ジョン・レノンの生涯最後の10年間に焦点を当て、ビートルズ解散後も独自に進化を遂げ、革新的な音楽を生み出し、反戦運動の最前線に立った伝説の人物の軌跡を辿るドキュメンタリー『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』がヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinema新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国で公開中。
公開2日目である12月6日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町で行なわれた上映後のアフタートークに、本作の字幕監修者でもあるビートルズ研究家・藤本国彦と、ミュージシャンでビートルズマニアの和田唱が登壇し、本作の魅力を語った。司会は、元宝塚歌劇団星組の汐月しゅうが務めた。
▲和田唱
藤本は肩書きがビートルズ研究家で、本作の字幕監修も担当しているが、和田もビートルズマニアなのは周知の事実。
和田は「僕にとってこれは仕事ではありません。息抜きタイムです」と挨拶し、会場の笑いを誘った。ビートルズについて、「中学の時に夢中になって、この間50歳になりましたけど、今に至るまで夢中でい続けさせてくれるグループは他にいない」とビートルズ好きをアピールした。
▲アンディ・ピーブルス(ラジオブロードキャスター)、ヨーコ、ジョン。1980年
本作はジョン・レノンの生涯最後の10年間に焦点を当てている。本作の感想を聞かれた和田は、「このドキュメンタリーは、近年観たビートルズ関連のドキュメンタリーの中で、一番面白かったです。知りたかったことが知れたし、『やっぱ、そうだったんだ』と腑に落ちるポイントがたくさんあって嬉しかったです」と話した。「噂には聞いていましたけど、1981年、銃弾に倒れる翌年から予定していた、ビートルズ以来の久々のツアーのことが冒頭から具体的に語られていたのは、感動しましたし、ステージセットのデザインがここまで進んでいたんだというのは感動でした!」と興奮気味に語った。
▲ヨーコの著作『グレープフルーツ』のサイン会でのジョン
作中、1980年にジョンは、ラジオでポール・マッカートニーの「Coming Up」を耳にし刺激を受け、本格的な音楽制作を再開するというエピソードが紹介される。藤本は「ジョンが、ポールが自分より先鋭的なこと、自分がやっていなかったことに踏み込んだということで、妬んだという話があったので、面白かった」と話した。
▲藤本国彦
作中、アルバム『Double Fantasy』の評価について辛辣なコメントが並ぶことに関して、和田は、「びっくりでした。でも確かに、ポールの『Coming Up』と比べると、「(Just Like) Starting Over」とかは懐メロっぽいです。パパになって落ち着いたジョンを味わえる」と話した。
和田は『Double Fantasy』について、「ジョンが一人のアルバムにしたかったというのはびっくりしました! 『久々の復帰作だし、俺のソロアルバムにしたほうがいいんじゃない』と思ってた、というのも、『そうだよな』って思うんです。『まともだったんだな、ジョンは』と思いました」と話した。
▲ジョンとヨーコ。レコーディングスタジオ「THE HIT FACTORY」の前で
和田は“失われた週末”について、「今まで、『他の女(メイ・パン)と遊んでらっしゃい』というヨーコの指示と聞いていたので、ヨーコもずいぶん変わったことをするなと思っていたんですが、そうじゃなかったんですね。ヨーコから逃げるように二人でLAに行っちゃったんですね。そのほうが腑に落ちました。あと、エルトン・ジョンのコンサートでヨーコと再会してジョンが復縁したというのが定説でしたが、『そうではない』と」と、新しい情報に納得した様子。
▲ジョンとショーン・レノン。1979年、ダコタハウスにて
また、“ハウスハズバンド(主夫)時代”について、和田は、「ショーンくんが生まれて、75年からはパンを焼いてショーンくんをあやしてという僕の中でいいイメージを想像していたんですけど、『スタッフいっぱいいたよ、シッターいっぱいいたよ』ってそうだよなと思って。『パンを焼いたのも一度か二度だと思うよ』と。今までのハウスハズバンド時代のジョンのイメージがガラガラと崩れ去ったんです。それが逆に良かったです」と本作で明らかになった新情報で今までの定説が覆った衝撃を語った。
VIDEO
『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』イントロダクション
▲ジョン、ヨーコ、ピエール・トルドー(当時、カナダ首相)。1969年12月
“世界がまだ追いつけなかった言葉がある”
