現状を面白がり、苦境を打ち破る元気を忘れたくない
──いろいろと話を伺ってきましたが、No Lie-Senseと空手バカボンを除くKERAさんの音楽活動における現在地が新宿ロフトでの3本のライブで俯瞰できるといえそうですね。
KERA:Broken Flowersはとにかくメンバーが多忙なので頻繁にはライブができない。でもさっきも言ったように、どこへ行くかわからない面白さがあるんです。もの凄く意外な方向へ転がるかもしれないし、パッとなくなってしまうかもしれない。でもそれが面白い。現時点では最低でも年に2、3本はライブをやりたいと思ってるし、フルアルバムも作りたい意欲だけはあるんです。時間はかかるだろうけど、半分はライブ対応できる曲、もう半分はレコーディングならではの曲にしたい。それも年内に手をつけられればいいなと思ってます。
──Broken Flowersに関してKERAさんらしいなと感じたのは、「昨今はデータのやり取りでダビングを重ねてゆくやり方でアルバムを作ることも充分可能だが、そんなやり方では嫌なのだ。とくにこのバンドでは嫌だった」という『Road to psychedelic』発売に寄せた文章なんです。メンバー同士が直接顔を突き合わせるからこそ生まれる熱量、摩擦係数の高さで生じる苦労に勝る楽しさこそがバンドの醍醐味でしょうし、コスパやタイパを求めるならバンドほど不合理なものはないと思うんです。それでもKERAさんが40年以上にわたってバンドをやり続けるのはひとえに楽しいからなんだろうなと。
KERA:演劇もそうですけど、つくづくバンドの活動って無駄なことが多いですよね。音楽とは直接関係のない話もいっぱいしなきゃいけないし。だけどそうした非効率の中からしか生まれないものが確かにある。そういう営みも含めてバンドっていうかね。僕らはそういう世代なんですよ。お芝居もバンドも、みんなで集まって話し合ったり稽古しないと出来上がらないよねっていう感覚がある。若い人からすれば、なぜそんなにタイパ、コスパの悪いことをやってるんだろう? って感じるんだろうけど。もちろんレコーディングとかはテクノロジーの発達に伴って、昔に比べれば遥かに効率良くやれてるし、今は今で良い部分がありますけどね。
──先日、ケムリ研究室no.5『サボテンの微笑み』で慶一さんの芝居を堪能できましたが、No Lie-Senseのライブも期待したいところです。
KERA:今年はムーンライダーズが50周年なので、慶一さんが忙しくてちょっと稼働できないかな。そんな中『サボテンの微笑み』では随分と時間を戴いちゃったし。実を言うと一昨年にやったライブ(2024年3月31日、東京キネマ倶楽部)の出来が素晴らしく良くて、ライブアルバムとして出す計画があったんです。なんとなくリリースのタイミングを逸してしまった。高野寛がギターで、イトケンがドラム。ミックスまで済ませてあるので、それを出すタイミングでライブをぜひやりたいですね。来年早くにでも。
──今年50周年を迎える新宿ロフトへ何か注文はありますか。
KERA:チケットの前売状況をもっとまめに教えてほしい(笑)。せっつかないと教えてくれないからさ。クアトロとかは毎週水曜日に連絡をくれるし、それを受けて煽り方を変えたりするからね。それくらいかな。そうした細々としたやりにくさも含めて「ロフトでやってるんだな」っていう楽しさのほうが常に勝っているので、はい、うん、大丈夫ということにしておきます。祝・50周年!
──有頂天が1983年6月18日の昼公演に出演して以来、KERAさんとロフトは43年にわたる交流がありますし、今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
KERA:こちらこそ。コロナ禍以降、人々のライフスタイルが大きく変わってしまって、そこへ追い討ちをかけるように物価高が続いてるから、世の中大変ですよね。否応なしにライブハウスの集客にも影響は出ているでしょう。舞台はさらに深刻。バンドはハコさえあれば何とか成り立つけど、舞台は巨額が動いて製作陣が及び腰になるから。博打の規模がバンドとは桁違いなので。とにかくトランプと高市には一刻も早く権力の座から退いてもらわないと。このままいくとナフサどころの話じゃなく、みんな生きる活力を失くしちゃうよ。でも、ここで塞ぎ込んだら何もできなくなってしまうので、この現状を面白がる、っていうと不謹慎に思われるかもしれないけど、苦境のなか飄々と笑えるような心持ちは忘れたくないよね。それがナゴム魂です(笑)。それだけの元気を維持して、もう少しの間、音楽と演劇を続けていきたいです。















