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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】bloodthirsty butchers ('04年2月号) - このバンドで踏み込んでいたい、このバンドで存在していたい──

このバンドで踏み込んでいたい、このバンドで存在していたい──

2004.02.01

寝ながら作曲する技術を習得!?

——バンドとしての一体感は、新機軸であるコーラスワークにも表れていますね。

吉村:音を入れてもしょうがないとこには肉声が一番なんだよ。ゴスペラーズばりにね(笑)。声の力っていうのはその人にしか出せないものだからデカいんだよ、やっぱり。決して巧いわけではないんだけどさ。“ラララララ…”ってところは、歌詞ができてなくて、メンバーに手伝ってもらおうっていうダメ感も実はあるんだよね(笑)。

——ある意味バンド・マジックじゃないですか(笑)。

吉村:(笑)まぁメンバーが1人増えて、女性であるわけだし、今までにできないこともできるし、そこはちょっと頑張ってもらって。その結果、ダビング必要回数最多出場だから(笑)。鍵盤とかもやってもらってるしね。ちなみにコーラスでやり直しが一番多かったのは小松なんだよね。

小松:俺がコーラスを最後に入れるから、音がどんどん入ってきて一番キツイんだよ(笑)。

吉村:それはしょうがないよね、ゴスペラーズじゃないんだから。でも本人達はちょっとだけゴスペラーズだと思ってるけどね(笑)。

——インストの「rat music for rat people」ですが、これはいずれ「プールサイド」のような展開になる可能性はありますか?

吉村:一応そういう作戦はありますね。この曲は分担的に言えば射守矢の曲なの。曲を理解するまでに時間が掛かりそうだなと思って、歌を無理矢理入れるのやめてインストにしたんだよ。俺、ほとんどギター弾いてないんだけどさ(笑)。

——「happy end」に代表されるように、射守矢さんの作るメロディは情緒的で独特ですよね。

射守矢:スタジオに持ってくるのはワン・フレーズだけだったりもするし、それをみんなでワシャーってやって、まな板に乗せてもらう感じかな。自分で“このフレーズいいなぁ”っていうのはなるべく曲にしていきたいなと思うね。

小松:射守矢さんが曲を作る時って、ドラムのイメージとかがぼんやり頭のなかにありますよね。

吉村:射守矢の作風を判ってる人は、射守矢がメインで作った曲は大体判ると思うよ。クセがあるからね。

射守矢:同じブッチャーズの曲でも、ヨウちゃんと俺が作る曲とでは宮崎駿と高畑勲くらいの違いがあると思うよ。

吉村:…俺には判らない(笑)。

——小松さんは単独で作曲とかは?

小松:は?(笑) ないですね、俺は。

吉村:そのぶん、きっと今年も小松ソロ・ライヴがあるから。今度は真矢ばりのセットでやってほしいね(笑)。

小松:いやいや…(笑)。

——今後はひさ子さんにも是非曲作りに参加してほしいですね。

吉村:ネクストは作ってもらおうかな、うん。とは思ってます。もちろん小松にもね!(笑) あとそうだ、俺は今回ですね、寝ながら作曲する技術を思いついたんですよ。

——はい?(笑)

吉村:煮詰まって、考えてもダメな時は寝ちまえ!と。寝ながら夢のなかで一生懸命作曲してんの。それでパッと目が覚めてギターに起こしたりする。“何かフレーズ作らなきゃ”って常に思ってるせいか、夢のなかでも何か作ってるんだよね。今は98%それで(笑)。

——ではそろそろシメに。新メンバー加入という新陳代謝があったにせよ、16年を経てもなお瑞々しさを失わない理由は何だと思いますか?

吉村:うーん。よく言えばピュア感(笑)。恥ずかしさも含めてね。そりゃあ我々も幾度となくレコード会社をクビになっておりますんで(笑)、致し方ないところもあるんですよ。

小松:いつでも新人ってことですか?

