英国レコーディング秘話
──で、それからレコーディング。
ミリー:パーショアっていうとこなんだけど。
ユダ様:ロンドンから電車で2時間ぐらいか。凄い田舎町。バーミンガムが近いって言うてたな。
ミリー:バーミンガムでも1時間はかかる。景色は凄い綺麗だったよ。イギリスの田舎町。ピーター・ラビットとか出てきそうな。
セクシー:実際ウサギもいたしね。
ミリー:いたいた。あと鹿とか。
──やっぱりイギリスってそういう光景残ってるんだ。
ユダ様:そうッスね。泊めてもらったホテルで、ミリーが風呂をオーバーフローして、浸水して、下の人が怒鳴り込んで来て「コレどうしてくれんねん!」っていう事件もありましたけど(笑)。
ミリー:そうなんです…(苦笑)。お風呂を溜めてたんだけど、疲れててお湯が溢れちゃったことに気づかなくて。
ユダ様:古いヨーロッパの、川沿いの素敵なモーテル、みたいな感じのホテル、全部水が下に…。
──風呂を溢れさせたぐらいで?
ユダ様:それが意外でしたけど。
セクシー:排水が、お風呂の外にはないから…。湯船の中にしか排水がないから。
──ああ、バスタブの中にしか排水口がない…!
ミリー:インテリアは凄い素敵だったけどね。そういえばユダも…。
ユダ様:レコーディング中にあったなぁ。エンジニアのデイヴは凄い良い人で、「Cool!」「Cool!」って、凄いアゲてくれるんですよ。「Good Music! お前らええ曲やなあ」って、アゲてくれる人で、ガンガン進んで行くねんな。日本じゃ出来んぐらいイイ音で録れて行くんやけど、ただ日本で出たことないくらい、全身もの凄い真っ赤になってしもて…大変やったな。俺は、スタジオにおる幽霊による霊障やと思っとるんです。
──ユダ様、デリケート。
ユダ様:スーパーデリケート。
ミリー:(蕁麻疹が出たのは)一人だけだもんな(笑)。
ヨゴレ:ユダくん繊細過ぎて…内面から来てるんじゃないかって噂も…。
ミリー:多分(笑)。ユダは高級なホテルじゃないと無理なタイプかも…。
──ナイーヴ過ぎるスカムロッカー…。
ミリー:エンジニアが「ここは幽霊が出たことがあるんだよ」って…。
ユダ様:そんなこと言うんですよ…。
ミリー:それを真に受けてるのかな、多分(笑)。
──レコーディングは…。
ユダ様:5曲、新曲を録りました。2日しかなかったので。時間ないから「コレってどういう声で歌うんやろ?」って自分でもわからんまま録った曲とかありましたけど、結果としてはイイ感じに。
ミリー:そのエンジニアの人が、単なるエンジニアじゃなくて、「俺は、一緒に曲を作るよ!」みたいなことを言ってくれて、いろいろアイディアを出してくれたんだ。
ユダ様:そうそう。寄り添ってくれるタイプの人で。
ミリー:ユダ、最後の方やたら「Cunts!」とか叫んでたもんなあ。
ユダ様:とにかく「Cunts!」「Fuckin’cunts!」とか、合言葉で言う人で…。
ミリー:凄い「Cunt」って言うのが好きな人だったんですよ。
ユダ様:最後、デイヴにエンジニアしてもらってよかったなと思った瞬間が、デイヴの腕、バーッとめくったら、ファイナルファイトとかストⅡとかのタトゥーがバーッと。「SEGA」とか。ああ、俺と同種族だ…「ああっ! …You like final fights? Me too!」とか言って、「ストⅡ、ケンが最高だよなあ!今度会ったらストⅡやろうぜ!」っていう、同じ格ゲー好き同士の…。
ミリー:めっちゃゲーマー(笑)。
ユダ様:「ああ、コレは運命やったな、この人と出会ったのは」って思いましたね。
──それがTHE WiLDHEARTSの…。
ユダ様:エンジニアですね。ジンジャーのソロとTHE WiLDHERATS、THE PROFESSIONALSとか。他にも俺らが知らんような、ハード・ロック的なのもやってるみたいですけど、それは俺らがちょっと知識なくて。でもまあ有名な人でした。
ミリー:凄い耳がいい。
ユダ様:耳いい人です。わざと扉開けて、こっちの反響の音も入れるように、とか…俺らじゃワケわからんようなセッティングしてました。
──鳴りを。
セクシー:普通はスタジオにこもって録音するんですけど、わざわざ開けて、廊下にマイクを置いて、流れてきた音を録るみたいな。
──アンビエンスを。
ユダ様:俺らじゃ全然わかんないことをしてましたね。この人すげえなあと思って。こんな幽霊がおるようなところでひたすら引きこもって作業出来るのも凄い!俺やったら半日で発狂しますわ。
(一同笑)
ユダ様:『北斗の拳』の、リンのお姉さん、天帝が閉じ込められてたじゃないですか、アレと同じ気持ちですもん。
ヨゴレ:誰に向けてしゃべってんのそれ…。
ユダ様:天帝の気持ちですよ。
──ホントにナイーヴだよなあ(笑)。
ユダ様:そうなんですよ。
──で、そんな凄腕のエンジニアと、「令和ソング」を演ったワケだ?
