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INTERVIEW

トップインタビューおとぼけビ〜バ〜【後編】- 考えても考えてもライブより面白いことが思いつかない!

考えても考えてもライブより面白いことが思いつかない!

2020.04.29

 2020年の、おとぼけビ〜バ〜最新インタビュー後編は、今年に入ってからリリースされた「アイドンビリーブマイ母性」(ジャケットは、バンドのファンでもある中川ホメオパシー先生)と「ジジイis waiting for my reacrion」の2曲に加え、すでにライブで披露されている新曲について中心に語ってもらった。
 いずれも超強力な新曲群からは、さらに加速する勢い、広がる可能性、ブッとんだ表現力がビシビシと伝わってくるだけに、コロナ禍によって、2年連続3回目の出演となるはずだった『SXSW』や、凱旋公演となるはずだった東京2デイズが中止となり、その後の活動も予定が立たなくなってしまっている状況は、非常に歯痒いばかりだ。それでもスタジオ・ライブを生配信し、未だ彼女たちの生演奏を見る機会が持てなかった世界各地のファンを歓喜させたり、さらには交換日記形式でメンバーが書き綴る連載も開始されるなど、様々な企画が進められている。詳細は、バンドのツイッターやフェイスブックなど、SNSを通じて確認してほしい。
 本当なら彼女たちが、この夏から本格的に世界をまたにかけて活躍する姿を見られていたはずなのに......と思うと残念でたまらないが、事態が落ちついた際には、再び勇姿を見せてくれるに違いない。そう信じている。(interview:鈴木喜之/写真:Jumpei Yamada)

女性代表として代弁したい、共感してほしい気持ちはない

──「呼ばんといて喪女」に続いて、去年からライブで披露されていた新曲のうち2曲「アイドンビリーブマイ母性」と「ジジイis waiting for my reacrion」がリリースされています。個人的な経験を反映させて書いた曲だと思いますが、海外でも「現代社会で抑圧されている女性の心情」を表明した普遍的なテーマとして捉えられているように見えます。特にフェミニズム的な思想を意識しているわけではないとしても、自身の気持ちを歌にすると、そうした文脈で語られがちなことに関して、現在ではどう感じていますか?

あっこりんりん:今では好きなように取ってくれと思ってます。私も何も知らんかった頃、フェミニズムってうるさい女っていうイメージがあって、フェミニストって呼ばれるのが嫌でした。でも海外に出てフェミニズムのことをよく聞かれて、勉強するようになり、フェミニズムっていいことなんだと理解しました。

 私が個人的に唄ったことでも、ああ確かにこれは日本にこういう風潮があるからだったんだなとか、私だけじゃなくてみんなもこんな思いしてるんだなとか後で気づいたりもしました。だから今ではフェミニストと呼ばれるのは気にしてないです。これからも私は自分の個人的な気持ちで唄っていくつもりですし、女性代表として代弁したいとか共感してほしいという気持ちで唄うことはないです。でももし私の曲で誰かが勇気づけられたり、共感してくれるのならそれは嬉しいことです。実際、「アイドンビリーブマイ母性」は今までずっと思ってたことですがなかなか勇気が出なくて、いざ曲にしてみたら共感してくれる女の子がたくさんいて嬉しかったです。私自身がずっと戦っていることですが、負の感情を持つことや、怒ることは悪いことではないと伝えたい気持ちは芽生えているかもしれないです。

──英語の文法・発音などに関して、たとえ不正確でも構わないという姿勢を示す一方で、きちんと英語の歌詞対訳をつけていますが、欧米に限らず全世界から反響を得ている中、自分たちの歌詞について、どこまで説明したいと考えていますか?

あっこりんりん:何についての曲かくらいは知ったほうがより曲を面白く感じられるんじゃないかと思って英訳は出してます。海外でのライブでも曲名を言った時と、言わない時で全然反応が違います。文法や発音に対して気にしてないのは語呂とか、声に出して気持ちいいかなど音を最優先しているからです。

 ライブ中に意味を伝えたいとかは思ってなくて、なんとなく耳に残ることを考えてます。だから発音が難しい単語(カタカナ英語にするのが難しい単語)とかは使いません。めっちゃ発音小馬鹿にされてますけど、「アイヘイトユー」とかわかりやすいですよね。

ジジイの薦めてくるバンド一覧が特に見物のMV

──「ジジイ〜」のビデオクリップは、日本語バージョン/英語バージョンとも(※音源は同じ)に、ジジイから送られてくるメッセージの内容がリアルだと評判ですね。その他にも、様々な場所・様々な扮装で撮影されていて、とても楽しいものになっています。このビデオはどのようにして出来上がったのか、制作プロセスを教えてください。

あっこりんりん:このMVも「Don't light my fire」の監督のONIONSKINに頼んだのですが、まず曲を聴いてもらって、「女子高生になってもらいます!」という返事が来ました。えーっ! めっちゃ叩かれんじゃねと思ったのですが、内容を聞いてめっちゃ気に入りました。女子高生の衣装集めと着替えが一番時間かかったくらいで、あとは本当にあのMVの通りサクっと撮影しただけです。半日くらいで撮り終わりました。「Don't light my fire」のYouTubeのコメント欄からジジイっぽいクソリプを探すのが一番大変でした。ONIONSKINさんの尖ったセンスが共感しまくれるし、私たちのスタンスを説明せずとも理解してくれているのがアイデアから伝わるので信頼しています。MVでの変顔のシーンでも、「今の顔はあんまり面白くないっすね」とはっきり言ってくれるので(笑)。

