京都を拠点に活動を続ける4人組パンク・バンド、おとぼけビ〜バ〜の最新アルバム『いてこまヒッツ』は、その猛烈なサウンドで世界中から熱いリアクションを引き起こしている。リリースに合わせてゴールデンウイークに行なわれたUKツアーは、軒並みソールドアウト。1,000人キャパのフロアを沸騰させたロンドン公演には、彼女たちのNo.1ファンを自認するドン・レッツ(※往年のクラッシュやスリッツにも関わったパンク・レジェンド)も足を運んだ。
最近では、ディスティラーズのブロディ・デイルが「新しいお気に入りバンド」だと紹介していたし、ちょっと「otoboke beaver」と検索すれば、ライブをしてきた英米のみならず、地球上のあちこちで「Don't Light My Fire」のビデオ(※YouTubeで再生10万回突破)にブッ飛ばされた人々が溢れ返る状況を目にするだろう。Spotifyでのストリーミングが100万を超えた事実を報告するインスタグラムには、アラン・ヨハネス(PJハーヴェイ/クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ他)も「いいね」をつけていた。『Pitchfork』や『WIRE』といった海外メディアにも高評価のレビューがずらずらと並ぶ。
もちろん、ここ日本でもアンテナの立ったリスナーの耳には届いており、どうやら事態を追えずにいるのは国内のマスコミだけらしい。そこで......というわけでもないのだが、今さらながらインタビューを決行。あの超個性的な音楽が一体どのようにして生まれるのかについてや、メンバー交代や海外遠征を経て充実度を増した現況などを語ってもらった。
今年後半に向けて、本国でのリリース・ツアーが終わる頃には、さらにとんでもないことになっているのは間違いないだろう。まずはその勇姿を、しかと目撃してほしい。(interview:鈴木喜之)
曲は毎回「なんでこの曲出来たんやろ?」みたいな
──『いてこまヒッツ』は、まずサウンド・プロダクション面で、音がとても良くなったという印象を持ったんですが、以前までのレコーディングと比べて、どんな点が変わりましたか?
あっこりんりん(ボーカル&ギター):エンジニアさんを変えたことですかね。もうちょっと強い印象にしたいなと思ってたところに、大阪のLMスタジオってとこで、少年ナイフとかハードコアとかやってるゴリゴリの方(※須田一平氏)がいるよって紹介していただいて。
よよよしえ(ギター&コーラス):そのエンジニアさんによると、以前の機材やスタジオの広さなどがちょっと向いてなかったみたいで、私たちが出したい音が出なかった。感覚の部分を相談できて答えを出してくれる、信頼の置ける人にお願いできたというのはデカい。
あっこりんりん:こうやるとこういう感じになる、こうやるとこういうバンドの定番の音やね、といろいろ提案していただけるエンジニアさんで、話が早かったですね。長丁場でも終始ニコニコして対応していただけたのも、妥協することなくこだわれたひとつだと思います。いろいろ思いつきで言ってしまうので(笑)。
ひろちゃん(ベース&コーラス):ミックスでパンの振り方とかも変わったんちゃうかな。あっちから出して、こっちから出してって。
──そうそう、「あなたわたし抱いたあとよめのめし」の〈セックス・しば漬け・ロックンロール!〉のところがスピーカーの左右に飛んで、オッ! となりました。
よよよしえ:(振るのは)前もやってたけどね。メリハリがしっかりついた音源になったと思います。
──確かに、前作『おこしやす!!』を聴き直したら、「悶々葛藤最前線 〜恋は命がけ〜」でも、そういう技を使ってましたね。今作のサウンドは、そういうところが、より効果的に伝わりやすくなったんじゃないでしょうか。
あっこりんりん:もともと、ほんま素人で、音のこと何もわからん状態でやってて、今もわかんないですけど、経験でちょっとずつ成長してきたんじゃないかと思います(笑)。
──ベースもバリバリっと前に出てきて存在感を増したというか、役割の大きさがいっそうハッキリわかるようになりましたね。
よよよしえ:低音めちゃくちゃ出したいってのが、ずっとあったんで。ドゥドゥードゥイドゥイいく感じの。
──ちなみに、曲はあっこりんりんさんが作っているわけですが、ベースのフレーズとかはどの程度まで考えてくるんですか?
あっこりんりん:いったん任して様子を見る!(笑)
ひろちゃん:曲によって、最初から出来てる時と、そうでない時があって。
あっこりんりん:そう、「脱・日陰の女」とかは私が全部作ってきた。
ひろちゃん:それをアレンジしていって。だいたい弾いて、「ここ違う、ここ違う」って修正してもらいながら。
──たとえば、「ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って」で〈ひとりきり…ひとりきり〉っていうところの、ドゥンドゥドゥドゥ…っていうベースとかは、どんな感じで出来たのでしょう?
あっこりんりん:あれは、歌に合わしてやってもらって。
ひろちゃん:もともと違う曲やったよね?
あっこりんりん:そうそう。イメージはあるんですけど、一旦やってもらって、それもいいな! ってなる時もあるんで。歌に合わせて! って言って、高いの? 低いの? とか訊かれてどっちもやってみて! 最初のほうが近い! とかクイズみたいにやってますね。
──作っている途中で、別の曲がくっついたりとかすることもあるんですね。
あっこりんりん:けっこう多いですよ。ぱん、ぱん、ぱんて、あるアイディアを合わして1個の曲にしたりとか。
──想像してみると、なかなか大変そうな作業ですよね。
あっこりんりん:いや、ほんまノリっていうか、だいたい作っていって(メンバーに)その場でイメージを伝えてアバウトにやりながら、やってもらったんを家でもう1回聴いて。「ここ気になるから直す」「ここに盛り上がりがほしい」みたいなのを、ひたすらやってく。
よよよしえ:他人の5倍はかかってると思います。
──3人にとっては、なかなかしんどい作業ですか?
よよよしえ:いや、しんどくはない。
ひろちゃん:面白いですね。そうなんだ、って言ってたのが、次の週になると全然変わっていたり(笑)。
あっこりんりん:そう(笑)、その時の私の気分で、止めたいとこが変わったりする。だから毎回ほんまに「なんでこの曲出来たんやろ?」みたいな。気分で作ってるんで、もう二度と作れないなっていうのが全部って感じです。