ライブに強いバンドが正当な評価を受ける時代
──CDパッケージのセールスが年々減っていく一方で、YouTubeやSoundCloudといったメディアを使って自分の表現をよりダイレクトに発信できるようになりましたよね。そんな時代にバンドとしての表現を伝えていく上で何か工夫していることはありますか。
大澤:ウチの場合はさっきから話しているVJとかだったりするのかな。
和嶋:その時々の先端を行くものを取り入れたい気持ちはありますね。このあいだ作ったMV(「虚無の声」)では、LEDパネルに囲まれて、プロジェクションマッピングに照らされながら演奏してみたんですよ。
廣井:見ました。あれはすごく新鮮でしたね。
大澤:人間椅子とプロジェクションマッピングって燃えるなぁ(笑)。
和嶋:僕らの音楽自体はヘンに時代に寄せたくないし、音楽性をころころ変えていたらいつか消えてしまうというか…。そういう音楽の芯の部分は変えたくないんですよ。
大澤:だから人間椅子のライブを見て元気がもらえるんですよね。やっぱりこうでなきゃ! っていうのを実感するので。
和嶋:芯の部分は変わらないけど、見せ方の部分ではその時代ならではのものを取り入れたいですね。
大澤:CDが売れないと言われて久しいけど、その一方ではライブやフェス特有の現場主義、体感主義が支持されてますよね。ライブの動員は年々伸びてるし、知り合いのバンドでも音源よりライブを優先する人が多い。自分たちと似たところで言えば、たとえば四星球はすごくライブの評価が高まってるんですよ。CDが売れてるというより、ライブやフェスですごく受けてる。ライブでいいものを見せたぶんだけ跳ね返りが大きいというのはバンドにとって追い風だと思うし、人間椅子のように本当に力のあるバンドが正当な評価を受ける時代になってきたんじゃないですかね。いい音でいい演奏をして、いいパフォーマンスをすればちゃんと結果がついてくる。そういう流れになれば僕らももっとやりやすくなりますね。ちょっと希望的観測かもしれないけど。
和嶋:ちゃんと生演奏ができるグループはあまり問題がないと思うんですよ。音楽ってそもそも生ですからね。
大澤:RIZEとかDragon Ashとか、20年選手のベテランも近年再評価の兆しが高まってますよね。ああいう昔からライブが強かったバンドが若いお客さんからも支持されてるのを見ると、すごく励みになります。
──最後に、今年の『ロフトフェス』に参加するお客さんに向けて一言ずついただけますか。
廣井:今回のイベントに対する意気込みを絶対に聞かれると思って、今朝風呂に入りながらずっと考えてたんですけど、まだもうちょっと時間がかかりそうです(笑)。いいイベントになるのかどうか、やってみないとわからないじゃないですか。来てみないとわからないものがあると思うので、少しでも興味があればぜひ来てください。
大澤:僕も最初にこの並びを見た時に「これはやらなきゃ!」「これはやりたい!」と純粋に思ったんですけど、僕も正直、どうなるかよくわからないんですよ。自分で出演を決めておいてなんですけど、この出演者の並びでロフトはいったい何を求めてるんだろう? と思って(笑)。出順がまだわからないけど、おそらく当日のセットリストはその場の空気を読みながら変えると思います。
和嶋:さすがライブ・バンドですね。
大澤:いやいや。現場の流れを読んで、自分たちが求められてる役割はこういうことかな? と思ったら臨機応変に変えていきます。お客さんにもなるべく最初から最後まで飽きずに見てほしいですし。それくらいの柔軟性がないと呑み込まれてしまいそうだし、どんなイベントになるかは終わってみないとわからないですね。主催者の思惑通りになるのかもわからない(笑)。いろんな意味で予想のつかない面白い一日になりそうだし、目当てのバンド以外もぜひ楽しんでほしいです。
和嶋:今回は出演者が多いし、それだけで単純に燃えますよね。出る人たちみんな個性が強いし、格好いいサウンドを出す人たちがいっぱいいるし。どちらかと言えばサブカルチャー側の、そのなかでも尖った人たちばかりだけど、ロックっていうのはそういうカウンターカルチャーだと思うので、その格好良さを僕たちも少しでも表現できればいいなと思います。あと、人間椅子目当てじゃないお客さんにもすごいと思われるような演奏を心がけたいですね。
廣井:今回のラインナップを見ると、人間椅子、打首獄門同好会、八十八ヶ所巡礼だけなんか異様な名前ですよね。だからこの三組が取材に呼ばれたんでしょうね(笑)。
大澤:たしかに、見事に漢字ばかり並んでるよね(笑)。
和嶋:八十八ヶ所で打首する人間だもんね(笑)。でも考えてみれば、それぞれが対バンする機会は今までもあったけど、この三組がぜんぶ揃うイベントは今回が初めてじゃないですか。僕ら自身も楽しみだし、これだけの面子を集めてくれたロフトには心から感謝して、ちゃんとご恩返しができるようなライブをやりたいですね。