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トップレポート鈴木エイト(ジャーナリスト)による『ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!』レポート! 「反ワクチン」「ニセ医療」の問題への関心に会場は満員。

鈴木エイト(ジャーナリスト)による『ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!』レポート! 「反ワクチン」「ニセ医療」の問題への関心に会場は満員。

2019.02.25

『ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!』

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▶︎2018年11月14(水)ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!
 
2019年1月、宗教団体『MC救世神教』の2世信者研修会を発端に三重県とその周辺の府県で麻疹の集団感染が起こった。2月に入っても終息の気配は見えず、大阪の大規模商業施設では感染源不明の麻疹のアウトブレイクが発生。また、妊婦が感染すると生まれてきた子供に先天性風疹症候群が高い確率で起こる風疹が流行、インフルエンザに罹患し医療機関を訪れる人が過去最高数に達するなど感染症への懸念が拡がっている。
一方、インスタグラムやツイッターなどのSNSではワクチン不要論などのトンでも医療情報が蔓延しており、そのような誤った情報に少なくない数の親、特に母親が影響を受け「自然派ママ」として「反ワクチン」に傾倒してしまう現実がある。その陰には適切な医療を受ける機会を逸し、病や様々な症状に苦しむ子どもの姿がある。
そんな現実の中で、公衆衛生の観点からも正しい医療情報を発信する必要性が一段と高まっている。
 
今回、3月10日に医療イベント第2弾『接種ためらいペアレンツ歓迎!ワクチン安心講座』を開催するに当たり、第1弾イベント『ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!』を振り返り、そのイベントレポートを記す。
出演者の思いを正確に伝えるために、可能な限り、各出演者の発言はそのままカギ括弧で示すようにした。
 
2018年11月14日にネイキッドロフトで開いた『ここが変だよ「反ワクチン」徹底分析!』は画期的な医療系トークイベントになった。場内は、ほぼ満員で来場者には医師など医療従事者も多く、複数のメディア関係者が取材に訪れた。「反ワクチン」「ニセ医療」の問題について多くの人が関心を寄せていたことが判る。
 
開演に先立って、イベント企画者の幸進伍氏(ネイキッドロフト)がイベント主旨をこう説明した。
「巷のワクチン勉強会は中立な立場と言いながら非接種を進めるものばかり。このイベントはズバリ、ワクチン接種推奨です」
巷に流布する反ワクチンへのカウンターイベントということだ。
 
同じく企画者でイベントの司会進行を務める筆者(鈴木エイト)は「今年(2018年)、生活者ネットワークが主催した『ワクチン勉強会』なる反ワクチン講座を取材した際、乳児を連れた若い母親が質疑応答で『ワクチン接種をしないクリニックを紹介してください』と質問していた。これはとんでもない事態、なんとかしなければという思いから今回のイベント開催に至っている」と挨拶した。

医療系イベントが開演

出演者が入場、医療系イベントが開演する。
「議員会館で自民党議員にMRワクチン(風疹・麻疹混合ワクチン)を接種してきた」と語るナビタスクリニック理事長の久住英二氏。
ポール・オフィット著『反ワクチン運動の真実』翻訳者のナカイサヤカ氏は「反ワクチンを巡る海外と日本の状況は驚くくらい一緒、登場人物もよく似ている」と第一声。
母親たちの悩みを聞き、適切な情報発信を続ける小児科医の森戸やすみ氏は「ワクチンが怖いと言うのは正直な意見」と前置きし「お母さんは勉強しているし、ホントに子供のことを考えている。でもワクチンについて勉強しようとするとそっちの(トンでも反ワクチン情報)ばかりひっかかる。あっちの世界に行ってしまった人は無理」としながらも「迷っている人を引き寄せたい」と語った。
 
