6月にはイギリスの大型ロックフェス『Camden Rocks Festival 2018』に出演。最狂ライブで会場を沸かせた日本の恥さらし、流血ブリザードがネイキッド・ロフトにて3年ぶりのパンクトークGIG「流血ブリザードの10年の歴史を教えてやるぜ!!!?」を開催する。7月には10周年記念ベスト盤『歩くオリモノ』をリリースする彼らが10年を振り返り、結成当時のエピソードやプライベート、先日のイギリス遠征時の土産話など、流血の全てをパァァァンクに語り尽くす! ここではイベント開催に向けて10周年への想い、ベスト盤、イギリス遠征の話などをちょっとだけ真面目に語ってもらいました。[interview:フジジュン]
敵は増えたけれども...
――結成10周年を迎えて、ネイキッドロフトで3年ぶりのイベント開催です。
ユダ:イベントは10周年ってことで、いろいろ振り返ろうと思ってて。今まであまり話さんかった、プライベートのゲスな話もしていきたいですね。イベントに来た方が、ファンをやめたくなるようなヒドい話もしますよ。その方がパァァァンク! でしょ?(笑)
――結成10周年に思うこともある?
ユダ:結成した頃は「さすがに30代になって、こんなバンドやってないよな」と思いつつ、「いや、もしかして......」って気持ちもあって。そっちが当たりましたね。でもバンドの10年なんて全然で、多少学んだことはあるけど、気持ちは最初の頃と変わらないし、完成型なんて全く見えてないし。
ミリー:10年やって、やっとやりたいことが形に出来てきた感はあるけどな。
ユダ:若い頃はもっと凄いことになると思ってたから、ちょっと世界で活動したり、東阪でワンマン出来るようになったくらいじゃ満足してへんけどな。
ミリー:でも、10年前の写真とか音源とか、自分で見てもゲテモノ感ヒドかったぞ(笑)。殺害塩化ビニールが拾ってくれなかったら、悲惨だったよな。
ユダ:確かに。ゴキブリやネズミだって、当時の俺らほど嫌われてないよな。俺らが登場したら、嫌いすぎて泣いて出ていくヤツがおるんですよ?(笑) SEX PISTOLSが「俺たちは国民の敵くらい嫌われてた」って言うてたけど、それを近年、日本で体現したのは流血ブリザードくらいやろ?
ミリー:それが最近は「今日は何を投げるんですか?」って、ライブハウスの方から聞かれるようになったけどな。
ユダ:出来レースやな(笑)。俺は正直、あんまり汚物を投げたくない日もあるんやけど、投げなくて「損した!」と思われるのも嫌やし。もう、汚物投げの目的が最初と変わっとるんです。
――あはは。当時は振り向いてもらうのに必死だった所もあった?
ユダ:そうですね、無名より悪名というか。戦略モデルとしてSEX PISTOLSやスターリンがおって、嫌われることで面白がってくれたり、話題にしてくれる人がおると思ったから。それは昔からあるパンクの手法かも知れへんし、リスクもあるけど、俺たちはそれも面白がってやってて。おかげさんで敵は増えたけど、面白がって呼んでくれるメディアもたくさんいましたからね。
――本当は愛されたい人なのにね(笑)。
ユダ:ホンマですよ! 人に嫌われるのなんて、一番嫌いですから。学生時代も先生に怒られるのが嫌で、校則も一度もやぶったことないですから(笑)。
根が真面目で熱心な音楽ファン
ミリー:ただ、今でこそ10年後を見据えてやってたみたいな言い方も出来るけど。単純にメチャクチャしたかったっていうのもあったと思うぜ?
ユダ:いや、あったよ。時代的にもGGアリンの「全身ハードコア」が公開されたり、日本のハードコアリバイバルがあって感化されて。「売名や」とか言いながら、自分たちではカッコいいことやってるつもりでおったからな。
――今は音楽含めてやりたいこと、カッコいいことが出来ている感もある?
