近畿には忍者の里と呼ばれる場所が2か所ある。それが三重県の伊賀市と滋賀県の甲賀市だ。忍者の暗号「山!」「川!」のように、ついつい「いが!」に対し「こうが!」と脊髄反射で言ってしまうのだが、甲賀は実は「こうか」と呼び、「甲賀の里・忍術村」の最寄りであるJR「甲賀」駅も同じく「こうかえき」と読む。こういう言葉の忍法破りが潜んでいるので、気をつけなされ。ちなみに甲賀の里・忍術村では10月9日(日)に「第三十三回 全日本忍者選手権大会」が開催され(さ、三十三回……)、全国から自称忍者たちが集結。手裏剣や水蜘蛛などの日本一が決まる。行かねば撒き菱や吹き矢をくらわされるであろう。
さてこの忍者のふるさと甲賀市だが、JR「甲賀」駅がいきなりもう油断ならない。天井など七か所に忍者が隠れ身の術を使って潜み、こちらの命を狙っている。トリックアートがそこかしこに描かれ、地面のタイルまで手裏剣という凝りよう。1日の乗降客がわずか800人という正直さびしいマイナー駅だが、実は充実の珍スポットなのだ。乗降客が少ない分「おしのび」旅行などもバレる心配は少ない。バレたら舌を噛んで自決やむなしだが……。
方や「伊賀」駅はどうか? と思ったら、イガいにも三重県には「伊賀」駅が存在せず(伊賀流忍者博物館の最寄りは『上野市』駅)、おそらく忍者とほぼ無縁な福岡県にあるだけだった。そういうわけでオチをうまくつけられなかったので拙者これにてドロンいたそう。
吉村智樹(よしむらともき)
街ネタ好きな放送作家。最新著書は『ジワジワ来る関西』(扶桑社)。NTTのニュースサイト『いまトピ』にて毎週京都の珍スポットを紹介。