まず話題となったのは最新のワクチン接種スケジュール。
「ワクチン同時接種は世界標準の方法、同時にやらないと終わらない。海外は両腕両脚に打って解熱剤渡してはい終わり。嫌なことは1回で1日で終わりの方がいい」(森戸氏)
ワクチンで防げる病気は防ごうということだ。
「感染症は山ほどあってワクチンで防げる病気の方が少ない」(森戸氏)
「罹患のリスクを下げるには通院回数を減らした方がいい。予防接種の時間帯を設定している医院もある。同時接種の方がより安全」(久住氏)
 
感染症の脅威、そして対応する医師については
「どんなに最新の設備が整っていても麻疹は1000人に1人が死んでしまう」(森戸氏)
「1度ワクチンで減った感染症が打たない人が増えると再び流行することを再興感染症という。欧州は麻疹、米は百日咳」(ナカイ氏)
「数年前にハワイで麻疹が発生した際、医者は麻疹と判らず3軒目でようやく診断された。ワクチンが充分に行き渡っている社会では医療者もその病気を診たことがない。ワクチンでその病気が無くなったからワクチンをやめていいものではない。医療者も見たことがないものは診断が付けない。ワクチンでコントロールできるものはしてほしい」(久住氏)
「私の専門は血液内科、感染症が猛威をふるった最悪の姿をたくさん見ているし、それに医療が如何になすすべがないかを知っているので小児科医でもないのにワクチンについて言及している。一般の方々は感染症で苦しんだ方々をリアルに見たことはないし、家族を失った遺族の悲しみを聞いたこともないし感染症を舐めすぎている、軽く考えすぎ」(久住氏)
 
反ワクチン団体や、反ワクチンを推奨する医師らについては手厳しい。
「アメリカでワクチンを打ちましょうという運動を始める人には感染症で子供を亡くした人が多い」(ナカイ氏)
スライドで反ワクチンを主導する医師らが映されると
「この方々は医師免許持っているけど医者ではない。医師免許を持っていたら何をやってもいいわけではない。医師の資格というのは科学的に体系だった学問と再現性があり誰にも同じことができるという医学を提供するのが医師であり、助産師・看護師・医師は免許を持っていたら何をやってもいいわけではない。この人たちは医師免許保有者だけどやっていることは医者ではない」(久住氏)
「(アメリカの反ワクチン論者である)バーバラ・ロー・フィッシャーによる全米ワクチン情報センターはサプリ業者と連携している。『ワクチンは怖いからうちのサプリを』というネタ」「日本にもオリジナルの反ワクチン団体があり、革新系が多い」「コクチーズで『ワクチン勉強会』『予防接種』と検索すると、反ワクチン講座ばかり。出席した親の感想を見ると感銘を受けてしまっている」(ナカイ氏)
 
反ワクチンの証し『予防接種受講証明書』が貼られた母子手帳がスライドで示される。
「『感覚で受けません』という親がいるが、知識があった上での感性でないと」(森戸氏)
「何となく怖いという人は真剣に考えている人。2015年にカルフォルニアのディズニーランドを起点に麻疹が流行した。地区ごとのワクチン接種率を見ると体系的な知識はないが自分で調べるという方々が誤った選択をしてしまうことが判った」(久住氏)
「昔は『貧乏で教育が無いからワクチンを打たない』という設定で法律ができていた。今は自分で調べたせいで打たない人が多い。添加物やワクチンにも『もう嫌』となる。ニューエイジ、自然、マザーアース、何もしないのが安全で自然のままが最高みたいな」(森戸氏)
「自然に抗うために医学も科学も発展した」(森戸氏)
「標準医学も進化、近代医学に近付いた最初がワクチン、その後が細菌、衛生、消毒、手術、抗生物質、薬、ウイルス。代替療法はワクチン以前で置いてきぼり」(ナカイ氏) 
「ワクチンというのは自治体・国が『やりなさい』と国家権力と・医学・医療者が結びついている結託しているような姿に見えるので半知性、反科学、反権力の歪んだ形として向きやすい」(久住氏)
「自然はホントに恐ろしい。研修医の時、冬はけいれんが運ばれてくる。熱性けいれんか髄膜炎か判らない。髄液検査をしたら真っ白、細菌性髄膜炎。脳にも炎症。自然に罹ったらヒブには二度と罹らないが細菌性髄膜炎になったら1歳児の3分の1は死ぬ、後遺症、元気に生きて帰る。あなたのお子さんはどれになるか判りませんと3年目の研修医が宣告しなければならない。物凄く辛かった。今は見ない。よかった。細菌性髄膜炎の子が来ても今の医者は判らない」(森戸氏)
 