ミリー:そうですね。当時は「バンドじゃなくて良い」くらい思ってましたからね。パフォーマンスを重視してた部分もあるし、アタイも真面目に音楽をするバンドやと思ってなかったから。流血で自分のやりたい音楽が出来ると思ってなかったけど、最近は「自分のやりたいことを出していっても良いのかな?」と思えてて。
ユダ:当時、「もっとパンクとかバカにして、徹底的にフザケた方がいい」って、ある人にアドバイスされて。その方が世に出れたのかな? と思うこともあるんですけど。根が真面目やし、ホンマは熱心な音楽ファンやから、自然と音楽に寄ってしまうんです。
ミリー:アタイは昔、「狂気! 鬼畜人間集会」というイベントをやった時、高校生の子がウチの下手くそな演奏を見て、顔をキラキラさせながらモッシュしてるのを見て、「ロックとして正しいことをしてるな」と思って。「この子は自分が高校生だった頃、SEX PISTOLSに抱いたような気持ちを1mmでも持ってくれてるのかな?」と思って、「このバンドに賭けよう」と思ったんだ。
――いい話です! 当時のライブ映像で、未公開のものってあるんですか?
ユダ:あります。CDの特典に付けることも躊躇した、あまりにヒドい初ライブとか、俺のキャラ設定がブレまくってて、漫画に出てくるオカマみたいな喋り方をしてるライブとか(笑)。
ミリー:あれもイベントで流そうぜ。ライブだったらいいだろ?(笑)
スカッと聞けるパンク・アルバム
――10周年ってところで、ベスト盤も活動を振り返るキッカケになった?
ミリー:そうだな。選曲してる時、09年に録ったデモ音源が出てきて。「猿の反乱」って曲を聴いたら、その時しか出せない初期衝動が詰まってて、アタイがゴリ押しして収録したんだよ。
ユダ:「良い」って言ってるのはミリーだけですけどね。俺は聴いてて、いい気持ちがしませんでしたから(笑)。
――わはは。選曲は基本、ユダくんのセレクトなんですよね?
ユダ:そう。だから僕の好きなスカッと聞けるパンク・アルバムになりましたね。おもしろ曲は選考から外れてて、ファンの望むベストじゃないかも知れないけど。リマスターもロンドンでやって音も綺麗に揃って、満足してます。
ミリー:当時はエンジニアさんに「爆音にして下さい」しか言えなかったから、リマスターしてもらったら一つ一つの音も聞こえやすい上に音量も上がってて。いい出来になったよな。
イギリスでの反応
――『CAMDEN ROCKS Fes』や初めてのロンドンはいかがでしたか?
ユダ:最高でしたよ! 今さらロンドンにパンクな景色も無いですけど、「ここがダムドが通ったThe 100-Clubか」とか、憧れの街の名所を巡って想いを募らせたり。フェスも入場規制になるくらい人が押しかけて、日本でもないくらいの大歓声が起きて、グッと涙ぐむ瞬間がありましたね。ロンドン・パンクで育ったんで、「本場で勝負したって経験が出来れば、ウケなくても仕方ない」と思ったんですけど、予想外の反応があって。拙い英語で「10代から憧れてたイギリスにやっと来れたよ」って語ったMCもすごい反応あったり、下ネタや「I Love Me」もウケて、「こんなバンド見たことない!」って評価してもらえたのが嬉しかったですね。
ミリー:ライブ後にThe Wildheartsのジンジャーが、「流血ブリザードはどうだった?」ってツイートしてくれたんだけど。「会場で頭の硬そうなメタルが、「あいつらはクソだ!」って怒ってるのを見て、余計に好きになった」ってリプライが来てて。ジンジャーが「俺も伝統にツバ吐いてるところが好きなんだ」って返事してて本当に嬉しかったし、10年前のあの頃に戻ったような気持ちになったよな?
ユダ:そうやな。万人に好かれるものなんて、パンクでもロックでもなんでもないから。アティチュードとして人を不快にさせる気持ちを忘れず、尖っていかなきゃいけないと思いますね。
――10周年を迎えて、改めて初心に戻れる経験が出来たのは大きいですね。
ユダ:ただ、海外はまだちょっと足を踏み入れただけなんで。ここからもっと進出して、ガッと傷口を広げて侵食したいと思ってますけどね。USにも影響をウケてるから、次はアメリカでもライブやってみたいし。
ミリー:イギリスの土産話はたくさんあるから、イベントでも語りたいよな。
――10周年にイギリスの話と内容盛りだくさんのイベントになりそうです。
ミリー:でもハイライトは角刈りのユダがオカマ言葉で喋ってる、初期のライブ映像だろ?
ユダ:そんなんはどうでもええわ(笑)。