歌詞を視覚で伝える打首のライブの斬新さ
大澤:僕は人間椅子のライブを初めて拝見した時、自分たちの仲間のバンドがすごく影響を受けてるのを痛感したんですよ。「あ! このアレンジに影響を受けた人、知ってる!」みたいな。日本のバンド・シーンのなかで、サウンドでもアレンジでも土台を作ってきてくれたバンドなんだなと実感したんです。八八も人間椅子にだいぶ影響を受けたんじゃないかと僕は思ってるんですけど。
廣井:もちろんCDも持ってるけど、影響を受けないようにしないとパクリだって言われるじゃないですか(笑)。まぁ、僕は鈴木(研一)さんみたいなピック弾きじゃないから違うっていうのがあるかもしれないですね。
和嶋:ベースのスタイルとしては鈴木くんとは違いますよね。
廣井:人間椅子のベースって、ドゥンドゥクドゥンドゥンドゥン、ドゥンドゥクドゥンドゥンドゥン…っていうのが多いじゃないですか。あれって指で弾きながら唄えないんですよ、絶対。
和嶋:そうでしょうね。あと、指だとどう弾いてもギターと同じようにはならない。機材が同じでも同じにはならない。
廣井:そうですね。そういう部分で僕らは違う方向へ変わっていったと思うんですけど、きっと好きな音楽は一緒なんだろうなとは思うんです。
和嶋:僕らと影響を受けた洋楽はたぶん同じなんだろうね。
廣井:そうなんですよ。70年代のハードロックとか、3ピースでやるにはそのへんがいちばん格好いいんだろうなと思ってるんです。
和嶋:ですね。エレキの楽器とドラムセットで格好良くやろうとすると、どうしてもあんなふうになるんだなっていうのがあるし。話が変わりますけど、打首はライブで映像を使ってるじゃないですか。あれはすごく斬新ですよね。僕らにはああいう発想が1ミリもないから(笑)。
大澤:あれも最初はいたずらで始めたんですけど、今はすごくサウンド面で役に立ってまして。というのも、もともと「歌詞が面白い」っていう評価をされてて、わりとジレンマがあったんです。曲がりなりにも激しい音楽をやっているのに、歌詞が面白いから歌詞が聴きたいと。そのために「ギターを下げて」なんて言われると、すごく不本意なわけですよ(笑)。そんな折にVJができるスクリーン環境のある会場で歌詞を視覚で伝えられるようになって、ライブでも歌詞が伝わっていいねとみんなが言うんだけど、僕としてはこれで好き勝手に音を出せるのがいいなと思ったんです。ちょっとくらい自分の声が埋もれても怒られない、みたいな。
和嶋:映像で歌詞が見えると、たとえ違ってもそう唄ってるように聴こえるしね。
大澤:歌詞カードを見ながら聴いてるのと同じなんですよね。こっちが金切り声で叫んだり、効果音に近い唄い方をしても、何を唄ってるかわかってもらえる。
廣井:空耳アワー方式ですね(笑)。
大澤:字幕を出すとそう聴こえちゃうっていう(笑)。
和嶋:なるほど。僕も「歌詞が聴こえない」ってよく言われるけど、そうは言ってもロックな音を出したいからね。そう簡単に楽器の音を下げられないですよ。
廣井:特にギターは、ある程度のところまで上げないといい音が出ませんからね。
和嶋:どこのライブでも歌詞をスクリーンで見せられるんですか?
大澤:一応、できるようにしてます。プロジェクターを持ち込んだり、野外だとプロジェクターは太陽光に負けて映らないのでLEDパネルを持ち込んだり。
──LEDパネル!?
大澤:秋葉原でパーツを買って、街頭ディスプレイみたいなのを自分で作ってみたんです。パソコンに映る画面をそのまま映し出せるし、あれなら太陽光にも負けないんですよ。枠から何からぜんぶ自分で作ったほうがレンタルするよりも安いですしね。