権威ある機関出身の人物がトンでも情報を発信していることにも警笛が鳴らされた。元国立公衆衛生院堰学部感染室長という肩書きでワクチンを否定する講演を行う人物については
「こういう肩書きを使うべきではない。この組織がプロモートしていることと自分が言っている意見とは全く異なっている。かつてこういうポストにいたが今話していることは個人的な見解と言うべき。肩書きを悪用している」(久住氏)
 
インフルエンザの集団接種に効果がないとの報告を出した『前橋レポート』については、その矛盾を突く。
「恣意的に使われている」(森戸氏)
「止めた結果、老人の死亡率増えた。それが集団免疫」(ナカイ氏)
「因果関係は肯定も否定もできない」(久住氏)
因果関係ではなく単なる物事が起こった時系列という前後関係で捉えてしまうことに問題があるということだ。
「時系列的な因果関係を求めがち。科学的に証明するのは難しいので統計的に検証しないと意味があるかは言えない。ワクチンには無過失補償制度を導入すべきと10年近く言っている」(久住氏)
「定期予防接種と任意接種のあとで有害事象が起こった際、法律も保障が違う、額も違う。任意接種はやるべきではないというメッセージを伝えてしまう。母子手帳も定期予防接種が先で任意接種が後に載っている。いろんな国の母子手帳を見たが海外では順番に載っている。任意になっているのにも意味はない」(森戸氏)
「日本の健康保険制度が硬直化している。インフル65歳以上は助成、それ以外は有料、確定申告でも使えない。しかし罹ったら只」(久住氏)
 
ワクチンを打つか打たないかは自己決定権という主張については
「基本的人権の侵害のカウンター概念としては公共の福祉。集団のうち麻疹は95%、風疹は80%の方に免疫がないと流行が起きてしまう。これを『個人の判断で打つ打たないを決めてください』ということで達成できるかと云えばできない。ワクチンで免疫があるから100%罹らないわけではない。ワクチンを打ったのに罹ってしまう人を防がなければいけない。2013年の風疹の流行の際、お腹に赤ちゃんがいる時、お母さんが罹ると先天性風疹症候群、深刻な障害が起こる。お母さんは免疫があったのに赤ちゃんが先天性免疫症候群になったという事例が発生している。つまり感染症に関しては個人的に防衛しましょうというだけではディフェンスとして弱い。なので集団免疫を得なくてはダメ、流行そのものをとめないといけない。それが個人の判断で達成できるかどうかというとできない」(久住氏)
 
放射能を忌避する人と反ワクチンの人が重なっていることについて
「(放射能を避け)遠くに避難という人は反ワクチンの人が多い」(久住氏)
 
キレーション点滴をしている医院について
「キレーションを大量投与すると即死します」(久住氏)
「自閉症の子どもの治療をできないのに治療すると言ってキレーションが人気。米で1人死亡している」(ナカイ氏)
 
昨今も話題となっている「免疫力UP」についてもそのおかしさが指摘された。
「免疫力が上がり過ぎると人間は死ぬ。免疫力を上げるCTLA4ヤーボイを健康な人に打つとすぐ死んでしまう。免疫力というのは恐ろしい。『免疫力を高める』なんて恐ろしいことをよく言えるなと。免疫力が上がったら人間は死んでしまうので、免疫は適切に働いていただくことに意味がある」(久住氏)
 

