「リズム隊がしっかりしていればいい」ではダメ
──fOULはそもそもギターをまるで弾けなかった健さんがギターを弾こうとしたバンドでしたし、またスタート地点に舞い戻ったとも言えたのでは?
大地:そういう感覚はなかったですね。何作もアルバムを出して、ちゃんとしたライブをずっとやれてたバンドだったから、その感覚が残ってたんです。だからゼロベースにはできなかったし、ちゃんとやれてた自分たちの演奏力を追っかけちゃうところがありました。これが全くの新曲をやるとなると話は変わるんだけど、かつてやってた曲をまたやりたいとなると、どうしても16年前の残像を追っかけてしまうと言うか。
谷口:今年の1月の頭に吉野(寿)くんと向井(秀徳)くんと飲んだとき、実はまだ僕はfOULを再開することに心からの踏ん切りがついていなかったんです。なぜならば自信がなかったし、本当にfOULをやれるだろうか? という思いがあったから。そのことを吉野くんと向井くんに話したら、「大丈夫、やれるよ。まずは弦を張り替えて弾いてみようよ」と彼らに背中を押されるようなことを言ってもらいまして。「ギターなんてどこを押さえたってどうにでも鳴るんだよ」なんて言われて(笑)。それからしばらくして、向井くんのライブに行ったんですよ。楽屋へ挨拶に行ったら彼と僕だけになって、「それで谷口さん、リッケンの弦はちゃんと張り替えたんですか?」と言われたんです。
大地:張り替えてなかったんだ?
谷口:張り替えようとはしていたよ(笑)。
──いい話ですね(笑)。現状、今年に入ってからは猛練習を重ねている感じですか。
大地:それぞれでやってるし、しっかり予約を入れて3人でスタジオに入ったのは今年の4月からです。今は週一ペースで練習してますね。週一で2時間、ライブ前だと3時間。個々人での課題はあるけど、全体的にはだいぶいいところまで来てると思います。ただ、健ちゃんがリセッターなんですよ。前の練習ではできてた曲が、次の練習でできなくなってたりする。反復練習が彼には必要だとここで強く言っておきたいですね(笑)。
──上手く弾けないのを逆手に取った独自チューニング、コードの押さえ方が健さんのギターの魅力であり特徴ですが、自身で考案した押さえ方はなかなか思い出せないものですか。
谷口:ずっと弾きながら探してると思い出します。すぐには出てきませんけど。
──学さんはどうですか。
平松:思い出せるものもあれば、音源をどれだけ聴いても思い出せないものもありますね。ライブでやろうって曲は必死に思い出してますけど(笑)。ただ、今なりのひらめきもあるし、リアレンジでやれるケースもあるし、それを楽しみながらやれています。
──さる7月2日には新代田FEVERにて『砂上の楼閣35』(ワンマン)が開催され、2005年の“休憩”から17年4カ月ぶりに復活を遂げたわけですが、セットリストはどう決めたんですか。
谷口:みんなのやりたい曲の候補を挙げて、そこから固めていきました。
大地:やりたい曲の違いはそれぞれあったけど、結果的に「やっぱりfOULと言えばこれでしょ?」という選曲になったと思います。セットリストを決め打ちして練習しないと間に合わないから、まずはできる曲を優先して決めていきましたね。
平松:できる曲と言うか、できそうな曲と言うか(笑)。それが最重要でした。
──たとえばこれはできるだろうと考えていたら上手くできなかった曲、あるいはその逆でできそうもないだろうと考えていたらできた曲などはありましたか。
大地:個人的な話で言うと、「フッサリアーナ」は思っていたよりもできなかったかな。自分の中では、ですけどね。最初に合わせたとき、曲も展開も「あれッ?!」と思った。
平松:「フッサリアーナ」はシンプルだけど難しい曲ですからね。
谷口:僕からすると、他の曲も全部難しいんだけど…(笑)。
平松:まあ、簡単な曲はないかもしれない(笑)。
谷口:リハを終えた学が「fOULの曲は全部難しいんですよ」とよく言うんですけど、僕とはちょっと感覚が違うんでしょうね。当時も今も。学の言う“難しい”と僕の“難しい”にはだいぶ落差があって、僕の“難しい”はかなりレベルが低いんです。
大地:そのレベルをもうちょっと上げてほしいね(笑)。「リズム隊がしっかりキメていればfOULはそれでいいじゃない?」って意見をよく聞きますけど、それじゃダメなんですよ。ここのボーカルやギターをちゃんと聴かせたいというポイントとなる箇所があるのに、そういうところに限って健ちゃんは間違えるんです(笑)。