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INTERVIEW

トップインタビューKERA - 有頂天、ソロユニット、Broken Flowersという3本のライブで俯瞰できる音楽活動の現在地

有頂天、ソロユニット、Broken Flowersという3本のライブで俯瞰できる音楽活動の現在地

2026.05.18

RCサクセションが『RHAPSODY』を出したときのように

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▲KERA & Broken Flowers『Road to psychedelic』(ナゴムレコード|2026年1月21日)​

──瓢箪から駒といいますか、いわゆるスーパーバンド的な面子が結果的に揃いましたね。

KERA:シンセサイザーズの正式メンバーにならないかとずっとお誘いしてたひさ子ちゃんが遂に了承してくれたのは大きいです。俄然モチベーションが上がった。それでベースにかわいしのぶちゃん、サックスに僕のソロでも吹いてもらってたハラナツコちゃんを誘った。ドラムはシンセサイザーズから続いてREIKO、シンセは杉山。この上ないメンバーが集まってくれました。早速、なにか名刺代りの作品を発表したいと思ったものの、みんな忙しくてなかなか集まれず、ライブをやるのが精一杯で、作品をつくるだけの時間が取れない。それならRCサクセションの『RHAPSODY』みたいな感じで、まずはライブアルバムを出そうと。仕切り直し感という意味でも『RHAPSODY』と共通してたしね。

──『RHAPSODY』はRCサクセションがアコースティック編成からロックバンドへと蘇生したことを知らしめた、バンドにとってターニングポイントといえる作品でしたからね。

KERA:ライブはとてもいいんですよ。圧倒的です。ラママで2回、クアトロで1回やったBroken Flowersのワンマンライブのテイクを若干いじって2枚組のアルバムを作っちゃおうと。それが1月にリリースされた『Road to psychedelic』です。なんというか、Broken Flowersは日に日にバンドっぽくなってきているのが嬉しい。
 バンドにしろユニットにしろ、その在り方や作品づくりの向き合い方、ライブの臨み方が、それぞれ全然違って面白いですよ。慶一さんとのNo Lie-Senseは二人だから、飲み会の延長みたいな感じで煙草を吸いながら物事をどんどん決めていける(笑)。有頂天はあまり言葉を費やさなくても、これまで培ってきたものがあるから通じるんです。「有頂天においてそれはナシ」みたいな、流儀の共通認識がある。で、たまに「ナシだったことを、今回はあえてやってみない?」みたいなことも提案し合える。わかりやすいんです。
 そういった意味ではBroken Flowersは共通認識がまだまだ足りない。シンセサイザーズの延長で始まったとは言え、シンセサイザーズの流儀を引きづるのはつまらないですからね。
 そう言えば、昨年末に三浦をゲストに迎えたライブのリハをやったとき、彼が「メンバー全員がこんなに意見を言い合うバンドは見たことない」とびっくりしてました。たしかに全員がいろんな方向からいろんなことを言うんですよ。時にはそれで収拾がつかなくなったりもするけど、それでもめげずに意見を言い合う。そこが凄くバンドっぽい。ですから、僕自身の要素は6分の1、もうちょっとあるかもしれないけど、民主的なバンドです。自分にない要素もOKにできるのはメンバーを信頼してるからこそだと思う。

──Broken Flowersは、dipのヤマジカズヒデさんをプロデューサーに迎えてスタジオ作品の制作に入っているそうですね。

KERA:2曲収録のシングルを作ろうとしています。ドーナツ盤。6月の頭にリズム録りするのも決まって、面白いことになりそうです。まだ見えないことが多いだけに面白いですね。どこへ行くのかわからない面白さがある。