吉村:毎年がデビューだから。もうこれで何回デビューしたっけなぁ?っていう(笑)。

——(笑)とにかくこのアルバム、ブッチャーズ若葉マークの人にこそ是非聴いてほしいですね。それだけのポピュラリティと普遍性は充分に備わってますし。

吉村:アルバムを出すたびにそれはいつも思ってるわけよ。若い人との肌の距離感っていうのは年をとれば当たり前に出てくるわけだけど、それはそれで。

——敷居は決して高くないけれど、一度ハマったら抜け出せない、底なしの深みがあるよブッチャーズは、と…。

吉村:それはあなたが言って下さい。俺らは当事者だから「俺達にハマれ!」とはなかなか言えないからね(笑)。まぁとにかく、新しいアルバムを聴いてほしいってことです。

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A Young Person's Guide to bloodthirsty butchers

その豊饒で底なしの世界にハマり込む手がかりとなる3枚
 ナンバーガールは大好きだったけどブッチャーズには手が伸びなかった人、どことなく敷居の高さを感じて食わず嫌いをしてきた人、関心はありつつもこれまで聴く機会がなかった人、そして今月号の表紙を見て「トッ、トリ…!?」と思わず度肝を抜かれた人、今からでも決して遅くはない。まずはここに挙げた3枚のアルバムを入口にブッチャーズの潤沢な音楽に触れてみてはどうだろうか。混沌とした音像の支柱となるどこまでもポップでキャッチーなメロディ、大胆でいて実はきめ細やかなアンサンブル、凄まじい轟音のなかに見え隠れする瑞々しい透明感…と、その魅力は尽きない。他のどのバンドにも似ていないケタ外れの独創性こそ、ブッチャーズがブッチャーズたる所以である。
 
荒野ニオケルbloodthirsty butchers
TOSHIBA-EMI/CAPITOL TOCT-24917 2,500yen (tax in)
 通算7枚目のオリジナル・アルバムにして、不屈の「△」時代最後の作品(2003年1月29日発売)。インスト曲「悲しみをぶっとばせ!」にはバンド加入前の田渕ひさ子もギター&フルートで参加。また発売日当日にSHELTERで行われたレコ発ライヴにもゲストとして田渕が全面 参加し、この“タブッチャーズ”に十二分の手応えを感じたバンドは後日、不動のサンカクから無敵のシカクへと劇的な進化を遂げることに。
 
green on red
COLUMBIA/A&R0 COCP-50748 2,500yen (tax in)
 2003年6月6日、新宿リキッドルームで行われたレコ発ファイナルの音源を中心に、スタジオ新録4曲を加えた新生ブッチャーズによる“ライヴ・ベスト”。より躍動的に伸びやかに、より逞しく鳴る確信に満ちたこの力強い音を聴けば、田渕がバンドに加入した必然性がよく理解できる。一切の装飾を排除した剥き出しで荒削りな演奏と迸る圧倒的なエネルギーが余すところなくパッケージされた、コクと深みも存分の実況録音盤。
 
blue on red
TOSHIBA-EMI/CAPITOL TOCT-25186 2,800yen (tax in)
 今や幻の1stアルバムから『荒野ニオケル~』までの△時代=流血の15年間を総括した初のベスト盤。レーベルの枠を超えたストロング・スタイルの全14曲はどれも代表曲と呼んで差し支えなく、入門編としては最適と言える。『green on red』とダブり一切ナシの選曲の妙、2枚対になったアートワークも秀逸。このアルバムを気に入ったならば是非、それぞれの楽曲が収録された過去のオリジナル作も併せて聴いてみてほしい。
 
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birdy

COLUMBIA/PASSION
COCP-50776 3,000yen (tax in)
2004.3.3 IN STORES

LIVE INFOライブ情報

<bloodthirsty butchers『birdy』tour>
5月6日(木)札幌BESSIE HALL/5月8日(土)仙台MACANA/5月10日(月)東京・渋谷CLUB QUATTRO/5月12日(水)名古屋CLUB QUATTRO/5月13日(木)大阪・心斎橋CLUB QUATTRO/5月14日(金)広島・並木JUNCTION/5月16日(日)福岡VIVIRE HALL
【TOTAL INFO.】SMASH:03-3444-6751
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