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)を巡る騒動も話題に

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)を巡る騒動も話題になった。全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長を務める日野市市議会議員が娘の体調不良を訴える複数の母親に対して、電話で「それ、子宮頸がんワクチンの副作用よ」と診断していたことについて「医師法違反じゃないんですか」と指摘したのが久住医師である。
「(この市議は)私たちは反ワクチンではないと仰っていたのにウェイクフィールド映画公開中止にガッカリとか言っちゃったのでバレましたね」(ナカイ氏)
「HPVワクチンを打ったあとに具合が悪くなったという娘さんがいらっしゃる母親たちとは直接何組かお話を聞かせていただいた。今も体調の悪い子がいて毎朝、やりとりしている。彼女ら(連絡会)が一様に言うのは『今度こういうデモをやるから集合しろ』とか『何々をするからカンパしろ』とかいう情報はメール等で来るんだけど『こういう治療法はいいよ』とか『こういうのが効くよ』という治癒に向かう様な情報は回ってこなかった。ポリオの会という活動をしている小山さんという素晴らしい方がいるが、彼女はポリオになって困っている人に『いい車イスが出た』とかいろんな有用な情報を本にして定期的に配布するなどされているが、そういう活動と較べてこちらの被害者連絡会にはものすごく温度差というか、それって誰のために役立っている活動なのかなと」(久住氏)
つまり、同連絡会の活動は何かが違うということだ。
「普通は『何か有用な情報が得られるのかな』と。皆さんやはり困ってらっしゃるわけです。なんだが判らないけど子どもが学校に行けなくなったとか、朝起きられなくなったとか。だってワクチンなんて打っても打たなくても起立性調節障害とかで、夏休み明けて学校に行けなくなる子なんていっぱいいるわけで。それが『何でだろう』という時に『ワクチン打ったせいじゃないの?!』と言われるとそこに逃げ込みたくなりますよね。皆さん、ワクチンを受けた。受けなくて批判してるんじゃなくてワクチン受けて困っている方々が、吸い寄せられちゃっているわけで、そこに医師としてはちゃんと手を差し伸べられなかったという反省はある。『いや、それはワクチンのせいじゃないから』と突き放すのではなくて『あ~なるほど』って話聞いて『ワクチンのせいかもしれないし他のせいかもしれない、だけどこれは良くなることが一番大切だからどうやって良くなるか考えていこうね』と寄り添ってあげることが必要だったが、このワクチンを打つのが思春期の少女だったので自分の症状を表現することも難しいし、男の先生だったりすると苦手ということもあったかもしれない。そういうスイートスポットというか医療者が受け止めきれなかったところに彼女らが入り込む余地があったというところで私は申しわけなかったという気持ちはあります」(久住氏)
 
自己免疫疾患が疑われ体調が悪い少女に自己抗体値が高い人が多いとの報告については
「いわゆる紛れ込みなんですよね。『ワクチンを受けた後に発病したらワクチンのせいだ』というのが彼らのロジック。ロジックとして破綻している。ワクチン受けた人と受けていない人に自己抗体の出現率がどのくらい違うのかとお金掛けて調査なさったらいいんですよ。それはやらずに『私はこれは関係があると思う!』と。ホントはロジックで考えなければならないのに思い込みで発言するというのが反ワクチンをサポートする医師の特徴」(久住氏)
 
2018年11月の日本医師会と日本医学会の合同フォーラムにはHANS(HPV関連神経免疫異常症候群)を主張する医師が招聘されておらず、如何に納得してもらうかにしてもらうかということにシフトチェンジしていた印象がある。
「ワクチンのせいなのかもしれないという段階ではない。じゃあ現状として痛みに対してどう治療しているのか、積極的に治療していくにはどうするのかのという話だった」(久住氏)
 

薬害オンブスパースン会議や薬害弁護団

薬害オンブスパースン会議や薬害弁護団について。薬害オンブスパースン会議主催のHPVワクチンに関する国際シンポジウムを取材して思ったのは、被害を主張するも相手にされない人が日本と同じように世界中にこんなにいるということだった。
「マッチポンプというか。『訴訟も起きているのに』とかあんたたちが訴訟起こしてるからよそでも。お互いに火をつけあっているのに向こうで火ついてますよと言っているような」(久住氏)
 
