ボーカルの特権
——ボーカルの特権って何だと思いますか?
景夕:うちは、リハとか1人だけ遅く来てもいいとか…。
一同:(笑)
義彦:まあ、準備もないですしね。
景夕:そう。準備ないし、俺は元々寝れないタイプだから、それをみんな分かってくれて、ギリギリまでいいよって。後はあんまり荷物運びをしなくていい。
——それは“ボーカル”というより、“景夕さん”の特権なんじゃ…。
一同:(笑)
唯:それは何でやろう(笑)。
義彦:でも、“heidi.は”かもしれないですけど、みんな優しいですね。例えば俺らはワンマン3daysとかをやるんですけど、その時の2days目とか、3days目とか、段々なんか…。多分俺もちょっとわがままになってくるのかもしれないんですけど、精神的にちょっと嫌じゃないですか? その時にメンバーの優しさを感じたりしますね。体調の心配とか荷物を運んでくれたりとか。何となくボーカルは、1つ優位に立ってるような感じはします。
唯:ないなあ〜。
一同:(笑)
景夕:運転もするもんね。
唯:僕は柊くんと2人で交代制で運転するから、基本的には運転をしてますね。でも先に運転させて、とかはあるんですよ。例えば夜中の12時に出発するとして3時くらいに運転を変わって、3時〜6時まで僕が運転したら、そこしか寝れないので、そこからまた寝なあかん。僕もあんまり寝れないタイプなんで。しんどい時は先に運転させてって。先に運転させてくれたら着くまで寝れるし、着いてからもあまり途切れず寝れるっていうのがあるから、それくらいですかね。僕はギター・ボーカルなんで、搬入と搬出も絶対するし、セッティングもせなあかんから。結構慌ただしいんですよね。
義彦:ボーカルは荷物や機材の持ち運びには、出なくていいとかってなかったですか?
景夕:うちはなかったなあ。
義彦:運んでる姿が格好悪いから、よっしー(義彦)は出なくていいよって言われた時代もありましたね。
唯:ロックスターですね! いいな、それ。
景夕:俺は勝手に行かなかったら、段々それが染み付いて、無理やり…。
一同:(笑)
唯:何だ、この人ら(笑)。
景夕:でも最近歳もあるんだけど、それこそLOFTでミックス(Mix Speaker’s,Inc.)との2マンをやった時に、珍しくお立ち台を運ぼうと思ったの。で、お立ち台を持った瞬間にぎっくり背中になって(笑)。
義彦:えっ! その後はどうしました?
景夕:とりあえず痛み止めを飲んで、痛み止めの湿布を貼って。歌う時に息を吸ってもビキってくるから、何とかそれまで背中を伸ばしつつ、本番は「あ〜、ツライ!」って思いながらやって、何とか。
義彦:やり切れたんですね。
景夕:うん。だからもうそこからは、止めようと思って。
一同:(笑)
唯:僕もやんわりと荷物を運んでるけど、こそこそと楽してますね。連日運転もするし、ボーカルって神経質にもなるし、いろいろ気を遣うし、一番体力を使うから、ちょっと楽させてもらおうって思って。荷物とかも、持ってるには持ってるけど、少なくはしてますね。持たなくていいよとかはないですけど(笑)。積んでくれるのは柊君くんやし、移動はするけどバケツリレーの真ん中くらいです。でも春がそこは気を遣ってくれますね。わざわざ東京に行って1日空けて、また東京に行ってとかは面倒臭いので2daysとかでライブをするんですけど、その間とかの日に、うちだけホテルを取っておいてくれたりとか。
義彦:それ、超優しいっすね。
景夕:うん、優しい。
唯:いい奴だな〜って思ったっすけど。彼らは友達がいるからそこに泊まりに行くんですけど、僕が昔から友達付き合いとかがないから。飲めないから飲みにも行かないし。だから心配も兼ねて、唯くんはこういう人やからホテル取っといたって。「いい奴だ!」って思って。
義彦:それはちょっと感動しますよね。
景夕:感動するね。
唯:そこはすごい助かりますね。あとはセトリとかは、特権として。作曲者でもあるから、流れとかを重視させてもらったりとか。やりたい曲をみんなに聞いて、そこを組み上げて流れを組み立てていくっていうのは、僕が先導してやったりとか。
義彦:Kraさんはセトリは誰が決めてるんですか?
景夕:うちは今は、スタジオに入ってみんなで話して決めてる。
義彦:じゃあ、4人で話し合って。
景夕:そう。「ここの終わり際、なんか面白いこと出来ないかな?」とかあったら、タイゾが「こういうのは?」って言って、「じゃあここでこうして、ドラムがここで入って」とか。
義彦:昔からですか?
