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INTERVIEW

トップインタビュー曽我部恵一×平野悠 対談('06年9月号) - 青春の全てを出しきっていこうぜ

青春の全てを出しきっていこうぜ

2016.09.01

「戦争にちょっと反対さ」と歌うのは僕の強い意志です

平野:基本的には身の回りの事しか歌いたくない曽我部さんなんだけど、興味深いのは2001.9.11同時多発テロの後に『ギター』というシングルを出されたじゃないですか。かなり異例な曲ですけど、そもそもそのいきさつは何だったの?

曽我部:テロっていうのが自分にとって凄く衝撃的で、僕が何かこの事実をアウトプットしないといけないなと思ったから歌にしたんですけど、その時の気分をね。その時の気分って悲しいとか辛いとか戦争反対とかでは全然なくて、何かとらえどころのない言葉では言えないような気分だったんです。それを何とか曲にしたのが『ギター』っていう曲で、戦争反対とも言ってないし、悲しいとも言ってないし、ニューヨークの風景を歌ってるわけでもないっていう曲ですね。その時の自分が何処でどういう風景の中で何を感じたかっていうのをちょっとでも曲の中に入れれたらって思いましたね。そうじゃないとその時の気分がうまく形にならないと思ったから。ただ歌詞に「戦争にはちょっと反対さ」と入ってるんですね。何でちょっとなんだって。ちょっとじゃねえだろって結構言われたんですよ。でも、あえて「ちょっと反対さ」っていう事が大事かなって思ったんです。ニューヨークで身内も死んでないしさ。テレビで見ただけ。犯人が誰かもよく解ってない。でも戦争にはちょっと反対さって言えるかどうか。そこで戦争反対って言っちゃったら軽薄な気がしたんですよ。言っちゃうと凄く違うんだろうな。でも絶対嫌なことだからあの歌詞にしたんです。あれから時間は過ぎたけれど、気持ち的にはあんまり変わってないですよ。戦争にはもちろん反対なんだけど。これは自分にとっては凄く強い意志なんです。確かに当時結構言われたなっていう印象はありましたけどね。その時の事っていうのは自分が思うように出せたから、それが何のメッセージになるかは置いといて、僕はそれでいいと今でも思っています。

平野:それでいいんだよ。それだけの覚悟があればみんなは馬鹿じゃないから伝わっていくよ。その上で僕はこれからどんな新しいサウンドを持ち込むかどうかのか曽我部さんの岐路に来てるような気がするんですよ。失礼ですけど、僕はサンボにも曽我部さんにも銀杏にも新しい革命的な、これは凄いっていうサウンドを日本のロックに持ち込んだとは思ってないですよ。若い客を巻き込んで一つにする凄いシーンだと認めるけど。それには理由があって、僕はいつも必然的にあなた達ボーカルの立ち位置を元ARBの石橋凌さんや氷室京介さんと比べてしまうんですよ。この前フラワーカンパニーズも見たけどヴォーカルの鈴木くんも歌はいいけど凌と比べると誰もが隣のニイチャンなんだよ。問題はあなた方と言うかロックに一番必要な不良性がないんだよ。石橋凌は俺がロフトを35年続けた中でも、不良性を持った圧倒的な不良スターだった。だからあいつはいろんなヤツらの人生を変えさせるパワーがあったんだけど、あなた達は隣の八百屋でみかん売ってるニイチャンがマイク向けてるとしか思えないという。

曽我部:それはわざとだと思いますよ。峯田くんにしろ、山口くんにしろ。不良だと思いますよ。僕は真面目なんですけど(笑)。石橋凌さんみたいな感じとは違うけど、ある程度の不良性はあるんじゃないかな。