では、「寄り添う」とはどういうことか。
「被害を受けてしまっている人というか調子が悪い人が置き去りというのは間違いないと思う。誰が寄り添ってるのかといえば誰も寄り添ってない。『あなたたちはこんな被害を受けてほんとに可哀想だね』と言うのが寄り添うことじゃないんです。『君たちの未来が閉じられてしまった』などと周りで騒いだら一番可哀想じゃないですか」(ナカイ氏)
 
休憩を挟んでアンケートをもとに質疑応答が行われた。
 

反ワクチンへの説得について

Q:インスタで反ワクチンを説得するには?
「経験上無理 同じことを言い続ける 叱らないで今からでも遅くないから」(森戸氏)
 
Q:幼稚園ママ友が反ワクチン どうするか 説得は?
「『え? なんで打たないの? 馬鹿じゃない』と言うのは効く。米の母親プロワクチン(反反ワクチン)身近な人が反ワクチンになりそうな時の手引書。あなたは反ワクチンねと決めつけない、その人はワクチンを躊躇っている人、迷っている最中なんだから。データを見せる、そこから始める」(ナカイ氏)
「ホントに打たないと決めていたら誰にも表明してくれないんですよ。まだ、小児科に来て打ちませんからと言う人はまだいいほう。必要性を感じたらいつでも待ってるからと言うといつか来てくれると思っている」(森戸氏)
「大人になって必要になれば打ちますという人もいる」(ナカイ氏)
「ワクチンに対する知識を子どもが生まれる前から産婦人科、保健師、助産師が「子どもが生まれてから2か月でワクチン始まるのよ」と事前に教えてくださるのが一番大切」(久住氏)
「産んだばかりのお母さんを集めて話したことがあるが、出産という一仕事を終えて疲れているし寝てしまう。お父さんになったばかりの人も来て聴いてくれたらいいのにと。あんまり前だとまだ駄目。子どもが目の前にいない時に話を聴いても切迫感がない。イメージができないので、お父さんも産休・育休に来てくださったらなと思う」(森戸氏)
「海外では妊娠中に3種ワクチンを打つことで子供に免疫。生まれた後のことまで産婦人科の先生に協力してくださいねというのは無理なお願いかもしれないが。妊娠中からワクチンについて受けてくだいねと」(久住氏)
 
会場の産婦人科医師「日本の産婦人科はワクチン接種についてあまり知らない。先天性風疹症候群の子どもが産婦人科医の目の前に来ることはない。それは産婦人科だから、みんな小児科に行ってしまいます。目の前のことには興味を持つが、先天性の病気については意識が落ちている感じはする。勉強して知識を持つ、それこそが知識人の、医者を含めて啓蒙する人たちの活動だと思っているがそこまで行ってないのは感じる。ワクチンは予防なので、起こらないことでどんないいことがあったかは目の前に一切ない。判りづらい。起こってから。救急の医者はいい、死にそうな人を助けたらみんな感謝する。ワクチンなんて『ならなかったら当たり前だろ』で終わり。過去に学んでやるしかないが、過去に学んだ人たちがだんだん消えていってる、危ない時代を知らない人ばかりになっている」
 

医療者とのコミュニケーションについて

Q:ワクチン接種に抵抗はないが子供に不調が出た時に医療者とどうコミュニケーションを取ればよいか?
「ドクターショッピングしていい。東京なら医療機関がたくさんあるのでできる」(森戸氏)
 
Q:ワクチンの副反応を訴える人への接し方は?
「その症状からの回復を目指すこと一緒に考えてあげることが大切。特効薬や治療法を見つけてほしいというが単一の疾患概念も確立されていないので治療法もない。話を聞くだけで治る人もいる。別の疾患の紛れ込みの人は原疾患の治療をすれば治る。大切なのはワクチンによって起きたのかどうかは関係なく、文脈を切り離して一緒に考えてあげることが重要」(久住氏)
「『可哀想だね』と言うのを控える」(ナカイ氏)
 