よよよしえ:私たち(特にあっことよしえ)はかなり口うるさいタイプで、絵コンテとか来たら「いや〜、ここってどうなんすかね〜」みたいなことをグチグチ言うタイプなのですが(笑)、ONIONSKIN氏の案には一度もそういったことを言ったことがないくらい、とりあえず面白いand かっこいいand わかりやすいんですね。ほんとにセンスの塊です。

 ONIONSKIN氏を紹介してくれたのが長州ちからさんという方なのですが、高円寺でBar長州ちからというのをやってまして、そこのつながりで紹介していただいたのがきっかけです。ジジイの薦めてくるバンド一覧は特に見物だと思うのですが(私も相当気に入っています)、あの案もONIONSKINさん一人で作成しています(笑)。ジジイが薦めてきそうなニュアンスを完全に把握しているのがほんとに圧巻というかもう爆笑しました。英語ver.に関してはBar長州ちからでいつもお世話になっているお客さんに翻訳作業をしていただき、最終チェックをdamnably(私たちの所属するイギリスのインディレーベル)にお願いしました。Bar長州ちからチームの協力もあり、かなりスムーズに作成が進んだMVでした。

──その他にも「Why」、「あなたのポストに焼き鳥を入れたのは私です」、「穴兄弟で鍋パーティ」、「あなたとの恋、金にしてJASRAC」などの新曲に関して、レコーディングが着々と進められているようです。次のアルバムも含め、これからのリリース構想について聞かせてもらえますか?ライブ活動が制限されてきていますので、そのぶんレコーディングされた新曲を発表していくことになるかと思うのですが、ストリーミングやYouTube動画にどんどん出してしまうのでは、少しもったいないような気もしています。

あっこりんりん:当初の予定では、4月は私の手術で唄えないし、5月からまたしばらくは海外ツアーでレコーディングができないので、できてる曲からどんどん録ってしまおうという感じでした。まあ基本は大人の事情でアルバムで出さないといけないので、ちゃんとリリースするにはまだめちゃくちゃ曲を増やさないといけないです。MVがあればみんな見てくれるので撮影する時間があればサブスク限定でシングル・リリースも全然いいかなと思っていますが、今はMV撮影の目途も立っていないので…。「アイドンビリーブマイ母性」もお気に入りの曲なのですが、MVを撮る時間がなかったのであんまりみんな聴いてくれてなくて悲しいですね。ジャケだけでも豪華に!と念願の中川ホメオパシー先生に描いてもらいました。いつかMVも撮りたいです。

 日本ではYouTubeに出してしまうと売れないのでもったいぶりますが、海外ではどんどん無料でプロモーションしろ!(YouTubeで聴けても気に入ればちゃんと買ってくれる)という文化なので、そちらにあまり抵抗はなくなりました。

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間合いや抑揚はおとぼけビ〜バ〜の核となるもの

──レコーディングの様子をインスタグラムのストーリーを通じて拝見しました。印象深かったことの一つは、ボーカル/コーラス録りに関して、単に音程やリズム感といった要素だけでなく、間合いとか抑揚、さらに声色といった点をものすごく細かく考え詰めて録音を進めていたところです。ほとんど「演技の演出」に近いものを感じたりもするのですが、こうしたボーカル表現へのこだわりは、どのようにして極められてきたものなのでしょうか?

あっこりんりん:単純に私の頭の中にイメージがあって、私が気持ちいいかどうかで決めているので自分でもよくわからないです。ただイメージ通りやってもらってもなんか違うってなったり、たまたまやってもらったことがドンピシャだったりするのでバンドって面白いなと思います。でもほんまに演技の演出とか言われるほどじゃないし、恐れ多いです。メンバーでQUEENの『ボヘミアン・ラプソディ』爆音上映会を観に行ったのですが、レコーディングのシーンでコーラスを何度も録り直してるシーンを見て、「あ、全然甘かったわ、妥協せんとこ」ってなりました(笑)。間合いとか抑揚はおとぼけビ〜バ〜の核となるもので、曲作りもあんな感じで要求しています。

──「穴兄弟で鍋パーティ」は、どんな経験から考えついた曲なのでしょう。

あっこりんりん:図にすると、こんな感じです(相関図を書いて示す)。

──これは……公開してもいいのでしょうか(汗)。

あっこりんりん:揉め事が起こるかもしれないのでやめておきます!

──では、ポストに焼き鳥を入れるという内容は、どのようにして思い浮かんだのでしょう?

あっこりんりん:どこかの層をターゲットにしてる、ウケ狙ってる曲ってちょっとわかるんで、そういう曲をたぶん聴いたんやと思うんですよね、その時。誰かは忘れました。ほんでそんなんがええなら私も作ってやろうって思って、「I'm sorry oneday, your postbox, throw into YAKITORI, it's me」(あなたのポストに焼き鳥を入れたのは私です)がパッと思いついたんです。なんか変人ぶってウケ狙ってる感キモいし、海外の人が知ってる日本の定番の食べ物(スキヤキ、スシとか)入れるとかムカつくなあって思って。だからこの曲は特に意味はないです。

──「あなたとの恋、金にしてJASRAC」と唄ってますが、おとぼけビ〜バ〜の楽曲はJASRACに登録申請してあるのですか?

あっこりんりん:今してる最中です! いろいろ忙しくて登録申請が進まなかったりやり直したりしてJASRACのことよく調べたりしてたので、新しい言葉覚えて言いたいだけで「あなたとの恋、歌にしてJASRAC」を作りました。

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