bloodthirsty butchersの田渕ひさ子がNUMBER GIRL解散後、ブッチャーズ加入以前から構想していたバンド"toddle"が、結成から3年弱を経て遂にファースト・アルバム『I dedicate D chord』を発表する。安岡秀樹(ds; niumun)、小林 愛(g; swarm's arm)、江崎典利(b; RUMTAG)というリーダー田渕のお眼鏡にかなった鉄壁の布陣を得て、おぼつかない"よちよち歩き"ながらもしっかりと地に足を着けた活動を続けてきた3年弱の歩みを振り返りつつ、益荒男っぷりな轟音ながら甘酸っぱく清涼感に溢れた歌を聴かせるこの愛すべきバンドの核心にゆるゆると迫ってみた。(interview:椎名宗之)
*本稿は、『Rooftop』2005年9月号に掲載されたインタビュー記事を復刻したものです。
“同い年”“かわいい女子”が加入条件
──そもそも結成の成り立ちというのは?
田渕ひさ子(g, vo):NUMBER GIRLが終わってすぐくらいですね。頭の中で新しくバンドを作ろうと考えつつ。NUMBER GIRLの最後のライブが2002年の11月で、年が明けて正月に実家へ帰ってる時に秀樹君に電話しました。「一緒にどうかなぁ?」って、引き腰ぎみに押しながら(笑)。
安岡秀樹(ds):解散ライブの打ち上げの席で「バンドやろっかぁ?」って酔っ払いながら話してたよね。
田渕:そうそうそう。でもそれ、シェルターだったような気がする。「やるんだったらいつでもやりますよ!」って言ってくれて。
安岡:ひさ子ちゃんとは元々知り合いで、僕は福岡で憲ちゃん(中尾憲太郎)と一緒にSTINKBOMBっていうバンドをやっていたんですよ。
田渕:そのSTINKBOMBのライブを私がよく観に行ってたんですよね。“ドラムの人、恰好いいなぁ”って思って観ていて、憲ちゃんに秀樹君を紹介されまして。そしたら…血の気の多いコワイ人でした(笑)。
──当初はどんなバンドにしていこうと?
田渕:女の人が2人と男の人が1人で、女の人2人がよく唄うっていう。あとは、同い年で作ろうと思いました。
──…それだけですか?(笑)
田渕:はい(笑)。
安岡:「同い年は絶対条件!」って言ってたからね(笑)。
田渕:自分で誰かを誘って、まぁ言ってみればリーダーみたいな感じでバンドをやるんだったら、同じ年がいいなぁって漠然と思ってました。年上も年下も気を遣いますから…(笑)。
──“こういう音楽をやろう”とかは?
田渕:(安岡に)なかったよねぇ? “こんな感じ”っていうのはなかったですね。自分のギターと秀樹君のドラム、それにベースが合わさったもの、っていう感じです。
──その後、2003年2月に小林さんが加入する、と。
小林 愛(g, vo):はい。
田渕:東京に出てきてから、共通の友達を通じて知り合ったんです。swarm's armも観たことがあったし。最初はベースをお願いしようと思ったんですけど、別にベースにこだわらずにギター2本の3人編成でもいいかなと思って。かわいい女子を入れたらモチベーションも上がるし…と思って、小林 愛さんを誘いました。
──かわいさが条件!?(笑)
田渕:はい(笑)。誰を誘おうかっていうのは凄い考えましたけど。いろんな人でいろいろシミュレーションしてみたり。
小林:私は普通にちゃこちゃんのファンでしたよ。NUMBER GIRLのライブに行ったら必ず右側で観てました。
──ひさ子さんはまだ正式にブッチャーズへ加入する前の話だから、この先どうするかを模索されていた時期ですよね。
田渕:そうですね。まぁ普通に、当たり前にバンドをやろうと思ってましたね。
──結成から5ヶ月後には渋谷NESTで初ライブ、それ以降3ピースの期間が結構あったんですね。
田渕:そうですね。1年くらいはずっと3人でやってました。
──江崎さんが加入されたのは去年(2004年)ですね。
田渕:3人で練習に入ってて、「ベース入れてみようか?」って話が盛り上がって、それで…。
安岡:「家近くやし…」みたいなね(笑)。
──そんな理由で?(笑)
安岡:で、僕が家の近所で江崎君に電話して。
田渕:「あんた、ちょっと弾いてよ」みたいな(笑)。江崎君を誘った時のライブは一応サポート扱いでした。
江崎典利(b):違うよ、スペシャル・ゲストだったんだよ。
田渕:ああ、そうだった(笑)。
江崎:でもスタジオに入ったら、練習代を払わされるし(笑)。
安岡:自分で「いいよ、いいよ」って言いよったやん(笑)。
──メンバー全員がそれぞれ掛け持ちでバンドをやっていると、時間を合わせるのが難儀ですよね。
田渕:そうですね。みんな忙しい中でスケジュールをすり合わせてやってますね。
──僕も何回かライブを拝見しましたが、各人が片手間にtoddleをやっている感じは決してなくて、本気度がとても強いのが演奏を聴くと判りますよね。当たり前の話かもしれませんけど。
田渕:良かったです。そう言ってもらえると凄く嬉しいです。遊びでやってるバンドみたいに思われるのも悲しいですからね。
──今さらなんですけど、toddleというバンド名の由来は?
安岡:新人バンドだから“よちよち歩き”かな、と。
田渕:「バンド名どうしよう?」って話になって、「私、考えきら〜ん」って。
小林:それで私が考えることになって。新しくバンドを始めるのは凄く久々だったので、なんか新鮮な気持ちって言うか、そんな意味を込めて“よちよち歩き”に。
田渕:「“d”が2つ並んでてかわいいよね、これ」っていうふうなことを言ってたような気がする。
小林:あと、ワンワードで短くて、そんなに馴染みのない単語みたいなのが良かった。
江崎:“おせっかい”とか?
一同:(無視)
江崎:……まだ本当のメンバーになれてないな……(笑)。