1980年12月8日、悲劇的な最期を遂げたジョン・レノンだが、その影響力は計り知れず、死後も数多くのドキュメンタリーやジョン・レノンを題材とした映画やドラマが公開・放映されている。昨年もドキュメンタリー映画『ジョン・レノン 失われた週末』が公開され、大きな話題を集めた。
本作はジョン・レノンの生涯最後の10年間に焦点を当て、ビートルズ解散後も独自に進化を遂げ、革新的な音楽を生み出し、反戦運動の最前線に立った、史上最も影響力のあるポップカルチャーアイコンの一人となった伝説の人物の軌跡を辿る。
▲ジョンのグリーンカード取得を伝える新聞。1976年
貴重なアーカイブ映像をふんだんに収録している他、最後のアルバムに秘密裏に集められたミュージシャンとスタッフ、「君にスクープをあげる」と一番に秘密を教えてもらったジャーナリストや、射殺された12月8日にジョンをインタビューし、事件前にマーク・チャップマンと話したジャーナリスト、たまたまジョンが担ぎ込まれた病院にいたジャーナリスト、ジョン・レノンの親しい友人たちが、伝説となった彼の行動の裏に隠された真実を赤裸々に語る。
中でも、実現しなかった1981年のカムバック・ツアーの詳細、改めて語られるジョンとヨーコの出会いや生活の全貌など、ファンにとって目新しい情報が満載。ジョンとヨーコの個人秘書でありプロダクション・アシスタントを務めたメイ・パンとの「失われた週末」、ポール・マッカートニーとの法廷闘争、薬物使用についての詳細も明らかに。さらにはグリーンカード取得のための苦闘、夫であること父であることの難しさなどについても語られる。
ジョン・レノン、ビートルズ、音楽ファンにとっても、ノンフィクション好きにとっても必見の一本。
『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』あらすじ
▲1968年10月18日、ドラッグ所持により逮捕
20世紀を代表するミュージシャンであり、平和運動家としても知られるジョン・レノン。1967年のビートルズのマネージャーのブライアン・エプスタインの死は全てを変えた。ベトナム戦争真っ只中の1969年3月、ジョンは、オノ・ヨーコと結婚し、12月、ジョンはカナダで親しいジャーナリストに、スクープとしてビートルズ離脱を告白。
1972年の再選を狙うニクソン大統領は、若者が民主党に投票することを恐れ、平和活動をしていたジョンを“反米的存在”と見なし、ロンドンでの軽微な薬物の前科を理由にして国外退去命令を出す。永住権が欲しい夫妻は、抗戦。
▲ヨーコ、ジョン、リンゴ・スター。1976年
1971年にジョンは、ポール・マッカートニーを批判した自作曲「How Do You Sleep?」を発表。1973年半ばから18ヶ月のメイ・パンとの恋人関係の後、ジョンとヨーコはよりを戻す。1980年、ジョンは、ラジオでポール・マッカートニーの「Coming Up」を耳にし刺激を受け、本格的な音楽制作を再開。秘密裏に5年ぶりとなるアルバム『Double Fantasy』を制作し、ワールドツアーの計画も開始。しかし、アルバムリリース翌月の12月8日、帰宅時に射殺されてしまう。ジョンの逝去後にポールがジョンと親しかったジャーナリストに聞いた質問とは?
商品情報
映画『夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩』
【監督】 アラン・G・パーカー 【出演】 ジョン・レノン(アーカイブ)、ジョージ・ハリスン(アーカイブ)、リンゴ・スター(アーカイブ)、ポール・マッカートニー(アーカイブ)、オノ・ヨーコ(アーカイブ)、スティーヴ・ターナー、クリス・チャールズワース、クリス・サレヴィッツ、トニー・ブラムウェル、タリク・アリ、アンディー・ピーブルズ、ヘレン・アンダーソン、デイヴィッド・スターク、ピーター“ドゥーガル”バトラー、レイ・コノリー、トニー・パーマー、クリス・ウェルチ、バリー・マイルス、フィリップ・ノーマン、ジョン・ダンバー、ボブ・ハリス、アール・スリック、ジェイ・ベルゲン、アラン・ワイス、ヘンリー"ザ・ハウス"スミス、ケネス・ウォマック、ジョン・スミス、アンソニー・デカーティス、デイヴ・ショリン、ローリー・ケイ、ヴィニー・アピス、パメラ・デイ・バー、ジェリー・ケーグル、ロバート・モーガン、パット・ギルバート、マーク・カニンガム、マット・スノー 2025年 / 140min / イギリス / 英語 / 原題 “Borrowed Time: Lennon's Last Decade” 字幕監修:藤本国彦 / 配給:NEGA © 2025 BORROWED TIME THE MOVIE LIMITED ヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinema新宿ほかにて全国順次公開中
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