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INTERVIEW

トップインタビュー姫乃たま - 天国発、人間行き

天国発、人間行き

2019.04.04

 4/30(火)【姫乃たま活動10周年記念公演 パノラマ街道まっしぐら@渋谷区文化総合センター大和田さくらホール】をもって『地下アイドル』という肩書きから卒業することを宣言した姫乃たま。先月、ビクターよりメジャーデビューアルバムのリリースも発表したことで、じゃあこれからは『地上アイドル』??? どうやらそういうことでもないらしい。これまでロフト各店では、ときにアイドル的、たまにライター的、かと思えばインタビュアー的だったりと様々な顔を見せつつ酔っ払ってきた彼女にとって、ジャンルの看板を降ろすというのはどういう決意なのか? そして5/1から、姫乃たまの何が変わるのか? [齋藤航(LOFT PROJECT)]

地下アイドル

──そもそも【地下アイドル・姫乃たま】はいつから始まったんですか?

姫乃:2009年4月30日に16歳で舞台に立ったんですけど、その頃はまだ『地下アイドル』という名称は浸透してなくて、『プレアイドル(アイドルの卵)』も廃れてて宙ぶらりんだったんです。私が17歳になった頃、ライブに『地下アイドルはヤレるのか』って企画でエロ本の取材が入って、「私、地下アイドルっていうのか!」と。山口百恵ともモーニング娘。とも明らかに違う自分の『アイドル』活動に適した呼び名はないものかと思っていたので、それから名乗り始めました。

──所謂『アイドル』の方に憧れはあったんですか?

姫乃:全くなかったです。誘われて冷やかし気分でステージに立ったのがきっかけで、そこで優勝までに最短で半年かかる投票制の勝ち抜きライブにオファーされたので、とりあえず優勝までやってみよう! って。優勝に向けて集客を増やすためにほかのライブで歌ったり、投票される方法を模索したりしました。昔から夢が全くなかったから、目の前に頑張れるものが出来たことに熱中してたんです。そのまま今日まで仕事が繋がっています。ライター仕事のきっかけは、先の17歳のときのエロ本の取材でした。17歳だったから主催者が気を遣って掲載しないように伝えていたようで、その時の編集さんが載せられなかったことを逆に気にかけてくれて、コラム執筆の仕事をくれたんです。

──17歳でエロ本のライターデビュー。

姫乃:書けるけど読めないという(笑)。それからしばらくは読者投稿のハガキに答えるのがメインの仕事でした。それまではおじさん編集者がお姉さんになりきって書いてたんです(笑)。18歳になってからはAVの撮影現場にも取材に行けるようになりました。ロフトプラスワンでも『くすぐリングス』の取材しましたよ! UST中継がBANされたやつ(笑)。

──どう見てもなかなかの年齢の女性しか出場していないはずなんですが、衣装がセーラー服だったからという理由でBANされた伝説の回ですね! いたんだ、あそこに…。

姫乃:うふふ。ライターの仕事をしていると地下アイドルの子たちから敵視されなくなることもあって、ずっと投票で競い合ってた気持ちが楽になりました。おかげで地下アイドルの魅力を広めたいと思えてルポを書き始めたのですが、次第にマスメディアで『地下アイドル残酷物語』みたいな切り取り方をされるようになってしまったんです。私は業界への愛情と理解のもとに書いてきたけど、世間には関係のないことで過激なほうが消費されるようになってしまった…。その片棒を担いでしまった罪悪感があって、償わなきゃって思いがずっとありました。

肩書き問題

──現在は【地下アイドル/ライター】。5/1から肩書きはどうなりますか?

姫乃:どうしたらいいですかね……?

──【アイドル/ライター】になるんじゃないんですか? ビクターからメジャーデビューも決まったことですし。

姫乃:アイドルはもうないですね…。メジャーデビューは本当に偶然決まったことなんですよ。去年の夏に地下アイドル卒業を発表した時は完全にノープランでした。でも偶然、父親がメジャーデビューしたレコード会社ということもあって物事は巡っているなあと思います。

──そうだったんですね。なんというか、キャリア初期と同じで、人とのつながりから次また次へと進んで行く。

姫乃:とは言え、新しい肩書きもつけなきゃなんですけどね。

──肩書き警察がいらっしゃいますからね! そこは慎重に(笑)。

姫乃:近田春夫さんは肩書き発表したほうがいいって言ってました! 本当は『人間』をやりたいんですよね。ただ言葉にするとダサすぎるのと、今年の4月30日が本当に10周年で最後のワンマンライブの日なので、天皇譲位の日に【人間宣言】って……政治的に……いかがか……? でも、やっぱり人間をやりたいんです。寝ても覚めても地下アイドルの仕事で、自分というものがなくなってしまったんです。今この瞬間も、「私」が姫乃たまのことをどう思っているのかわからない…。

──ワンマンを控えたこのタイミングで人格が乖離するのはまずいですよ!