平野:僕の意識はそこにあなた方への違和感があって、僕にとっては今一つ今のシーンを分析しきれてないんだよな。

曽我部:でも言っていただくのはすごい嬉しいですよ。自分の歌とかを聴いた上で、ちゃんと意見を言ってるんだなって思います。それ以上の接点は解らないですけど。

平野:僕と曽我部さんの接点は下北運動を続けることによって深まるんじゃないかな。都が土地買収の強制執行やったらSave the 下北沢代表の金子謙三さんとか曽我部さんとかたぶん体張っちゃうと思うよ。俺は曽我部さんにもその要素を見るわけ。曽我部さんが怒ったらコワイよ。「僕は身の回りのことに精一杯ですよ」なんて言ってるけど、身の回りに下北沢も入ってるでしょ。身の回りを壊された時の曽我部さんの怒りが見たい(笑)。そこで今回俺がsave the 下北沢に提案してるのは都にデモをかけるとか昔ながらのやり方はもういい。出来れば曽我部さんにも賛成してほしいんだけど、300人~500人集めて、下北中の道路に10メートルおきにキャンドルを持って無言の抵抗を夜にやりたい。クビから看板かけて2時間だけ立ってもらう。何にもしない。私たちの街を壊さないでっていうプラカードをかけて。

曽我部:それは美しいですね! 美しい方が僕は好きですから、何らかの協力はしたいです。この運動は若者に支持されてますから可能だろうし。ただ、どれだけ支持されても結果が大事だと思いますよ。

平野:真面目に運動している若い子達が切れると何するかわからない(笑)。

曽我部:認可が通って道が出来たとしても先の結果があると思うし、それも含めてだと思うんです。自分達がいろんな思いがあって、反対すべきことだと思ってやった事が成就できなかったとしても、その結果から何か生み出されればいいと思うし。もっと大きな視点で見ると10年後20年後より100年後とか、今地球規模でやばいじゃないですか。それに悪い結果が出たとして、人類がそれに対して反省して何か変えていく力があることを信じたいですけどね。

平野:今話していてあなたが面白いのは、CDの中ではメッセージは特に言わない。でもどんなミュージシャンよりやることやるじゃない。これから更に何に向かって突破しようとするのかが知りたいよね。ところで、ニール・ヤングの新作 『LIVING WITH WAR』は聞きました?

曽我部:聞いてないです。

平野:何故この徹底した反ブッシュ、反アメリカのアルバムをニール・ヤングが発表したかと言うと、誰か若いアーティストが作ってくれるのをずっと待っていたけれど、誰もやらない。だから60年代を知っている僕がやるしかないと思って作ったアルバムなんですよね。

曽我部:でも、それはニール・ヤングがカナダ人というのもあるし、何よりアメリカ人は自分達が国を動かしているという気持ちが強いですからね。日本は自分達が政治を動かしているという自覚は持たされない。それは政治家がずる賢い。政治家が真摯な態度ではない。

平野:その若者が動かない原因をあなた方は僕ら全共闘世代の責任にするけど(笑)。

曽我部:責任にしてない(苦笑)。

平野:でもさ~、日本程若者が絶望的な国って先進国にあまりないと思うよ。俺達の時代は将来頑張れば家が持てたりする時代だったから、ユーミンやかぐや姫のような歌が流行ったわけですよ。でも曽我部さんたちの時代は夢が持てない。俺は経営者やってるから言えるんだけど、今程、資本家が労働者の首切るのが簡単な時代ないもん。働く人間がこれほど軽視される国はないと思う。例えば今の若い子がこれから20年して8千万のマンション持てると思う?

曽我部:難しいですね。

平野:ガキの頃の俺達の夢は、アメリカのホームドラマのように冷蔵庫開ければ牛乳いっぱい入ってる、何てすごい! それが夢だったんですよ。

曽我部:夢の本質も変わってきたんじゃないですか? 家を持つ夢はないけど、それを夢とは思ってないかもしれない。僕は夢を持とうと歌うし、夢を見ていこうと歌うけど、家持とうよではないし。希望とかそういうことなのかな。

