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ヤスエでんじゃらすおじさん、LOSTAGE、PEDROが想いを紡いだ『環ル日々』ファイナル

2025.12.22

 ‟YDO”ことヤスエでんじゃらすおじさんと新宿LOFT、下北沢SHELTERがタッグを組み、今年2月からスタートした共催イベント『環ル日々』ファイナル公演が渋谷CLUB QUATTROで開催された。3年前に他界したSHELTERのスタッフ上里環と親交があったヤスエの「悲しい別れの中でも生まれた縁をつなげていきたい」という想いに賛同したLOFTの柳沢店長、SHELTERの川本副店長と共にスタートさせたこの企画は、2カ月に一度LOFTとSHELTER交互に会場を移し、これまでにSuiseiNoboAz、Emerald、Acidclank、永原真夏、UlulU、toddleをゲストに迎えて行われた。この一年を締め括るファイナル公演にはLOSTAGEとPEDROを迎えるにあたり、バンドとして、人としてヤスエが敬愛する五味岳久(LOSTAGE)、アユニ・D(PEDRO)とそれぞれ事前対談も実施した(五味対談 / アユニ対談)。イベントのファイナルと、長年音楽活動を続けるも完璧主義ゆえに音源を出すことが出来なかったというヤスエが、このイベントを通してようやく完成させた1stアルバム『東京』の発売を祝いに集まった人々で埋め尽くされた場内は、彼の人柄と音楽がつないできた多くの人々が集う温かい雰囲気に満ちていた。
 

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 最初に登場したのはLOSTAGE。昨年SHELTERで開催された『環ル日々 VOL.0』に五味岳久(Ba,Vo)が弾き語りで出演しており、ヤスエの念願だったLOSTAGEとしての共演は初となる。「巡礼者たち」、「ポケットの中で」、「ひかりのまち」など、シンプルで洗練された格好よさだけでなく、一音一音がキラキラしていて、対談時にヤスエが五味のボーカルについて「どこまでも子供っぽい」と話していたように、楽曲そのものや演奏からも淀みのない純粋さと温かみを感じる。
 
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「メンバーはリハ見てないからまだ‟ヤスエでんじゃらすおじさん”てなんやねん、て思ってると思う」(五味岳久)「クリトリック・リス的な飛び道具系の人かな(笑)」(五味拓人 / Gt,Cho)。「SURRENDER」、そして「窓」ではエモーショナルな轟音を鳴らした。配信なし、流通なしという閉じた活動だからこそ得られるもの、紡がれる縁。まさに‟環る”を体現したような活動スタイルと、揺らがない芯の部分、それを包み込む優しい彼らの‟人”を感じる演奏から学ぶこと、受け取るものが非常に多いステージだった。
 
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 次のPEDROは「1999」からスタート。PEDROのドキュメンタリーはすべて見ているというヤスエがアユニ・D(Ba,Vo)との対談で「ベースが吸い付いている」と言っていたように、まるで体の一部のようにベースを操りながら見せる豊かな表情にくぎ付けになる。「今日という愛のある日に‟祝祭”!」と続く「祝祭」ではオイコールと共に拳が上がる。「EDGE OF NINTEEN」では田渕ひさ子(Gt)の轟音ギターが曲のソリッドさを際立たせた。
 
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そして、アユニがベースを置きハンドマイクで歌う「いたいのとんでけ」は圧巻だった。疾走感のある攻撃的な田渕、ゆーまお(Dr)の演奏に乗せて、まるで籠の中から解き放たれたかのようにステージを左右にくるくると舞いながら歌う姿は後藤まりこに通じる危うさがあり、一瞬でも目を離した隙に何をするか分からないスリルのあるパフォーマンスに、アイドル時代から培われてきた表現力の高さを感じた。「生きねば」と繰り返し歌うラストの「余生」まで、ワンマンを見ているようなストーリー性と満足感があった。
 
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 そして、‟YDO”コールが沸き起こる中、ラストのヤスエでんじゃらすおじさんが登場。飯田裕(Ba / SEBASTIAN X)、カメダタク(Key / オワリカラ)、おいたん(及川晃治 / Gt /  ex.東京カランコロン)らサポートメンバーによるバンドセットで一曲目「闇光」。ノスタルジックなメロディーと美しくドラマティックな楽曲、そして声を枯らして歌い上げるヤスエ(Gt,Vo)のエモーショナルなボーカルに一曲目から感情がこみ上げる。温かみのある「婚前旅行」やアップテンポな「湯気」と、間奏のトランペットが寂しさを煽る「孤独と海」、壮大な世界観の「終末論」など、ころころ変わる曲の温度感に内面のいろんな部分が刺激される。「環のおかげで1stアルバムが出せました。今日もその辺で見てるんじゃないかと思います。環が一番好きだった曲です」とのMCから「東京」。大勢の観客が両手を広げるように掲げ、それぞれの感情の蓋が外れて解放されていく様子が後ろから見ていてもよく分かる。
 
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アンコールでは再び‟YDO”コールの中登場し、アルバム未収録曲「再会」を披露。アウトロのおそらく即興と思われるラップ調の語りの中で繰り返された「この空間で出会ってここから出たら他人だ」というフレーズが印象的だった。そして「環、見てるかー!」と叫んだ場面ではぐっとこみ上げるものがあった。これまで故人について彼が話す際に湿っぽさを感じたことがなかったのと、この日は命日だということが相まって、いろいろな想いが見えた感動的なラストだった。
 言葉にすると軽々しくなってしまうが、これだけ人の想いが‟環る”ということを実感するイベントは中々ないのではないだろうか。‟人”というものについて、個人的にも学ぶことが本当に多いイベントだった。『環ル日々』はこの日ラストを迎えたが、来年4月1日にSHELTERでアルバムリリース記念ワンマンを開催することが発表され、この一年間、そしてこの日に生まれた縁はこれからも紡がれていく。[Text:小野妙子 / Photo:町田千秋(XInstagram)]
 
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ヤスエでんじゃらすおじさんx新宿LOFTx下北沢SHELTER 共同企画『環ル日々』
2025年12月11日(木)渋谷CLUB QUATTRO
 
【LOSTAGE SET LIST】
1. 巡礼者たち
2. こぼれ落ちたもの
3. ポケットの中で
4. ひかりのまち
5. SURRENDER
6. 窓
7. 瞬きをする間に
 
【PEDRO SET LIST】
1. 1999
2. 祝祭
3. 明日天気になあれ
4. EDGE OF NINETEEN
5. 吸って、吐いて
6. 拝啓、僕へ
7. いたいのとんでけ
8. 春夏秋冬
9. 余生
 
【ヤスエでんじゃらすおじさん SET LIST】
1. 闇光
2. 異世界
3. 婚前旅行
4. 魔法
5. 孤独と海
6. 終末論
7. 初恋
8. 泡
9. 湯気
10. 劇場
11. 東京
12. 春獄
en. 再会

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