──シンセサイザーズにおける三浦さんのような立ち位置の方は、Broken Flowersではどなたなんですか。

KERA:バンマス不在なんです。「こっちへ向かおう」と指示棒を振るのは、今のところ一応僕だけど、基本全員の合議で決めてます。

──ヤマジさんとひさ子さんは何度も共演しているので納得なのですが、KERAさんとヤマジさんに接点があったのは意外でした。

KERA:ナゴムレコードでリリースしたアルルカンというバンドがいて、そのボーカルの本橋ソイネがdipのマネージャーをやってたんです。ヤマジは木魚の連中とも仲が良かったし、わりとナゴム周辺をうろうろしていたんですよ。ただ彼は一貫してシリアスな手つきの音楽をやっていたので、僕のライブにゲストで呼ぶ発想はなかったし、ましてや一緒にバンドを組もうみたいな声がけもしなかった。連絡を取るようになったのはここ5年くらいかな。
 ヤマジのギターって、ひさ子ちゃんがBroken Flowersのメンバーになってから凄く親和性が高い。いまBroken Flowersが目指してるニューウェイヴっぽさの残るサイケデリックロックという音楽には、メンバーよりもヤマジ、彼の友人であるギタリストの田端満のほうが精通してるし、彼らにいろいろと教えてもらっているところです。自分としては『原色』(1988年3月発表)のときに秋元康さんにプロデュースされて以来、素材に徹してみようっていうか。何十曲ものデモをヤマジに渡して、その中から彼に2曲選んでもらって、アレンジのアイディアも任せてます。ヤマジも弾きたいっていうので、じゃあ弾いてってことで。ヤマジとひさ子ちゃんのツインギターが聴ける貴重な音源になるんじゃないかな。

かつてニューウェイヴに求めていたものがサイケデリックロックにはある

──ニューウェイヴを出自とするKERAさんが「Broken Flowersはサイケデリックロックバンドである」と明言していたのが少し意外だったんですよね。そもそも前身のシンセサイザーズは80年代ニューウェイヴの復権を目指して結成されたバンドだったわけですし。

KERA:もはや、ニューウェイヴというお皿の上で自分にとって鮮度の高いことを探すのって難しいんですよ。興味の持てる範疇にあるニューウェイヴはもうやり尽くしてしまった感がある。気をつけないと、自己模倣か縮小再生産になりがちで。有頂天でやってきたことをこのバンドでまたやってもしょうがないし、とくに田渕、かわい、ハラという3人から出てくるものってニューウェイヴの枠に収まらないものだから、僕の頭の中だけで考えてちゃもったいないっていう気持ちが大きいんです。その一方で、No Lie-Senseの活動の中、慶一さんに教えてもらった知識をフィードバックさせたい気持ちもある。
 1967、8年のサイケデリックロックについて、いろいろと教えてもらったんですよ。僕は80年代には「ロックはうるさいから嫌いだ。とくにメタルは嫌いだ」と言い続けていて(笑)、そもそもエレキギターの音が好きじゃなかった。それがどういう風の吹き回しか、2010年代にはソニックユースを聴いたり、すっかりギターが好きになっていて。考えてみれば慶一さんにいろいろと教えてもらったことが大きいんです。ビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』は聴いてたけど、それまで聴いたことのなかったローリング・ストーンズの『Their Satanic Majesties Request』を聴いてみたり。あと、シド・バレット在籍時のピンク・フロイドのアルバム(『The Piper at the Gates of Dawn』)とか、彼の2枚のソロアルバム(『The Madcap Laughs』、『Barrett』)とか。そういうサイケデリックロック全盛時の音楽が自分にとっては新鮮で、ヘンテコで面白かった。ブレイクがやたら多かったり、妙なコード進行だったり、妙な楽器で妙な演奏をしていたり。かつて自分がニューウェイヴに求めていたものが、その時代のサイケ・ロックにあるように感じたんですね。

──慶一さんから得た知識が、いちリスナーとしての転機になったと。

KERA:ええ。そこから派生して、ろくに聴いたことのなかった音楽、日本でいえばゆらゆら帝国とかを聴いたりしてね。坂本慎太郎くんはニューウェイヴやパンクを通ってないみたいだけど、既存の枠に収まらない過剰な、あるいは大きく欠落した何かがある。それでも平然と表現に向かう。面白い人ですよね。どこまで自覚的なのかはわからないけれども。
 サイケデリックロックの精神性みたいなものを僕は面白く感じたし、それでシンセサイザーズの最後のアルバム『BROKEN FLOWER』ではサイケデリックロックのスピリットを導入すべきだとメンバーに伝えたんですよ。三浦なき後に。