メディアの問題について

Q:反ワクチンになるきっかけ、メディアの責任は?
「教育を受けたはずの医者もワクチン怖いよねと反ワクチンになりえる」(森戸氏)
「医師はわからないことをわからないと言わないといけない。不正確なことを言うと医療者への不信感を持たれる。医者に簡単に話を聞くのは難しい。こういう場も大事。SNSも補完」(久住氏)
「ツイッターで医師をフォローするといい、勉強の機会になる」(ナカイ氏)
「朝日の記者が(子宮頸がん)ワクチンが原因と書き始めた。メディアの仕事はいち早く狼煙を上げ、弱者の側に立つべき、権力の監視がジャーナリズムだが、そうでなかったという時は方向転換すべき、朝日内では今さら薬害は誤報でしたとは言えない雰囲気だと聞く。官僚が無謬性に囚われているようにメディアも罠に陥っていて論調を修正できない。同じ量、パワーでコンテンツを書いたらマイナスの方に引っ張られる。なんとなく先延ばしの状態。あと何年かするとHPVワクチン接種の機会を逸失したがために罹患する人がたくさん出てきて騒ぎになり、ようやくマイナス側に触れていたのが戻っていくと思う」(久住氏)
 
Q:薬害弁護のビジネスのからくりは? 薬害裁判でかなりのお金がストックされているという話がある。
「タミフルの異常行動は否定された。イレッサも最終的には原告敗訴で薬害ではなかったと決着。でも報道は小さい。なぜ科学的には負けることを定期的にやっていくのかというと、メディアに出るので社会的にはプレゼンスを保つことができる」(久住氏)
HPV訴訟の原告弁護団に取材すると着手金は無しとのことだった。
「成功報酬型。薬害B型肝炎訴訟、弁護士料5%で1500億円が医療問題弁護団の懐に入る計算、それだけ原資があるので裁判を起こせれば彼らにはいいのかもしれない」(久住)
訴訟の乱発によって、海外ではワクチンメーカーがワクチン製造から撤退し、供給量が足りなくなった。
「米はVICPシステムを作った。規定、クリアカットになっているのと。原資はワクチンを打つ費用に75セントくらい乗っけられている。日本は国が救済する形なのでなんとなく国が悪さしたみたいな感じになってしまう。副反応がゼロのワクチンや医療行為はない。保障の仕組みを変える必要。米ではワクチンは製薬会社の有益な収益源。それによってヒブや髄膜炎ワクチン、肺炎ワクチン、ロタ、HPVワクチンができた。利潤を追求する正当な権利がある。その結果として、我々が恩恵を受けている部分はあるのでそれを悪として陰謀論で片付けてしまうのはわかりやすい。そういうのでなくて日本のワクチンメーカーは脆弱。日本の製薬会社はワクチンを作っていない。財団法人、厚労省から補助金もらってつくる。これが訴訟でさらに減ってしまうのはよくない」(久住氏)
 
根強い陰謀論についても話題に。
 
Q:国と製薬会社と政治家が結託という陰謀論があり、ワクチンは人口を減らす陰謀だというトンでも説も流布されているが
「ワクチンにお金を出したことで陰謀論はビルゲイツが原因とされてしまっている。陰謀論の人たちはワクチンなら女性を取り込めるということで。今の陰謀論の巨悪とされているのはジェフ・ベソス。ベソスがワクチンについて話すと人口を減らす陰謀だと」(ナカイ氏)
「ビルゲイツが奥さんのメリンダさんと財団作ってワクチン供給の発展途上国へ無償の慈善事業をしたところ『見返り無しのことはするわけない、人口減らそうとしている』という陰謀論になった。ビルゲイツは『世界の人口が増えすぎて子供たちがどんどん生まれて、ケアを受けてないのに、どんどん生まれてしまうのは問題だ。僕はそれを減らしたいと思う。ワクチンと教育をうまく使えばこどもが生まれ過ぎることをやめさせることができると思うよ』と言ってるだけ。それの『それ』が違う」(森戸氏)
 