景夕:いや、舞っちょがいた頃は、全部俺がセトリを決めてて、流れとか終わりからの繋ぎとかもやってたけど、タイゾ(Gt)が入ってきてから、新しい意見もあるし、いろいろやってて。各々メンバーが一番最初の土台を考えたり、最初に出してきた人の土台に付け加えたりとかっていう感じにしてたけど、今は結局、4人で決めようって。それが一番楽しい。
義彦:みんな納得してるセトリですしね。
景夕:だし、自分の中にないアイデアをポンって言ってきて、たまによく分かんないこと言ってるなってこともあったりするじゃない? 「じゃあ、ちょっとそれをやってみよう」って、すぐそこで出来るから。そしたら思った以上に、「いいね」ってなるし。
——heidi.さんはどうですか?
義彦:10年経ってからほぼ自分が決めてて。それまでは4人だったんですけど、自分が決め出して、やっぱりライブがやり易くなってきたんですけど。
唯:そうなんですよね。やっぱりあるんですよね、持っていき方って。
義彦:でも、俺の悪いところは、結構似たような曲を並べちゃったりして、ライブ自体はやり易くていいんですけど、景夕さんみたいな新鮮さというか、4人で新しい意見が入ってきた時の感覚を今、ほとんど受けてないんで。ほぼ自分の作ってる世界観ですね。だから2年くらい経って…、これがいいのか、悪いのかは、正直悩んでるところなんですよ。
景夕:でも、さっき俺が全部セットリストを決めてた時期もあるって言ったけど、ワンマンツアー中の時に、例えば大阪と岡山とか近い場所だと、お客さんも結構被ってる人がいるだろうとかを考え始めると、全く同じ曲がないっていうセットリストが続いたりとかして、そうするとメンバーは前日に全部覚えなきゃいけないとかになると、逆に余裕がなくなるし。多分そこは真逆にいたところだと思うんだけど。
義彦:結構変えるんですか?
景夕:俺がやってた時は結構変えてた。繋ぎもここはこうして、とか。それをライブの前の日にセットリストを送ってたから。
義彦:メンバー、超大変じゃないですか!(笑)
一同:(笑)
唯:僕らもセトリは下手すれば当日に書いて渡すとか。ライブハウスに事前に送るとかではなくて、ほんまに当日に決めたりとか。ライブハウスに来てから、「セトリどうする?」って。「えー、今か!」と思って、書いてみんなにLINEで送って、「これでどう?」「いいな」「じゃあ、それでいきましょう」ってなるから。
義彦:すげー、それ。
唯:あとはプロモーションの曲と普段あまりやらないレアな曲とかを組むのが、僕らは対バンが多くて時間が限られてて5〜6曲とかなので、結構難しいですね。でもワンマンはガッツリな方向に持っていったりとかしますけど。
義彦:みんなワンマンツアーになると結構曲を変えてくるんですね。
唯:今度、僕らもワンマンツアーをするんですけど、多分そうなるんでしょうね。みなさんって、曲は何曲くらいあるんですか?
景夕:177曲かな。
唯:あみだくじで決めたらいいんじゃないですか(笑)。
一同:(笑)
景夕:でもね、いっそうのことそれの方が…。この曲は何年もやってないからやった方がいいよねって曲があるんだけど、無意識なのか避けるんだよね、その曲を。
義彦:あ〜、ありますよね。
景夕:多分レアで、来てくれたお客さんは喜ぶかもしれないけど、それがライブ中のお客さんの行動に表われないんだよね。あの曲を聴けた、良かったっていうのを感じるのが、ライブが終わった後の感想文なんだよね。
義彦:確かに。盛り上がりとかでは分かんないですもんね。
景夕:だから、これはやってもな〜って。
唯:盛り上がりに欠けるっていうのも、ライブの中では結構難しい部分でもあるんですよね。僕らって、昔から振りをこうしろみたいなのがないから。提示しないんですよ。たまに言うけど、やるのは自由やでって感じで。楽しかったって感じで次に繋げられたらいいんですけどね。
義彦:久し振りの曲をやる時に、自分の成長って一番分かりません? 俺はですけど、heidi.の昔の曲をやった時に、「超楽になってる」とか、「超キツくなってんな」とか、「癖が変わったな」っていうのが分かるんですよね。だから、たまにはそういうレアな曲をやった方がいいなとは思うんですよ。
唯:メンバーも技術的にも上がってますしね。こんなによくなってるんやってのもあるし。
義彦:逆に全然よくなくなっちゃったっていうのもあったり。「あれ、曲を殺しちゃったな」っていう時もあったりするんで。そうするとリハ段階で、この曲もうちょっと歌っておこうとかってなるんで。そういうのは面白いなって。でも毎回やったら、俺は長生きできない気がする(笑)。
景夕:衰弱しちゃんだ(笑)。
義彦:そうなんすよ(笑)。
唯:スタジオとかで、「久々にあの曲やらへん? 1回合わせようか」ってやった時に、終わってから無言になる時があるんですよ。
一同:(笑)
義彦(heidi.)