今はバンドが純粋に楽しい
──昭和感を直接知らないERYさんは、そのニュアンスを当てに行く感じですか。
ERY:歌謡曲はもともと好きなんですけど、私がドンピシャで知ってるのは平成初期の歌謡曲というかJ-POPなんですよ。私が知ってるその辺の曲も20代の子たちは知らないでしょうね。
宙也:今や“平成レトロ”っていうトレンドがあるもんね。
ERY:そうなんです。だから私は三人が基準とする歌謡曲よりちょい後なんですけど、特に背伸びする必要もないのかなって。共通言語として完全に理解する状態よりも、通ってきた音楽体験がちょっと違うくらいがエッセンスとしてちょうどいいのかなと思うんです。
──他の三人との感覚の誤差が予想外の変化や展開を生むこともあるでしょうしね。次作ではレイコさんがメインボーカルを務める曲を期待しても良いですか。
レイコ:いやいや、立派なボーカリストがちゃんといらっしゃいますから(笑)。
秀樹:もう次作のコンセプトは頭の中にあるし、レイコさんに唄ってほしい曲調もアイディアとしてすでにあります。
──どんな感じですか。
秀樹:テクノポップです。
レイコ:ええ〜ッ?!(笑)
秀樹:それもオケをバックに一人で唄ってもらう。ちゃんと振付ありで(笑)。
ERY:もはやバンドですらないっていう(笑)。
宙也:ライブは全員引っ込んで? いいね(笑)。
秀樹:“COPY, COPY......”みたいな。
宙也:ああ、プラスチックスね(笑)。
──ロックとテクノの融合はファロキならありかもしれませんね。「Poison Chocolate」の語りの部分は「ユー・メイ・ドリーム」を彷彿とさせる感じもありましたし、細野晴臣さんがプロデュースしたシーナ&ロケッツの『真空パック』をお手本にしたりして。
宙也:ファロキにはそれくらいの引き出しがいっぱいあるからね。さっきも言ったけど、バンドに対する固定観念なんてとうにないから。
秀樹:もっと言えば、新たなテクノロジーとか最新型の音楽的要素を取り入れようっていう気持ちがさらさらない。でもそれは懐古主義に走るって意味じゃないんです。
──前作『META浪漫SONIC』という作品自体がメタ構造だったと言うか、宙也さんがやってきたバンドの楽曲やアルバムのタイトルを意図的に歌詞に散りばめたり、ある種、人生の集大成と言っても過言ではない作品だったと思うんです。そうした作品を通過した以上、バンドとしていよいよ何でもありになってきた感じですよね。
宙也:うん。メロディにしても歌詞にしてもリズムにしても、ぽろっと出てきたものに対して「でもこれは前にもやったしな」なんて考えても仕方ないし、それをそのまま活かすしかない。いちリスナーとしてはいまだにもっと新しい音楽に触れたいという思いで貪欲に聴き漁ってるし、サブスクのおかげで80年代と同じくらいにいろんな音楽を聴いて新鮮な出会いもある。その中で嫉妬心を覚える若いバンドもいくつかある。でもね、若い才能に悔しさを感じて足掻いていたのはせいぜい40代まで。50代になって秀樹とまたバンドをやり始めてからは自分が背負い続けてきたものを炙り出すしかないし、レイコとERYのおかげで刺激的なリズムがフレッシュに返ってくるからさ。
レイコ:今のファロキは、秀樹君が楽しそうな感じが新曲から伝わってくるんだよね。今度はこんなことをやってみようとか思いながら楽しんでいるんだろうなって。
秀樹:楽しいですよ。打てば響くし、温泉の源泉みたいなものですね。アイディアが枯れることがない(笑)。
レイコ:ちょっと話がずれるけどいいですか。『ペーパー・ハウス・コリア』っていう韓国ドラマの冒頭で、黄色と緑のウィッグを被ってサングラスをした女の子二人がライフルを持って乗り込んでいくシーンがあるんですけど、あれをERYと私でやりたい。「Hasta La Vista, Baby」っていうファロキの未発表曲があって、そのMVをそんなふうに撮りたい。
ERY:それ、前も言ってましたよね。そういう録ってないしライブでもやってない曲があるんです。
宙也:次々とアイディアは出てくるけど、取りこぼしたものを忘れがちだね(笑)。
──「KOSMOTOKIO』のMVでも監督を務めた諸沢利彦さんにお願いして、劇映画を先行で製作するのはどうですか。そのサウンドトラックを後で発売して。
宙也:それもいいね。ファロキなら何でもできるよ。なぜならみんなが楽しんでいるから。秀樹も言うように、バンドはとにかく楽しいのが一番。80年代に自分がバンドを始めた頃は、バンドをただ楽しむ人たちに違和感を覚えていた。他のバンドはもちろん、同じバンドのメンバーに対する敵対心もあったしね。
レイコ:凄くよくわかる。バンドは笑わなくてなんぼみたいなところもあったから。
宙也:そう、それが格好いいと思ってた。そういう心境の変化を、このあいだ『DRIVE FROM 80s』に“LIZARD Tribute Band 2026”の一員として出演して思い出した。メンバーの顔ぶれを見渡して、昔はこの人たちも楽しそうじゃなかったじゃん、って(笑)。でも今はバンドを純粋に楽しんでるし、みんなに唄ってもらえる歌詞を作りたい。これからも四者四様の宇宙を更新し続けながらバンドを楽しみたいね。
