Q:ワクチンの有用性有益性を伝えるには?
「体験談をいっぱい」(森戸氏)
「今はネガティブ情報ばかりなのでそれを越す勢いで普通の当たり前のまともな情報をどんどん出す必要がある」(ナカイ氏)
久住「厚労省のHPが問題。URL長すぎ。もっとシンプルにリーチしやすくなるのが必要」(久住氏)
「(厚労省のHPは)検索がしづらい」(森戸氏)
「ツイッターをデータ解析した坪倉ドクターによると、原発、放射能関連のデマで大切なのはあとからオーソリティがちゃんとした見解を述べるよりはすぐに打ち返す必要があるという解析結果。すぐに打ち返す必要がある」(久住氏)
久住氏も連絡会事務局長の市議のツイートをすぐに撃ち落としている。
「迎撃ミサイルです(笑)、パトリオット。カウンターの情報として情報伝達はHP、インスタ、ツイッター、マルチチャンネルで『どこに行ってもワクチンの情報あるよね』という方がいい。反ワクチンがインスタに流れている」(久住氏)
「今、主戦場はインスタ。ツイッターはオーソリティでなくてもすぐに叩くので」(ナカイ)
「厚労省もワクチンについてインスタにアップすべき。アカウントで医療者を名乗って医学的に誤っていることを言っている人に対して、これこそが医療審議会で取り上げるべき話。医師会なども組織として有機的に動いていない」(久住氏)
 
Q:補償について
「ワクチンで何かあった時に厚労省のHPでどこを見ればいいか全然判らない。インフルなどの任意接種は予防接種法ではなく厚労省の下部団体の医薬品医療機器総合機構法PMDAの保障になるが、そこの区別も判らない。情報へのリーチも悪い。そこが誤解を招く原因にもなっている」(久住氏)
「反ワクチンの人は副反応の悪い話はしても、じゃあワクチンをやめて病気になったらどうするのという話はしない、それをもっとするべき」(ナカイ)
「責任はワクチンを実施している自治体が予防接種賠償責任保険に入っているから。『私は正しいことをやるべきだと言っているだけで責任取るのは私ではない』という当たり前の回答でいい」(久住氏)
 
公衆衛生学の研究者からは「何故ワクチンを打ってないというと4割が忙しくて忘れてたなど機会を逃してる。これは不幸な話である」との指摘。
 
Q:ワクチン接種を受けない実数は?
「受けに来ない方は反医療でもあるので判らない、ネグレクトに近い家庭もある。余裕が無いという家庭も」(森戸氏)
親の状況によって子どもが健康被害に遭うリスクが高まるのは不幸なことである。
「親の思想は親の思想でいいのだが、そのリスクは子供に来る」(森戸)
 
自治体のデータ管理や共有についても厳しい意見が出た。
「ワクチン接種率の高低について自治体はデータを持っていない。母子手帳以外に公的機関が皆さんの予防接種歴を持っていない」(久住)
「麻疹はある、自治体ごとに」(森戸氏)
「確かに台帳はあるが、ただし子どもが転入したり転出するともう、ワクチン接種は基本、自治体・市区町村の役目なのでもう判らない。予防接種の記録の管理とマイナンバーカードとセットにして、それが何十年か前にあれば風疹を打った打たない受けた方いいなどとの騒ぎにならない。デジタルデータとして管理してもらった方がいい」(久住氏)
 
「反ワクチン」という言葉について、「ためらっている人、いろいろな理由で戸惑っている人を『反~』というのは反日みたいに一方的に決めつけすぎではないか?」との質問が飛んだ。
企画側としては悩んでいる親を貶める意図はないが、どうやって医学的に正しい知識を届けるかを考えた時に、惹起するためイベントタイトルを反ワクチンにした経緯がある。
「絶対的反ワクチンと穏健派反ワクチンとか。今日(スライドに)登場した人は反ワクチンと言われて批判の対象となっても仕方ない。一方で迷っている人を我々が反ワクチンと名付けて向こう側に遠ざけていることがあるとしたら我々は反省しなければいけないし、決してそういう意図はないので胸襟を開いて是非相談にきてほしい」(久住氏)
インフルエンサーになってしまっていたらそれは反ワクチンと呼ばれても仕方ないことだと思う。
 

