さる7月2日(土)、新代田LIVE HOUSE FEVERにて自主企画『砂上の楼閣35』を開催し、およそ17年ぶりに活動再開を果たしたfOULが、ホームグラウンドだった下北沢SHELTERへ遂に帰ってくる。SHELTERのオープン31周年を迎える10月1日(土)、自主企画『砂上の楼閣36 〜スマートボーイ ミーツ フィーメール パンクス〜』を開催するのはご承知の通り(共演はMs.Machine、前売チケットは完売)。fOULが『砂上の楼閣』の基盤としていたSHELTERでライブを行なうのは"fOULの休憩"に入る前、2005年3月21日の『砂上の楼閣34 〜楼閣にとどろいて』以来、17年7カ月ぶり(余談だが、ぼくがfOULの3人にインタビューをするのは18年8カ月ぶりだ)。働きながらバンドを続けるスタンスで充実した音楽活動をマイペースに続けていたメンバー3人が、今このタイミングで敢えてfOULを蘇生させたのはなぜか。バンドの再始動に至る思いや葛藤とは一体どんなものだったのか。足元のおぼつかない再出発を果たした3人の"foul men"── 谷口健(vo, gt)、平松学(ba)、大地大介(ds)にこのまさかの大蘇生、再会再開という邂逅について大いに語ってもらった。(interview:椎名宗之)
まるで告白するかのように「fOULをやろう」と学に言った
──昨年(2021年)9月、大石規湖監督によるドキュメンタリー映画『fOUL』の公開初日の舞台挨拶で大地さんがfOULの活動再開を宣言してから1年が経過しましたが、fOULを再始動させようという意向は3人の中でいつ頃固まったんですか。
大地:具体的にこのタイミングで3人の足並みが揃ったという感じではなかったんですよ。きっとそれぞれきっかけはあったと思うんだけど、俺の場合は映画を製作するにあたって昔の映像を探し集めたときでした。PAの朋ちゃん(今井朋美)とブッチャーズの射守矢(雄)くんとで映像を持ち寄って飲んだことがあって、そのときに「fOULをやりたい」と話したんです。fOULもやるし、できたら射守矢くんとも一緒にバンドをやりたいと。まあ、酒の勢いもあって(笑)。
谷口:僕は映画の話をいただいた時点ではfOULをやる発想はありませんでした。BEYONDSが動いていたし、新作(『Serpentine』)のレコーディングもしていたし、早く録って出してリリース・ライブをやりたいと考えていたので。
大地:バンドを再開するにあたって、健ちゃんが学と話したことがあったよね?
平松:映画の公開初日に大地さんが「fOULをやります」と話したのを聞いたとき、俺はまだ半信半疑だったんです。本当にやるのかな? どうするんだろう? と思って、大地さんに連絡したんですよ。それで一度、リズム隊だけでスタジオに入って。それが去年の12月の話で。
大地:映画用のインタビューを3人個別に撮って、その試写をキングレコードの会議室で3人揃って観たんですけど、あのときに「またfOULをやりたい」という熱が若干上がらなかった?
平松:試写を観た後、キングの近くのコインパーキングでみんなで外飲みをしながら話して。コロナ禍で飲食店が閉まっていたから。
谷口:去年の夏だよね?
大地:そうそう。そもそも映画の撮影のためにFEVERで3人で集まって話したとき、またfOULをやろうという雰囲気を俺は出してたつもりだったんですよ。
平松:コインパーキングで飲んだとき、fOULをやる話になりませんでしたっけ? それで健ちゃんと握手した記憶もあるし。
谷口:それは新宿のスタジオで観た最終試写の後、スタジオのそばの駐車場だね。あのとき僕が学に、まるで告白するかのように「fOULをやろう」と言ったんです。具体的にいつからどんなふうに始めるかというヴィジョンはまだなかったけど、fOULの再結成をしたいという気持ちが自分の中で固まったので、学に伝えて握手を求めました。その少し前から僕と大介のあいだでfOULをやろうぜという話があったんですけど、何せBEYONDSをやっていたので。だからまず(中川)暁生くんとテッキン(工藤哲也)に僕らの意向を伝えることにしたんです。BEYONDSを休止したいと。
──映画の公開初日の舞台挨拶の後、劇場近くにあるリハーサルスタジオに3人で集まったじゃないですか。あれが久しぶりの3人揃ってのスタジオ入りだったんですか。
平松:そうです。3人で音を合わせたのは16年ぶりでした。
谷口:まさかのご対面だったよね。僕なんて16年間、一度もギターを弾いてなかったというのに。
──たまたま僕もその場に居合わせたんですが、大地さんと学さんはまるでブランクを感じさせないプレイでしたね。
谷口:学は射守矢くんと一緒にバンドをやっていて現役だし、学も大介もfOULの曲が身体に染みついているんだなと思いましたね。
大地:2人には言ってなかったけど、実はあのスタジオ入りは俺が計画してたの。舞台挨拶が終わってからキングレコードの人たちに「この後、スタジオ飲みしません?」と俺が提案して、(小声で)「そこで3人で音を出すように持っていきますから」と話したんです。
谷口:でも、いざそこで音を出したものの、またfOULをやるのはだいぶ厳しいかなと感じたんです。案の定、僕は全然弾けなかったので。
大地:確かにその時点でちゃんと練習しないとヤバいなとは思いました。その後に学と2人でスタジオに入ったのはそういう経緯もあったんです。まずわれわれがちゃんとプレイできるようにしようって。