Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューKERA - 有頂天、ソロユニット、Broken Flowersという3本のライブで俯瞰できる音楽活動の現在地

有頂天、ソロユニット、Broken Flowersという3本のライブで俯瞰できる音楽活動の現在地

2026.05.18

 劇作家、演出家、ナイロン100℃・ケムリ研究室・KERA MAP主宰として多彩な活動を絶えず繰り広げるケラリーノ・サンドロヴィッチだが、KERAと称した音楽家としての一面も決して疎かにはしていない。それどころか、50歳を迎えた2013年以降は従来のケラ&シンセサイザーズに加えてムーンライダーズの鈴木慶一とのNo Lie-Senseを始動、翌年には有頂天を再結成、ジャズマンだった父親へ捧げたジャズアルバム『Brown, White & Black』を筆頭にソロ作品でも数々の名作を矢継ぎ早に発表し、2022年にはシンセサイザーズを発展させたKERA & Broken Flowersの活動に着手するなど、精力的という言葉では到底追いつかぬ八面六臂の活躍をたゆみなく続けている。むろんその合間には劇作家、舞台演出家としての従事が途切れなくあるわけで、常に表現と対峙する創造性と活力の維持は驚嘆すべきものだ。
 そんなKERAのミュージシャンとしての最前線──有頂天、ソロユニット、Broken Flowersと、オープン50周年を迎える新宿ロフトで行なわれる3カ月連続のワンマンライブを体感することで、KERAの音楽家としての真骨頂、唄い手としての手腕と高いショーマンシップを十二分に堪能できるだろう。有頂天のワンマン開催の6日前、新宿ロフトの楽屋でKERAに話を訊いた。(Interview:椎名宗之)

コロナ禍でできることを模索して生まれた『まるで世界』

──KERA & Broken Flowersの2枚組ライブアルバムにしてファーストアルバム『Road to psychedelic』(2026年1月発表)、有頂天の約9年ぶりとなるフルアルバム『コボレナイ』(2026年2月発表)と年初から新作のリリースが相次いでいますが、遡ればソロアルバム『LANDSCAPE』(2019年5月発表)以降、ソロ、バンド、ユニットとさまざまな形態でオリジナルアルバムをコンスタントに発表し続けていらっしゃいますね。リリースがなかったのは2024年くらいで。

KERA:そうなんですよ。めちゃくちゃコンスタントにリリースしてる。自分でも信じられない(笑)。物理的には演劇のために使ってる時間が圧倒的に長くて、その合間に音楽をやってるんだけど、気持ちの上では五分五分なんです。コロナ禍になって舞台の上演が軒並み中止になっちゃって、ライブも2020年の頃はおいそれとできない状況でした。その中でできることといえばレコーディングくらいかなと思って、『まるで世界』(2021年7月発表)というカバーアルバムを作ることにしたんです。

kera_marude.jpg

​▲KERA『まるで世界』(ナゴムレコード|2021年7月7日)

──鈴木慶一さんとのNo Lie-Senseのサードアルバム『駄々録〜Dadalogue』(2020年7月発表)もコロナ狂騒のさなかに発表されましたね。

KERA:あれはコロナが深刻化する直前にレコーディングを終えられたんです。2020年の3月、結果的に上演中止になってしまった『桜の園』(2025年に上演)という舞台の稽古をやっていたときに『駄々録〜Dadalogue』の最後の歌録りをしたので、よく覚えているんです。
 2013年に鈴木慶一さんと始めたNo Lie-Senseは、有難いことに、慶一さんが僕のスケジュールに合わせるように進めてくれて、これまでに、オリジナルアルバムを3枚、ライブアルバムを1枚、ミニアルバムを1枚と、結果5枚もの作品をリリースしています。自分としては、No Lie-Senseは空手バカボン級に独自性のある音楽をやってる自負があるし(笑)、もうちょっと世に広まってほしいですね。どうも趣味の延長でやってるように思われがちなのですが、まったく心外です(笑)。

NoLieSense3rd.jpg

▲No Lie-Sense『駄々録〜Dadalogue』(日本コロムビア|2020年7月29日)

──その肩の力の抜け具合が良い塩梅になっていると思いますが。

KERA:まあ、そうですね。No Lie-Senseではノベルティソングっぽい曲とか、ポップな現代音楽とか(笑)、非ロック的なものを主にやっていて、深いし面白いんですよ。自分で言うのもアレですけど、慶一さんと僕の組み合わせでないとできないこと、他の誰にもできない音楽をやってる。結成当初は、慶一さんにしてみれば、ムーンライダーズのサイドワークとして、ビートニクスと交互にやってるような感じだったと思います。ロックの文脈でつながっていた(高橋)幸宏さんとのユニットとは、好対照をなしていた。ところが23年に幸宏さんが亡くなってしまって……。

