ロックンロールとは嘘と知りながら楽しめるもの
──各々がファロキとして叶えたい直近の目標はありますか。
秀樹:個人的にはいつか野音でライブをやりたいですね。何かの節目としてやれたら嬉しいです。その前に今年のクリスマス・イヴに新高円寺のLOFT Xでワンマンがあるので、ぜひ来ていただければと。
ERY:私は海外遠征がしたいです。もともと海外旅行も好きだし、向こうの小っちゃいライブハウスを回るツアーでもいいから海外での公演をやってみたいです。趣味とリサーチを兼ねて各国のライブハウスをここ何年か視察していて、ニューヨークのダウンタウンのほうにあるパンク系のライブハウスがファロキに似合いそうだなと思ってるんですけどね。
秀樹:その前に国内のツアーをまずやりたいよね。
ERY:確かに。まだ都内と近郊でしかライブをやったことがないので。
レイコ:私はERYと被るけど、韓国に行きたいです。音楽的にも優れたバンドがけっこういるので。
宙也:俺はやっぱり、これまでの話の流れで行くと宇宙へ行くしかないよね?(笑) まあそれはともかく、今までやったことがないという意味ではオーケストラとの共演をいつか実現できればいいなと。せっかく「Godspeed U」みたいな曲もできたことだし、本物のストリングスを入れてライブをやりたい。オーケストラ・アレンジは敢えてしないで、俺たちはロック・バンドとしていつも通りのプレイをするだけっていうのがいい。
──実現するのを願っています。最後に、ジャケットに写るプラカードについて聞かせてください。宙也さんは“Strange Shooting Star”、秀樹さんは“sexy coconut”、ERYさんは“Chocolate junkie”、レイコさんは“Beat Princess”と書かれたプラカードをそれぞれ掲げていますが、これは各自が考案したネーミングなんですか。
ERY:はい、自己申告です。
レイコ:各々考えてきてくれと秀樹さんに言われて。
秀樹:デザイン案は僕で、4人それぞれがイメージする言葉を載せたいから書いてくれとお願いして。
宙也:俺は病院のベッドから送りました(笑)。
──“Strange Shooting Star”、“Chocolate junkie”、“Beat Princess”は分かるんですけど、“sexy coconut”だけ意味がよく分からなくて。
秀樹:かわいらしくていいじゃないですか(笑)。元はフランスの香水らしいんですよ。撮影してくれたのがヨアンというフランス出身のカメラマンで、「フランス人的に“sexy coconut”ってどうなの?」って訊いたら「かわいい感じ」って言ってました。ちょっと背伸びしたかわいい奴みたいな、若い子に向けて言う言葉みたいです。
レイコ:そういうちゃんとした意味があったんだ?(笑)
Photo by Yoan Clochon
──宙也さんの“Strange Shooting Star”というネーミングも宇宙的だし、先ほどからたびたび話題となっている宇宙が今作のテーマの一つという仮説を補完しているようにも感じるんですよね。
宙也:ああ、「愛のプロレタリア」に「この星のエビデンスさ」という台詞もあるしね。
レイコ:今回の作品は確かに宇宙っぽいのかも。“ギンガ”という言葉が随所に散りばめられていたからかな?
──最後の「Godspeed U」もどこかスペーシーな感触がありますしね。
レイコ:エンジニアさんもそんな感じで音を仕上げてくれましたし、宇宙的な何かがある気がします。
──じゃあやっぱり、4人で宇宙遠征ツアーをやるしかなさそうですね。
秀樹:そういうことですね、最終的には。
宙也:ディスタンスでリモートの時代だし、もはや宇宙でもライブできるんじゃない? 「ここは宇宙です」と嘘をついたっていいし、ロックンロールってもともとそんなものでしょ?
──そもそもロックンロールにはまがいものなりの良さ、プラスチック特有の鈍く儚い輝きにその魅力があったりしますからね。フィクションの世界をノンフィクションとして伝える醍醐味もありますし。
宙也:そうそう。嘘だと分かっていながら楽しいものだから。今の時代、みんな嘘か本当かの二元論で決めつけすぎだよね。何でもかんでも黒か白かに分けたがってグレーがない。嘘を嘘だと理解して楽しめるものっていっぱいあるはずだし、昔で言えばたとえば書き割りの月だとか、今で言えばCGだったりはニセモノかもしれないけど、映画という虚構の世界を理解した上でみんな楽しんでいる。ロックンロールも同じ虚構の世界だし、その意味でも俺はロックンロールを選んで良かったと思うよ。