ユダ様:そうですね、一緒に撮ってもらいました(笑)。
ミリー:いろいろ協力的に参加してくれたなぁ。
──協力の方向が間違ってる(笑)。
ユダ様:あの塔(MVの背景に登場)も、なんかいわくつきの塔やなあ。
──あの、バックにあった。
ミリー:戦争の時に建てられたんだっけ?
セクシー:シェルター。
ユダ様:なんか、戦争に関係してるような。そこの前で「令和、令和、令和だぞ♪」…。
ヨゴレ:どんな歌かも知らんのに、よくわからん日本語の歌を踊らされるっていう…(笑)。
ユダ様:話前後するんですけど、他のオフの日もPVを撮ったりしてましてね。テムズ川の、それこそ『時計仕掛けのオレンジ』の、最初のホームレスをしばく、あの現場まで行って撮ったりとか。テムズ川のボートとか、タワー・ブリッジのあたり走ったりとか。けっこうやれることは詰め込んで。スタンリー・キューブリック展もたまたまやってまして、それも行きました。ただ僕は『シャイニング』も『2001年宇宙の旅』も観たことがないんで。『時計仕掛けのオレンジ』だけ唯一知っとったから、他はちょっとなんのこっちゃか全然わからなかったですけど。
ミリー:凄い人気だったんだ、キューブリック展が。1日目行った時、アタイら5人だったんだけど、全員は入れなくて。
ヨゴレ:あと4枚しか残ってないって言われちゃって。仕方ないから次の日にもう1回行って。俺、1日目『時計仕掛けのオレンジ』のTシャツ着ていて、2日目『シャイニング』のTシャツ着ていて。
ミリー:めっちゃ気合入ってた(笑)。
ユダ様:俺とミリーはロンドンのクラブとか遊びに行ったりもしました。途中でポリが来て、クラブ終了させられましたけど(笑)。
ミリー:なんか、ロンドンのXOYOっていうクラブに行ったら、「あなたたち何歳なの?学生さん?」って言われて「学生じゃないです」「今日はStudent Nightなの。だからStudentじゃない人はお断り」って言われて。「このままじゃ帰れん」ってテンションになって、フリーパス配ってたタダで入れるクラブに入って(笑)。
ユダ様:ちょっと古いんちゃうの、っていうヒップホップがかかってて、ただのナンパ箱だったんですけど、まあせっかくのロンドンのクラブやし、酒でも飲んで味わおう、みたいな感じやったのが、ポリスが来たとかどうのこうの…。
ミリー:いきなりハイ閉店、ってなって。そういう時でもみんなちゃっかりしてて、「はい、次はここだったら開いてるから!」とか言って、他のクラブの人が「はい、今からまだイケるよ!」とか声かけてきて(笑)。しぶといんだよ。
セクシー:それはホテルの周辺だったの?
ユダ様:ちょっと歩かなアカンな。
ミリー:一駅ぐらいかな。Old Street。