──慶一さんとP.K.O(Panta Keiichi Organization)をやっていたPANTAさんも残念なことに亡くなられて。

KERA:PANTAさん亡き後、録りきれなかった残り半分のP.K.Oのアルバムのレコーディングを託されて、慶一さんはそれこそ命懸けで取り組んでいる様子でした。P.K.OはNo Lie-Senseと同じくゴンドウトモヒコくんのスタジオで録っていたので、いろいろと話は聞いていました。
 それはさておき、『まるで世界』は当初作る予定のなかったアルバムだったんです。その年に4本やるはずだった舞台がコロナで1本しかできなくなってしまった。やれるのはレコーディングしかない。それも最小限に集まれる面子だけでやれることといえば、バンドではなくソロのレコーディングだろうと。でも曲もなかったし、それなら自分の好きな曲ばかりをセレクトしたカバー集にしようと。

──極めてパーソナルな作風だった『LANDSCAPE』に続いて『まるで世界』が出たことで、KERAさんの内面に焦点を当てる作品が図らずも続きましたね。

KERA:言われてみればね。いま思えば、リザード、コンクリーツ、プラスチックス、じゃがたらといった選曲は『ストリート・キングダム』を彷彿とさせる(笑)。

──コロナ禍で注目すべきは、従来の有観客ライブが徐々に再開されてきた頃にKERA & Broken Flowersが初ライブを行なったことですね(2022年6月24日に新宿ロフトで行なわれた『ケラリーノ・サンドロヴィッチ・ミューヂック・アワー 2022』に出演)。

KERA:Broken Flowersはシンセサイザーズの延長線上にあるバンドなんです。ロフトで『ミューヂック・アワー』を4日間やった翌年(2014年)、レコーディングの真っ最中に、ある晩、三浦俊一からメンバー全員へ向けて突然「私は今日でバンドを脱退しました」というメールが届きまして。ついさっきまでスタジオに一緒にいたのにですよ(笑)。何があったのかわからないけど、そんなこと、演劇の世界だったら絶対に許されないことです。
 僕はあの電撃脱退のことを死ぬまで言い続けてやろうと思ってるんだけど(笑)。まあ途方に暮れましたよ。まだギターが3曲くらいしか入ってなかったし、曲も足りてなかったし、どうしようってことになって。シンセサイザーズは三浦のリーダーバンドでしたからね。それまで舵取りは彼に任せていたので。まあ、それが重くなってしまってたのかなあ。
 それで急遽、レコーディングに8人のゲストギタリストを呼んで1、2曲ずつ弾いてもらいました。くるりの岸田繁くん、澄田健くん、ムーンライダーズの白井良明さん、POLYSICSのハヤシくん、メトロノームの小林写楽くん、なるけしんごくん、私のソロで今でも弾いてくれている伏見蛍くん、そして田渕ひさ子ちゃん。彼らのお陰でなんとかアルバムは完成に漕ぎ着けた。ただ、三浦がいなくなったとなれば、これはどこかで仕切り直しをしないと気持ちが悪いなという思いが常にあった。2018年までひさ子ちゃんや澄田くんや、有頂天のコウにサポートギタリストをお願いしながらライブをやってましたが。

──それがようやく、2023年にKERA & Broken Flowersとなったわけですね。

KERA:新しいバンドにして、僕以外のメンバーは全員女性にした。杉山圭一もこのバンドにおいては杉山ケイティという女性です。

このアーティストの関連記事

LIVE INFOライブ情報

5.19n_flyer3.6.jpg

SHINJUKU LOFT 50th ANNIVERSARY
有頂天ワンマンライブ『What we called NEW WAVE』
【出演】有頂天
【日程】2026年5月19日(火)
【時間】開場18:15 / 開演19:00
【料金】前売¥6,000 / 当日¥6,500(共にドリンク代別¥600)
*チケットは、ぴあ(Pコード:322-964)、ローソン(Lコード:76362)、イープラスで発売中
【会場・問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
 

6.18n_flyer.jpg

KERA solo unit ワンマンライブ
【出演】KERA(Vo.)/ 伏見蛍(G.) / 坂出雅海(B.)/ 佐藤真也(P. Key.)/ 佐久間亮(Ds.)/ 岩出拓十郎(G.)
【ゲスト】カジヒデキ
【日程】2026年6月18日(木)
【時間】開場18:45 / 開演19:30
【料金】前売自由席¥6,800・立見¥4,800 / 当日立見¥5,800(共にドリンク代別¥600)
*チケットは、ぴあ(Pコード:326-168)、ローソン(Lコード:73940)、イープラス新宿LOFT店頭で発売中(新宿LOFT店頭は立ち見チケットのみ)
【会場・問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
 

7.15n_flyer.jpg

KERA & Broken Flowers ワンマンライブ 2026 summer
【出演】KERA & Broken Flowers:KERA(Vo.)/ 田渕ひさ子(G.)/ かわいしのぶ(B.)/ ハラナツコ(Sax. Accordion. Flute)/ REIKO(Ds.)/ 杉山ケイティ(Key.)
【日程】2026年7月15日(水)
【時間】開場18:15 / 開演19:00
【料金】前売¥6,000 / 当日¥6,500(共にドリンク代別¥600)
*チケットは、ぴあ(Pコード:328-277)、ローソン(Lコード:72898)、イープラス新宿LOFT店頭で5月23日(土)午前10時より発売
【会場・問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