姫乃:完全に本来の自分を見失ってアイドル方向に振れちゃったりしてね(笑)。

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あかたま

──このインタビュー、一応『あかたま』のイベントパブでもあるんです。小明さんについてはどうですか?

姫乃:まっすぐ且つざっくりした問いかけですね。直近だとNegiccoのNao☆さんがご結婚されたニュースを聞いたときに真っ先に浮かびました。結婚してもアイドル続けているといえば小明さんもいるよー! って。

──いきなり出産報告でしたからね。お相手もフランス人ということで浮世離れしたところがありました。何か共感する部分はありますか?

姫乃:そりゃあ、地下アイドルのライブに出演することが決まって、最初に勉強のために買った本が小明さんの『アイドル墜落日記』でしたからね。小明さんは私にとっての”親ガモ“です。

──いきなりその本をチョイス!

姫乃:タイトルに反して感動的なドキュメンタリー本かと思いきや、タイトル通りの悲惨なアイドル生活が軽快な筆致で綴られているという(笑)。小明さんのトークイベントって司会のもぐもぐさんとか北村ヂンさんが、アイドル以前に女性としても本当に全く気を遣わないじゃないですか。あれ、なんか凄いですよね。

──イジられまくっているのに、それでも不思議とアイドル然とした部分があるんですよね。

姫乃:だから小明さんってゾンビになっても、結婚して出産しても、活動ペースが下がっても、結局アイドルなんですよねえ。アイドルって元気に頑張ったり、それこそ過酷な環境で戦ったりすることを求められがちだけど、小明さんは目に見える頑張りだけが戦いじゃないって信じてアイドルとしての矜持を持ち続けているところが信用できます。

──アイドル卒業前最後の『あかたま 』ですが、どういう気持ちですか? 聞いてみたいこととか。

姫乃:「わざわざ辞めないでまだ稼げばいいじゃん!」とか言われる光景が目に浮かびますね……(笑)。

ワンマンに向けて

──『パノラマ街道まっしぐら』という100%明るいタイトルからは、裏返しで不安な気持ちも強いんじゃないかと邪推をしてしまうのですが。

姫乃:地下から卒業して、それでどこに行くのって気持ちは常にあります。…(急に)アセンション!

──うん……、ん? なんでしょう?

姫乃:『次元上昇』ですね(こともなげに)。

──…『ムー』ですか?

姫乃:『ムー』です。『TOCANA』でもありますね。この先は地下アイドルとしてじゃなくて人として成長したいし、ファンにもそうであってほしい。いままでアイドルファンって世間のイメージと違って、社交性が高くて、女の子の扱いも丁寧で、他者の好きなものを否定しない人たちだって散々メディアで話して書いてきたんですけど、その度にファンが「アイドルの女の子以外には能力を発揮できないんだよ」って言うのを謙遜だと思ってたんです。でもここ数年、自分自身がファントラブルに巻き込まれる中で、それが本当だってことに気づいてしまって。これはちょっとダメだな、と。私が地下アイドルを辞めて人間になったらファンも恋愛対象になるわけじゃないですか。いままでファンに告白されたことってなくて、好きになっちゃいけない対象だって思いが強くておかしくなったファンを見てきたんです。でもこれからは人間対人間として、きちんと交流の経験値を高めていかないと、お互い将来的にキツくなっちゃうと思うんです。姫乃たまは地下アイドルとしては優しいけど、このまま一生ぬるま湯に浸けておくのが本当に優しいかはわからないですよね。今まで応援してもらった恩返しがこれで正解なのか、っていうのもまたわからないんですけど。

──いきなり横っ面張った! みたいな部分はありますよね。

姫乃:「目ぇ醒せ!」みたいな。でも私のファンはレベルが高いと自負しているので、これが恩返しになると信じています。将来はスナックでも開いて、ファンと楽しく飲みたいですね。今度はファンに歌ってもらって。いまも姫乃たまに恋愛感情を抱いてる人って稀で、大半が「まあ恋愛経験全くないわけでもないだろうけど、そういう話しをわざわざして来ないし、ロフトで一緒に飲んで楽しいな」ってスナック的な感覚だと思うんですよね。

──スナックですか! CDも出しましたし、歌中心に行くのかと思ってました。

姫乃:新譜のリリースもありますし、ライターとしての出版予定もあるので、しばらくはまた目の前の仕事をしながら、将来的にはスナックを経営して、最終的には根本敬さんになりたいですね。目標は妖怪。

──…パノラマ街道を進んだ先には根本敬さんがいるんですね。

姫乃:はい、スナックと根本敬さんが待ってます。

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『パノラマ街道まっしぐら』

4/24(水)発売
ビクターエンタテインメント

LIVE INFOライブ情報

4/14(日)【あかたま 天国】

@Loft Heaven

【出演】小明、姫乃たま

※イープラス発売中

 

4/30(土)姫乃たま活動10周年記念公演 パノラマ街道まっしぐら

渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

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