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▲ケラ&ザ・シンセサイザーズ『BROKEN FLOWER』(ナゴム・レコード|2015年6月17日)

──『BROKEN FLOWER』は三浦さん不在なのに、三浦さんが作曲を手がけた「シャープさんフラットさん」「BROKEN FLOWERS」「ネズミは沈みかかった船を見捨てる」がいずれも名曲でその存在感が際立っていて、なんというか不思議な成り立ちのアルバムだと思うのですが、紛うことなき傑作ですよね。

KERA:まさに、その3曲は名曲だと思う。あれは奇跡的なアルバムですよ。三浦のソングライティングってやっぱり抜群なんです。あの3曲を超える曲を作るのがBROKEN FLOWERSの一つの指標ですね。あの突然の脱退を水に流すことは絶対にないけど(笑)、今後も三浦に楽曲提供だけ頼むとか、そういうのはアリじゃないかと今でも思ってるんです。

──でも、三浦さんの還暦ライブにはKERAさんもゲスト出演してくださいましたよね(2024年8月24日に新宿ロフトで行なわれた『三浦俊一 還暦がやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ!』)。

KERA:許せないのは脱退の仕方だけだから(笑)。あとは全然仲良しなので。彼はミュージシャンとして独自の才能を持ってるし、応援したいし、同士だと思ってます。

──三浦さんの還暦ライブの開催前にインタビューさせてもらった際、「KERAさんがまだ怒っていなければ、もう1枚くらいアルバムを作りたいですね」と話していましたが、KERAさんとしてはどうなんでしょうか。

KERA:そんなこと言ってたの?(笑) まあ、Broken Flowersに戻ってきてもらうのはあり得ないですね。ただ、三浦とまた作品をレコーディングするのは全然OK。彼がシンセサイザーズを脱退する間際だったかな、「いつか自分と中野テルヲとKERAさんでやるのもいいんじゃないか」みたいなことを三浦が話していたのを覚えてるんですよ。そういう作品をつくりたい意向が2013年頃はあったのかもしれない。名義はともかく、三浦と、もしかしたら中野くんとも、なにか1枚、まとまった作品を作るのは面白いかもしれないですね。時間が許すならば。

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LIVE INFOライブ情報

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SHINJUKU LOFT 50th ANNIVERSARY
有頂天ワンマンライブ『What we called NEW WAVE』
【出演】有頂天
【日程】2026年5月19日(火)
【時間】開場18:15 / 開演19:00
【料金】前売¥6,000 / 当日¥6,500(共にドリンク代別¥600)
*チケットは、ぴあ(Pコード:322-964)、ローソン(Lコード:76362)、イープラスで発売中
【会場・問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
 

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KERA solo unit ワンマンライブ
【出演】KERA(Vo.)/ 伏見蛍(G.) / 坂出雅海(B.)/ 佐藤真也(P. Key.)/ 佐久間亮(Ds.)/ 岩出拓十郎(G.)
【ゲスト】カジヒデキ
【日程】2026年6月18日(木)
【時間】開場18:45 / 開演19:30
【料金】前売自由席¥6,800・立見¥4,800 / 当日立見¥5,800(共にドリンク代別¥600)
*チケットは、ぴあ(Pコード:326-168)、ローソン(Lコード:73940)、イープラス新宿LOFT店頭で発売中(新宿LOFT店頭は立ち見チケットのみ)
【会場・問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
 

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KERA & Broken Flowers ワンマンライブ 2026 summer
【出演】KERA & Broken Flowers:KERA(Vo.)/ 田渕ひさ子(G.)/ かわいしのぶ(B.)/ ハラナツコ(Sax. Accordion. Flute)/ REIKO(Ds.)/ 杉山ケイティ(Key.)
【日程】2026年7月15日(水)
【時間】開場18:15 / 開演19:00
【料金】前売¥6,000 / 当日¥6,500(共にドリンク代別¥600)
*チケットは、ぴあ(Pコード:328-277)、ローソン(Lコード:72898)、イープラス新宿LOFT店頭で5月23日(土)午前10時より発売
【会場・問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
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