写真はスター・ウオーズに登場する帝国軍の歩兵、ストーム・トルーパー。そして本体は「さつまいも」、手にしたハンドガン「ブラスター」は「にんじん」でできている。そう、すべてが野菜でできている。鑑賞し終えた後はおでんやカレーなどにして帝国に逆襲を加えることができるという、見て楽しく、食べておいしいアートなのだ。
これは大阪の門真市にある寿司処「美奈吉」の二代目ご主人、角興継(かどおきつぐ)さんが彫った野菜彫刻。和食には古来より大根やキュウリなどの野菜でおめでたい亀や鶴を彫る「むきもの」という手法がある。角さんはこれまでこの和食の伝統であるむきものの技術を活かし、幼い頃から大好きなスター・ウオーズのダースベーダー、R2-D2、C-3PO、ヨーダなどのキャラクターや、複雑怪奇なデザインのミレニアム・ファルコンほか乗り物の数々を、ひたすら野菜で彫り続けた。その量は「100までは数えました」。もはや総数は把握はできないという。そんな角さんは、おそらく日本で唯一のスター・ウオーズ野菜作家だ。ただ作家といっても作るのは会席料理に添えることが目的で、一切の料金を受け取らない。「スター・ウオーズの野菜彫刻は僕のライフワーク。一円たりとも儲けにしないという誓いを頑なに守っているんです」。そんな角さんは遂に昨年4月に開催されたアメリカ・ルーカスフィルム主催イベント「スター・ウオーズ・セレブレーション2015」に招かれ、本国にてスター・ウオーズの野菜彫刻を披露し、講演までおこなった。野菜を彫り続け遂に憧れの本国へ渡った角さん。すごい時代、いやすごい時ぇ代だ。
吉村智樹(よしむらともき)
街ネタ好きな放送作家。最新著書に『ジワジワ来る関西』(扶桑社)がある。街歩きメールマガジン『まちめぐ‼』を発行。