「当店ではTATOO、同性愛、異文化、動物、etc..全てWelcome! 但し『自己中』『身勝手』『思いやりがない人』が大嫌い」。これは京都にある、とあるカフェの壁に、中国人オーナシェフが書いたメッセージだ。この日、目の前に現れたこの大きな文字、大きな言葉を読んで、僕は「自分にメッセージされている」と思った。
50歳を過ぎてから、僕の心に大きな変化が訪れた。それは「言いたいことが、なにもない」ということ。世の中にもの申したいことが、本当に、ただのひとつもないのだ。変わって「人の話が訊きたい」という気持ちが強く湧きあがり、興味があるクリエイターへ片っ端から「お話を聞かせてほしい」とお願いした。結果、僕が質問者となるトークイベントを現時点でおよそ20本ほど起ち上げることなった。
それはいいのだが、さっそく寄せられた前売り予約の中にひとり、難儀な男がいた。けっこうな年齢だが、どうも放送業界に入りたいらしく、以前から「誰か紹介してくれ」としつこくからまれていたのだ。SNSはひと通りブロックしていたのだが、イベント予約は断れない。悩んでいたまさにその時、目の前に現れたのが「全てWelcome!」の文字だった。
そうだ。僕ごときが誰かを排他しようだなんて自己中で身勝手で思いやりがない。お客様をまずは全て受け容れよう。トークイベントというかたちで、僕はきっと試されているのだ。