父親の存在について

「私のクリニックに来て相談してくるのはほとんどがお母さんなんです。どうしてお父さんは何にも言わないんだろう。どう言ってるの? と訊くと『君の好きにしていいよ』と、あれ? 二人の子じゃないのと。お父さんは子どもをお母さんの付属物として考えているのかなと。自分で調べて自分で聞きに来られて泣かれたりする、大変ですねと。(父親には)当事者意識がない。一緒に考えてほしいです」(森戸氏)
この日は平日の夜の開催ということで父親にも来てほしいという意図があった。
産婦人科医 「ここで話しているのは迷っている人をそっちに行かないための方策、行っちゃった人は無理。悪いことを言う人は叩かないと。反ワクチンは引き込もうとする人を言う言葉」
 
Q:「ワクチンヘジタント」について
「アメリカではワクチンヘジタントというワクチン躊躇派みたいな呼称がある」(ナカイ氏)
「看護師にワクチン嫌だという人が多い。患者に身近だから影響受けているのでは」(ナカイ氏)
「快適・非快適はエビデンスではない。感覚的な部分。医療も実はまだエビデンスで言えることはまだホントに少ないが、ワクチンはかなりエビデンスがあるものだから活かしていただきたい」(久住氏)
 
Q:はしかポリス氏からは「ワクチン寄付したい、ワクチンギフトしをたいとの提案があった。
「あったらいいなと思っている。税制上メリットのあるNPOに寄付してナビタスクリニックが実務を行うなど」(久住)
 
3/10にゲスト出演する風疹サバイバー風見サクラコさんは会場からこう語った。
「(ツイッターで)ワクチンの売人と言われた。先天性風疹症候群(CRS)で生まれ実際の障害を持っている。反ワクチンの人は風疹のことを直視していない。情報提供、安心して打てる環境を」

出演者から

「ワクチンに関しては向こうの言っていることには論理的な誤りがあるので最終的に人格攻撃とか人格破壊になる。言われた方は不快。そういう活動は彼らの支持者を決して増やしていない」「(風見サクラコさんは)CRSでありながら、ホントにこういう当事者でありながら自分と同じような人を出さないために活動されていることは尊いことだと思いますし、そういう方が頑張っているということを我々医療者としては決して一人だけ置き去りにしてはならないと思っています。(久住氏)
「迷っている人を呼ぶ言葉・ワクチンヘジタント、敵味方ということではなく、呼び名を知ることをできてよかった」(森戸氏)
「ワクチンは感染症の問題。子宮頸がんもウイルス感染症。感染症そのものに関心を持ってほしい」(ナカイ氏)
 
イベントを通して感じたのは、専門家の持つ知見の説得力と真摯な思いだ。筆者は日頃、カルトの2世問題の取材をしているが、ホメオパシー助産師によるビタミンK2シロップ不投与事件やインシュリン非接種による小児糖尿病少女死亡事件など「反医療」によって子供が被害を受けることは看過できない。
 
内容が盛り沢山となってしまったため代替医療やがん治療にまつわるインチキ療法の話題などには進めなかったが、次回は信仰療法の問題や感染症の問題により深く踏み込んでみたい。第2回イベントは日曜の昼間開催なので、ぜひ若い親も子供連れで来てほしい。

Live Info.

2019年3月10日(日)昼の部 接種ためらいペアレンツ大歓迎! ワクチン安心講座

OPEN 11:30 / START 12:30
前売¥2000 / 当日¥2500(※要1オーダー¥500以上)
※前売はイープラスにて発売中!
【出演】
鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)
久住英二(ナビタスクリニック理事長)
ナカイサヤカ(翻訳家)
堀成美(感染症対策コンサルタント)
風見サクラコ(先天性風疹症候群サバイバー)
 
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