいるかもしれない。たとえそれが偽物でも…」という恐怖から判断力を失った私は、あえてワッツーシゾンビのライブを選んだのである。
会場に向かう。
電車に乗っているだけで、ずいぶんいろんなコスチュームに身を包んだ人とすれ違った。
初代サムスピのシャルロット・クリスティーヌ・コルデのレイピアの先っちょにかぼちゃをぶら下げたお姉さんと、血塗れのエプロンをさげたバレッタとおぼしき赤ずきん。
ドクター・キリコとブラック・ジャック。
はっきりとキャラクターがわかるのはそれくらいだったが、たくさんの、珍しい格好をした人たち。
幸い、その中にゾンビはいなかった。
東京、浅草。hugeな提灯。
浅草寺をちらり見物。
「アイアン・メイデンをはじめ、いろんな海外アーティストが好んで写真を撮った、日本の由緒あるテンプルじゃよ」
頭の中のメタル仙人が囁く。
煙の中で無数の修学旅行生が、「頭が良くなりますよーに」と笑う。
鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」についてはまた別の機会に。
浅草の裏路地に入り、歩くこと数分。
「7周年」の旗がひらりひらりとはためく。
KURAWOODアニバーサリー・イベントだ。
開演、385の鋭いスラップ・ベースが鳴り響く。
バキバキしていて、相変わらず格好いいなと思う。
身体がゆれる。ごおおおおお。
快速東京が出てきたが、最初は暗くてよく見えなかった。
ライブハウスなんて暗いんだから、後から冷静に考えればおかしな話だ。
歌詞とリズムに胸を打ち抜かれた。
そのことを皆様に伝えたくなった。
無心で踊った。
「あの人たちは絶対KISSを聴いていない」
「ワケわかんないよね、でも着てんの、バンドTシャツ」
「でもそういうワケわかんないバンドになりたい」
速くてうるさくて短くて、テンポの良いライブが好きなあなたにうってつけ。
物販を見ているだけでも、おもちゃ屋さんに入った瞬間のような変な高揚感が湧く。
「物販に、CDとかTシャツとか漫画とかあるんで」
そういうの、いいなぁと思う。
(実際に漫画もあります)
ワッツーシゾンビ、街中がハロウィン騒ぎであることを忘れるくらい盛り上がった。
あまりに盛り上がって、じゅげむの前歯の差し歯が飛んだ。
そういえばつい最近、N'夙川BOYSのマーヤLOVEも言っていた。
「ロックンロールは、パーツが取れる」
帰りの電車で、酩酊状態のお姉様が、お連れのお友達に絡んでいた。
「イベント組みたいと、思ったわけよ。で、ホラ、なんとかってバンド、こないだどこどこで誰それのイベントで観た、そそそそ、呼びたいのヨ…」
残念ながら、そのお姉様は途中下車されたので、バンド名は私の知るところではなくなってしまった。
ライブが終わって、ゾンビも回避できた。
快速に乗って、いろんな事の続きが気になる。
「試しに30秒だけ息を止めてみよう」などと考える、10月の東京の夜。
余談ですが、彼らのバンドTは単なるソレと侮るなかれ。
気になる方は今すぐ彼らの公式サイトをチェックすべし。
近々都内でライブがあるとかないとか。
とにもかくにも、目が離せませんよ。
Live Info.
11月13日(日)下北沢 THREE[with:THE GIRL/Music from the mars]
11月19日(土)熊谷 BLUE FOREST[with:RAZORS EDGE/deepslauter]
11月20日(日)仙台 PARK SQUARE[with:RAZORS EDGE/FRIDAYZ]
12月2日(金)吉祥寺 WARP[with:told/DACOTA SPEAKER./新世界リチウム+ SPECIAL SECRET BAND]