2002年12月の結成以来、その名の通り赤子の如く"よちよち歩き"で前進してきたtoddleが、セカンド・アルバム『Dawn Praise the World』を完成させた。際限まで余分なものを削ぎ落としたシンプルで力強く情感に訴えかけるプレイ、涙腺を緩ませること必至の哀切メロディに彩られた本作を聴けば、足下をおぼつかせながらも辿り着いた彼らの自我の確立と成長の轍を確かに感じ取れるはずである。絶え間ない日々の絶望という泥濘に足を取られながらも、「憎しみとか後悔は土に返して」、「悲しみとか寂しさは川に流して」(「Gulp It Down」)、漆黒の長い夜を煌びやかな曙光に変える勇気と明日への希望を彼らは遂に見いだしたのだ。
小林 愛がtoddle結成以前から活動を続けてきたswarm's armのセカンド・アルバム『3285D』と共にプロデュースを務めた吉村秀樹(bloodthirsty butchers)を迎え、まるでしぼりたての朝の陽光のようなこのアルバムの制作過程をメンバー全員に賑々しく振り返ってもらった。(interview&phot:椎名宗之)
*本稿は、『Rooftop』2007年6月号に掲載されたインタビュー記事を復刻したものです。
安岡秀樹の脱退を受けて始まったアルバム制作
──今回のセカンド・アルバムは、ドラムの安岡秀樹さんから脱退の意志を告げられたことが制作の発端だったそうですね。
田渕:そうなんです。秀樹君が故郷の高知に引っ越すことになって、それを聞いた時にアルバムを録ることを決めたんですよ。秀樹君には「レコーディングが終わってから高知に帰ってよ」って言って。
──秀樹さんの帰郷がなければ、このアルバムが生まれることはなかったわけですね。
田渕:その通りです(笑)。
──でも、ぼちぼち新曲も溜まってきた時期だったんじゃないですか?
江崎:そんなことは全然(笑)。
田渕:アルバムを作ることが決まってから、“やんなきゃ!”って作っていった感じですね。6曲目に入ってる「Step With the Gloom」は、ファースト・アルバムに入れる入れないって言ってた昔からある曲なんです。ファーストを録った後に出来た曲は、2曲目の「Sack Dress」しかなかったんですよ。
──吉村さんは、本家であるブッチャーズのレコーディングと並行して、toddleとswarm's armのプロデュースにも携わるという八面六臂の大活躍で。
吉村:でもまぁ、全然大丈夫でしたよ。
田渕:最後のほうが結構ギュウってなりましたけど。
吉村:ああ、まぁねぇ。でも好きな作業だから、そんなに大変なことっていう感じじゃなかった。
──それにしても今回のアルバム、余りに素晴らしすぎて、どこから話を訊いていいのやら…。
吉村:俺が一番最初に売り込みに来たんだよ、Rooftopに(笑)。自分で焼いたCD-Rを持って。メンバーにすらまだ焼いてあげてなかった時期でね。「よろしく頼むぞ!」と(笑)。
──はい、しかと頼まれました(笑)。でも、急いで作ったようなアルバムにはとても思えぬ出来ですよね。何か方向性みたいなものはあったんですか?
江崎:作ってる時は意識してなかったですね。
田渕:頑張って曲を作れるだけ作った感じです(笑)。
小林:秀樹君の引っ越しの話が出たのが、去年の5月くらいだったんですよ。それで年内までにアルバムを作ろうっていう話になって、最後に出来た曲は録りのギリギリの12月くらいまでやってたので、半年くらいは制作期間があったんですよね。
江崎:でも、実際に曲を作り始めたのは9月くらいじゃなかった?(笑)
──(笑)じゃあ、構想も含めて半年くらい。
田渕:2曲作ったくらいから曲が増えなくて、それからポコポコポコ…って出来ていった感じで。
吉村:そうだよね、一緒に始めたブッチャーズですら曲が結構出揃ってたのに、toddleは曲が全然なくて。でも、個人的にMTRを使ったりしてやってるみたいだったから、俺から見たらわかんないけど、バンド内での分担作業はできてるのかなぁって思った。そういう、ひとつの作品を作る意識みたいなものはちゃんとあったよね。
──秀樹さんと作る最後の作品という部分で、気負いみたいなものはありました?
江崎:それはなかったかなぁ…(笑)。
吉村:ヤツの人間的になかったよね(笑)。
──作業はブッチャーズのレコーディングとほぼ同時進行だったんですよね。
吉村:うん。ブッチャーズの合間に歌録りとかもして。俺が調子悪い時は時間がもったいないから、「ちょっと来て」って呼んで1曲録ったり。
江崎:「ブッチャーズの応援に来い」って吉村さんに言われて行ったら、ひさ子ちゃんがいて、“あれ!?”って(笑)。
──2作目ともなると、作業自体は比較的スムーズに行ったんじゃないですか?
田渕:(小林に)演奏を録るのは早かったよね?
小林:うん。前もそんなに悩まなかったよね。
吉村:曲のグレードは確実に上がったよね。とにかく曲がいいよ。