平野:だけどかわいい女房と子供を育てて行くというのは夢というか現実そのまんまじゃん。

曽我部:搾取されながらね(笑)。でもみんな知ってはいるから、なんで怒らないのっていう問題はありますよ、確かに。それでも怒ってもしょうがないと思ってる。

平野:それで君らはみんな僕らのせいにする。あんたら失敗したじゃないって。でも俺達は幾つかの重要な問題は止めたよ。若者の反抗で権力者はびびったし、今まで日本は自衛隊は海外に派兵しなかった。最低限数十年は大学の授業料は値上げしなかったよ。平和憲法を捨てようなんて言わなかったし街歩いていて突然警官に鞄の中見せろなんて言われなかった。そんなことしたら若者が反乱起こして怖いから。その時代が終わって君たちの時代になったら全てが権力者のやりたい放題。それを失敗しただけだと言われたらちょっと待てよって言いたいよ。僕らはただケバ棒振ってただけじゃないから。文化運動だってあれだけ盛り上がったし、あの時代こそ大学だけでなくまさに日本のヌーベルバーグですよ。演劇、映画、文学、コミック、ソビエトを先頭とする共産主義の否定。あらゆる文化が過去の抑圧から解放されて花開いていった。オレから言わせたら素晴らしい青春。一瞬だったけど素晴らしい時代だった。毎日俺は興奮していた。あれも読まなくては、これも見なくては、デモにも行かなければって。俺たちはそういう時代を作った。君たちにはまね出来ない。

曽我部:僕は平野さんの時代に比べて、今の時代が落ちているとは思わない。当時のアングラシーンは凄い人数の人が演劇観てるわけでもないけど、ちゃんと成り立った。今は大きな経済的なものしか前面に出てこないんですよ。アンダーグランドは全くお金が動かない。シーンとしてはあるわけです。でもそこは面白いですよ。昔はそこに若者が行ったわけですよ。今は若者はメジャーなものしか見れなくなってる。資本主義が進んで雑誌は表紙も内容も全部お金じゃないですか。それをみんなが読んで、ロックってこんな感じなんだって思うし、テレビもそう。そっちに目がいかないだけで文化はあると思うんですよ。

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マイルス・デイビスだったらお互い何が好きかと話題が尽きない二人。
近い内に会うことも話し合いつつ………。

平野:今不毛なのは本当の意味で若いヤツらが文化に興味がないんだよ。今の若い連中って自分の興味のある事だけは深いわけ。だからオタクなの。でも横の幅がない。生きてるって事は政治があり経済がある事から逃げられない。それを全部外して特撮が好きなやつ、コミックが好きなやつはそれだけはよく知っているけど、後のことはまるで知らない。それだけしか掘り下げないから。例えば今回の芥川賞すごく面白い。でも若いヤツは読まないの?

曽我部:芥川賞はだいぶ前から読まないですけどね。

平野:「あのな~芥川賞ぐらい読めよ」ってそういった知的な抑圧が君たちには必要な気がする。この映画もこの演劇もこのマンガも読んでないの? それってやばくない? って僕は若い奴に平気で聞いて困らせるの。もっと幅広く色々な知識を吸収すればもっと素敵な充実した青春を送れるのにって思うの。でもそれに対して自分が無知だって思ってヤバイと思う若者はほとんどいない。焦る奴もいない。何言っているのこのおっさんだよね。

曽我部:僕はどっちかって言うと翌日本屋に行くタイプですよ。

平野:僕はね、ロックに絶望して、その横の繋がりがほとんどなくなって断絶した社会に楔を打ちたくってロフトプラスワンを作ったの。同じステージでマルクスを語り次の日AV女優がSMをやる(笑)。政治もエロもオタク何でもごった煮、それが文化だと思う。

曽我部:凄いなって思いますよ。平野さんが1個1個丁寧に場所を作っているのを、僕は傍目で見て、自分のエクスキューズとしては随分年が離れてるしなって思うこともあるけど、自分もそうやって成長していかなければいけないし、何か場を自分なりに作るのが信念ですから。まだその力はないけどそういう風にしていかないとって街を歩いていて思いますよ(笑)。

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